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31話 今までのふたりに戻ろう
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ーーー何度も繋がって、一緒に迎える。
最後に繋がった時には、少し明るくなってきていて
朝日が見え始めていた
そのまま、意識を手放して
頭の中で
何度も『あいしてる』って言われて
それが、前世の記憶だったのかなんなのか…
ただその『あいしてる』に心が蕩けそうだった
まるで、耳元で囁かれているかのような
『あいしてる』
優しい大好きな声だった…
『ひーくんっ!ひーくんっ!ひーくんっ!!』
めちゃくちゃデカい声
『んっ?…イタっ…』
目覚めと共に、痛みを実感する
『大丈夫?』
心配そうに俺を覗き込む陽向が目を開けると現れた
『全然っ!余裕っ!』
心配かけないように、強がって見せた
『みんなが起きる前に、温泉行かない?カラダ中ベトベトだし!…俺よりもひーくんの方がベタベタだけどふふっ。』
おいっ!
最後の笑いになんかいやらしさが隠れてる!!
確かに、カラダ…ベトベトだ。
『…そうだな…行こっか?』
のっそり起き上がり、ふたりで温泉に向かった
もちろん朝早くて、誰も居なくて
貸し切り状態の温泉に、陽向はテンションがわかりやすく上がっていた
ふたり並んでカラダを洗った
陽向がふざけて、俺の背中を泡まみれにして爆笑してた
わざと、今まで通りのふたりを演じるみたいに…
カラダを洗って露天風呂に入る
朝日が山の木々の間をすり抜けて
綺麗だった
そんな朝日をふたりで温泉に浸かって眺めた
言葉が消えて
ふたり静かに朝日を見てた
自然と手が温泉の中で触れて
どちらかともなく
手を繋いだ
まるで隠れて手を繋いでいるかのように
温泉の中でこっそり繋いだ
イケナイ事でもするかのように…
こっそりと手を繋いだ
誰にも見つからなければ、大丈夫とでも言うように…
まだ、夜は明けていないとでも言いたげに…
これが最後なら…なおさら…
手が離せなくて
じっと朝日を見てた
しばらくすると、ざわざわと人の話し声が聞こえて
俺たちの夜が終わろうとしていた
まだ…離したくなくて
このままずっと、この手を繋いでいたいっ!!
それでも、それは叶わない
賑やかな声はだんだんと
近づいて来て
俺たちはゆっくりと
本当にゆっくり
指をいっぽんずつを離していった
最後の小指が離れた時
『…俺、先に出てるから。ゆっくりしてきて。』
『おうっ!…』
それから、数名が温泉に入って来て
『おっ!早いね』
なんて、言われながら
昇っていく朝日をただただ眺めてた
心が落ち着くまでと、思ったけど…
心が落ち着くことはなかった。
温泉から出て、部屋に戻ると…
陽向の姿は無くて
それから数時間後、山道の復旧作業が終了し
俺たちは東京へ帰った
帰りの新幹線では、今まで通りを演じて
いつも以上にはしゃいだりして
わざとらしい友達の距離感を作り出した
陽向にたくさん触れたおかげで、たくさんの事を思い出した。
陽向は…思い出しただろうか?
…いや、たぶん思い出すことは無いのだろう。
思い出していれば、何らかの反応があるはずだから…
陽向が思い出せなくても
俺は、思い出した。
記憶が蘇ったと言った方がいいのかもしれない。
病で亡くなった彼を、俺は愛していた。
俺が雨男の理由もわかったし…
陽向が晴れにしてくれる事もわかった
陽向が俺を体を張って守ってくれたことも
命を懸けて、俺を愛してくれた事も…
前世の記憶
知れば知るほど
俺は、陽向を好きになってしまう
もう、それは決まっていた事の様に。
陽向を好きになるのは、必然だったと思い知らされる。
東京駅に着いて
別れ際に
『じゃあ…また』
『うん、また明日…』
普通の挨拶を交わす
少し離れて…
手を振って
『ひなたっ!!』
叫ぶと
『また!あした!!』
俺に、何も言わせない圧をかけて
俺の言葉を遮った
振り向きもせずに、立ち去っていく陽向の背中を見送った
俺の中は陽向で溢れているのに…
陽向の中に…俺はいない…。
それでも、陽向のそばに居られるなら…
今までのふたりに…戻ろう。
陽向を知る前のふたりに…
繋がる前のふたりに…
戻るだけ。
それで、ずっとそばにいられるから…。
最後に繋がった時には、少し明るくなってきていて
朝日が見え始めていた
そのまま、意識を手放して
頭の中で
何度も『あいしてる』って言われて
それが、前世の記憶だったのかなんなのか…
ただその『あいしてる』に心が蕩けそうだった
まるで、耳元で囁かれているかのような
『あいしてる』
優しい大好きな声だった…
『ひーくんっ!ひーくんっ!ひーくんっ!!』
めちゃくちゃデカい声
『んっ?…イタっ…』
目覚めと共に、痛みを実感する
『大丈夫?』
心配そうに俺を覗き込む陽向が目を開けると現れた
『全然っ!余裕っ!』
心配かけないように、強がって見せた
『みんなが起きる前に、温泉行かない?カラダ中ベトベトだし!…俺よりもひーくんの方がベタベタだけどふふっ。』
おいっ!
最後の笑いになんかいやらしさが隠れてる!!
確かに、カラダ…ベトベトだ。
『…そうだな…行こっか?』
のっそり起き上がり、ふたりで温泉に向かった
もちろん朝早くて、誰も居なくて
貸し切り状態の温泉に、陽向はテンションがわかりやすく上がっていた
ふたり並んでカラダを洗った
陽向がふざけて、俺の背中を泡まみれにして爆笑してた
わざと、今まで通りのふたりを演じるみたいに…
カラダを洗って露天風呂に入る
朝日が山の木々の間をすり抜けて
綺麗だった
そんな朝日をふたりで温泉に浸かって眺めた
言葉が消えて
ふたり静かに朝日を見てた
自然と手が温泉の中で触れて
どちらかともなく
手を繋いだ
まるで隠れて手を繋いでいるかのように
温泉の中でこっそり繋いだ
イケナイ事でもするかのように…
こっそりと手を繋いだ
誰にも見つからなければ、大丈夫とでも言うように…
まだ、夜は明けていないとでも言いたげに…
これが最後なら…なおさら…
手が離せなくて
じっと朝日を見てた
しばらくすると、ざわざわと人の話し声が聞こえて
俺たちの夜が終わろうとしていた
まだ…離したくなくて
このままずっと、この手を繋いでいたいっ!!
それでも、それは叶わない
賑やかな声はだんだんと
近づいて来て
俺たちはゆっくりと
本当にゆっくり
指をいっぽんずつを離していった
最後の小指が離れた時
『…俺、先に出てるから。ゆっくりしてきて。』
『おうっ!…』
それから、数名が温泉に入って来て
『おっ!早いね』
なんて、言われながら
昇っていく朝日をただただ眺めてた
心が落ち着くまでと、思ったけど…
心が落ち着くことはなかった。
温泉から出て、部屋に戻ると…
陽向の姿は無くて
それから数時間後、山道の復旧作業が終了し
俺たちは東京へ帰った
帰りの新幹線では、今まで通りを演じて
いつも以上にはしゃいだりして
わざとらしい友達の距離感を作り出した
陽向にたくさん触れたおかげで、たくさんの事を思い出した。
陽向は…思い出しただろうか?
…いや、たぶん思い出すことは無いのだろう。
思い出していれば、何らかの反応があるはずだから…
陽向が思い出せなくても
俺は、思い出した。
記憶が蘇ったと言った方がいいのかもしれない。
病で亡くなった彼を、俺は愛していた。
俺が雨男の理由もわかったし…
陽向が晴れにしてくれる事もわかった
陽向が俺を体を張って守ってくれたことも
命を懸けて、俺を愛してくれた事も…
前世の記憶
知れば知るほど
俺は、陽向を好きになってしまう
もう、それは決まっていた事の様に。
陽向を好きになるのは、必然だったと思い知らされる。
東京駅に着いて
別れ際に
『じゃあ…また』
『うん、また明日…』
普通の挨拶を交わす
少し離れて…
手を振って
『ひなたっ!!』
叫ぶと
『また!あした!!』
俺に、何も言わせない圧をかけて
俺の言葉を遮った
振り向きもせずに、立ち去っていく陽向の背中を見送った
俺の中は陽向で溢れているのに…
陽向の中に…俺はいない…。
それでも、陽向のそばに居られるなら…
今までのふたりに…戻ろう。
陽向を知る前のふたりに…
繋がる前のふたりに…
戻るだけ。
それで、ずっとそばにいられるから…。
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