千年恋物語~何度生まれ変わっても、また君に恋をする~【R18】

白夜

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47話 第5の物語

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 君を泣かせて終わった第4の物語


第5のこの物語では、もう君を泣かせないっ!!


生まれ落ちたのは、貧しい農家だった。

村ではみんなが協力して作物を作っていた。


今回もやはり、俺は前世の記憶をちゃんと持ち合わせていた。


 よかった。


俺が7つになる頃、隣の家に子供が生まれた。


お母さんと一緒に生まれたばかりの赤ん坊を見に行った。


直ぐにわかった!!


君だっ!!


嬉しさで、
『やったーっ!!』


思わず声をあげた。


『そんなに嬉しいんだね。仲良くしてあげなさい。』

なんにも知らない母さんはそう言った。
こんなに早くに君を見つけられるなんて!


今までで最速ではないだろうか?

嬉しくて、生まれたばかりの君をずっと見つめた。


小さな手にまだ開かれない瞳

ずっと見ていられる!!


可愛いっ!!


…君は、俺を覚えているだろうか?

毎日、君に逢いにいった。

村の人たちが畑仕事をしている間は、歳が上の子供が下の子供たちの面倒を見ることになっていた。

俺は、村の子数名と君の面倒を見ていた。

時にはおんぶして、いっしょに散歩に出かけたり、君が歩けるようになるところだって見守った。


君の成長を近くで見られることが本当に幸せだった。


君は、すくすくと育って…元気な男の子になった。

何度か君に質問をした


『ねぇ。俺を覚えてる?』

『おにいちゃんの事覚えてるよ。いつも遊んでくれるから!だいちゅき!!』


……これは、覚えてないやつだ…。

こんなに近くに居るのに、もどかしかった。


探せないより、出逢えないよりマシだと腹をくくって、次の作戦を考える。


君に思い出させるいい作戦…。

一番いいのは、いつも傍に居て君が気づくのを待とうと

そのうちに気が付くだろうと…、訳の分からない自信のようなものがあった。


今まで君は僕の事を思い出してくれたから。

変な自信が付いたのだろう。それに、つけて今回は早くも君に出逢えている。

そんな油断があったのかもしれない。

君からすれば、俺は隣に住んでいる面倒見のいいお兄ちゃん。そんなところだろう。


田舎で何もなくて、遊ぶ時はよく川遊びをした。

泳ぎを教えたり、魚を取ったり

俺がお手本を見せる度に、キラキラした瞳で俺を見ていた。


その瞳を見る度に、抱きしめたい衝動に駆られ、その衝動を抑えるのが大変だった。


君に嫌われては、意味がない!

思い出してもらう前に嫌われてしまったら、思い出してもらえないかもしれない…


だから、いつだって…君にとっていい隣のおにいちゃんを演じてた。


小さな頃から君をよく寝かしつけていた。

君はやっぱり、俺の歌が好きで、よく歌を歌って寝かしつけた。

君の胸に手を置いて、とんとんと優しくリズムを刻む。


とろんとした瞳が可愛らしくて、キスしたかった。

君が眠りに就くまで、ずっと歌を聞かせた。

この歌で、君が思い出してくれるのではないかって、淡い期待を込めてーーー。



君が眠りに就くと、

君にそっとキスをした。

左瞼にキスをして、右瞼にもキスをする


そして、まだ幼い君の唇にそっとキスをする

それが、俺に許された唯一の接触





それでも、君が俺を想い出す気配は全くなかった。



君はどんどん大きくなって、子守唄を歌うことも…キスをすることもなくなった。

日々もやもやする自分との闘い。


このまま無理やりに唇を奪って、抱いてしまおうか?

なんどもそんな邪な考えが浮かぶ。


…でも、君から愛されなければ意味がない。

カラダを手に入れても虚しいだけ。


年頃になった君は、村で一番可愛い女の子と結ばれた。


長い年月を君と過ごした…

何度か月を一緒に観て、君に語り掛けた


『ほら…月が綺麗だよ』

次の言葉を待っていた


『うわ~でっかい月だね!おにいちゃん』


そう言って、走りまわる君…。

胸が締め付けられた。


君は、思い出さない…。

何とも言えない虚しさに襲われた。


これさえ言えば…なんて思っていたところもあっただけに…

最後の切り札も、役に立たなくて…

君が村一番の可愛い女の子と仲良くする姿を見てた


幸せそうな顔は俺に向けられるものでは無くて、彼女に向けられていた。


それから何度か君に言った


『月が綺麗だね』


『にいちゃんはお月さまが好きなんだね』って、無邪気な笑顔を俺に向けた


それだけだった。


あんなに幸せだった思い出が、君の中に残っていない…


君の中の俺が

ゆっくりと消えていっているみたいで、悲しかった。


そして、君はあの子と結ばれて

短い生涯を終えた


若くして亡くなった君


可愛い彼女に看取られて、俺の前から去っていった。


俺の事を思い出しもせずに…



そろそろ、君は俺を思い出せないのかもしれない。


次は、この物語で愛した彼女を想うのかもしれない


酷く虚しくて…寂しい物語だった。

もう、終わりにしたいとさえ思った。


でも…今までの記憶が、俺の中に残っている限り


俺の物語は続いてしまう。


そして、いつまでも君を愛してる記憶と共に、生きてしまうのだろう。


また、生まれ変わっても…


きっと君に恋をして…愛してしまう。


不安の中、第5の物語が終わった。


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