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24話 雨が降り続いて、導かれる

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 あの日から、陽向に触れることは無かった。

記憶も思い出せないままに、一ヶ月が過ぎようとしていた。


俺の想いが限界にきていたのか…

それは、俺が降らせていたのか確かではないが雨が降り続いていた。

春なのに、異常気象とでもいうのか雨が降り続いて


俺の心も涙で濡れていた

そんな、ある日。


止まっていた俺たちの時間が動き出す。


その日は、陽向と地方のロケで、本当なら日帰りのはずが…




『こんなところに、温泉ある?』

陽向の少し呆れたような声が山道に響き渡る。

『秘境温泉だから、こんな感じでしょ?』

車一台がやっと通れるくらいの細い道

ロケ車に揺られて、やっと山奥の温泉旅館にたどり着いた。


『天気が良ければ…良かったんですけど…』
申し訳なさそうに謝る旅館の女将さん。

『こればっかりはね…』

諦めモードのディレクターが静かに会話していた。


そして、すぐに…この雨の中、露天風呂の撮影が始まった。


…陽向とふたりきりの仕事久しぶりだなぁ。

メンバー全員の仕事の時には感じなかった、ソワソワ感が胸をざわつかせる。

 しかも、露天風呂って///
あの日以来見ていない、陽向の裸になんだか恥ずかしくなる。


『氷雨さん、陽向さん。準備お願いします。』
スタッフの声が聞こえて、ふたりで温泉に入る。

遠くまで見渡せるような山の中で、ふたりで温泉なんて

仕事じゃなければ最高っ!って言いたいくらい。
だけど…仕事じゃなかったら、陽向とこうして温泉に入っている訳がないと思って苦笑する。


『ん?なんかおかしい?』
陽向が不思議そうに俺を見た。

『いや、別に…すげ~山ん中だと思って。』

『自分で言ってたじゃん。秘境温泉だからって!』

『そうだな』

なんて、ふたりで笑った。

良かった、移動中なんか話せて無かったから。
こんなに普通に会話できることが、なんだか嬉しい。


薄暗い空の色と岩場から照らされる間接照明、ほんのり浮かぶ月。

なんだかそこだけ異世界のような妙な雰囲気を作り出していた。


ディレクター的には、晴れの日よりもなんか雰囲気のあるいいが撮れたって満足そうだった。


そして、問題が発生した。

ロケを終えて、帰ろうとした時…


『どうやら…来た道が最近続いてる雨の影響で土砂が崩れてしまったみたいです。』
ADがディレクターと俺たちのマネージャーに話している。

 嘘だろ?こんな山の中に閉じ込められたって感じ?

『ここへ来るには、あの細い道しかなくて…』
女将さんが、みんなに説明してた。

18時を過ぎて、暗くなって土砂の撤去作業は今からは無理で、土砂の撤去作業は明日の朝から行われることになった。



『よろしければ、お部屋も少ないですが空いていますのでよかったらお泊り下さい。』

小さな温泉旅館で、スタッフが10名そして、俺と陽向、マネージャーとディレクター。

数名が同じ部屋にならなければいけない状況にーー。


俺は

『俺、陽向と同じ部屋で大丈夫です』と、口火を切った。


は?と今にも言い出しそうな陽向が、俺を睨んだ。

『スタッフさんたちもゆっくり休んで下さい。』

続けて俺は営業スマイル。


そう言われてしまっては、陽向も断ることなんでできない。


ふぅ~と小さくため息をついて、渋々案内された俺と同じ部屋に移動した。


もちろん日帰りの予定だったので、宿泊の準備もしていなくて荷物も少ない。


トントン。
部屋をノックする音が聞こえて、ドアを開けると衣装さんが立っていた。


『すみません。衣装脱いでもらっていいですか?温泉入れるみたいなんで…浴衣も貸し出してくれるみたいです。お願いします。』



『わかりました。着替えたら、持っていきます』

『ありがとうございます。』

そう言って、衣装さんは去っていった。

…ふたりっきりで…温泉か。

なんだか少し気まずい感じなのは…なんでだろう?


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