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22話 前世と今世

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 陽向が俺のカラダをすごく心配してくれて

なんだか、恥ずかしいっ///。


すると、突然カラダの力がストンっと抜けて
膝から崩れ落ちそうになった。

それを、陽向がすかさず支えてくれる


『大丈夫じゃ…ないじゃんっ!!…ごめんっ…』

申し訳なさそうに、謝る陽向。


『大丈夫だって!…ちょっとふらってしただけっ!…それに、もう謝るのやめて!!…なんか…ヤダっ…』


掴まれた腕を振り払う瞬間


頭の中に、今と同じようなやり取りがフラッシュバックしてきた



えっ!


俺、前にもこれと同じようなやり取りしてる?


頭の中に古い映像が流れる

力の抜けた俺を支える人…その人の腕を振り払う俺。

頭の中の映像の人は、陽向とは全然似ていない…陽向の顔じゃないのに…陽向だ!
それが陽向だって、わかる。


…これ、本当に?前世の記憶?


『ひなたっ!陽向!…俺の手っ!手握って!!』

戸惑う陽向の手を取った。


陽向と繋がる手。

…頭の中に、現れる映像。


これって、本当に?前世の記憶なの?


俺の手を取って、自分の額に当てて、キスをしている映像が流れる。


古い映画を見ているみたいに
頭の中に映し出される映像。



…知ってる…。


俺、これ…知ってる。


少しづつ、蘇る記憶。



これが?前世の記憶なのだろうか?


頭の中に少しづつ流れる映像。

思い出してる感じ…。


もっと、知りたいっ!


もっと、もっと…思い出したいっ!!


繋がれた手をぎゅっと強く握った。


陽向は、少し困った顔で…

『ひーくん?…そろそろ準備…しないと。…遅れちゃう。』

あっ…


パッと手を離す。

『…そうだな…』


記憶の呼び出しは中断された。


でも、なぜ?


今まで、手を繋ぐことなんてざらにあった。
なんなら、抱き合って撮影したりもしたのに…


今までこんな風に、頭の中に映像が映ることなんて無かった。



…やっぱ…あれか?

  …陽向と…っ///

昨日の夜を思い出すと思わず赤面してしまう。



『ひーくん!赤くなってる場合じゃないよ』

俺を見て、クスクスと笑う陽向。


『っわかってるっ///』



もっと、いろんな場面を見てみたい。そんな衝動に駆られていた。

でも、もう時間ないし…


いつでも、陽向の手に触れればいい。


そう、思っていたのに…。



それから、俺たちは何事も無かったかのようにいつもの生活に戻った。

カラダが繋がったあの日が、まるで夢だったみたいに…。

何の変化もなくて…ふたりの関係も変わることは無かった。


カラダを繋げてしまって、何か変わってしまう事を恐れていたのに、驚くほど何も変わらなかった。


そして、ただ過ぎていく時間。


あの日から、不思議と手を繋ぐ事も無くて


もっと、いろんなもの見てみたいのに…


それ以前にほんとにあの映像は前世なのだろうか?

でも、前世の記憶以外の言葉が見つからない。


わからないながらに、自分なりに調べてみた。


前世の記憶を覚えている人はごく稀で、

幼少期に微かに覚えているが、成長するにしたがって徐々に記憶が薄れていくパターン。

何かのきっかけで、前世を思い出すパターン。


俺は、後者の様だ。


陽向と関係を持ったことで、前世の記憶が蘇って来たのだと思う。


…そして、わかった。

よく見ていたあの夢は、前世の記憶だ!


冷たくなっていく手にすがって泣き続ける夢…あの手の持ち主は、陽向だ!!


なんで、今まできがつかなかったんだろう。

陽向…

前世を知って、余計に陽向が好きだと思い知らされる。

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