8 / 56
8話 手を繋ぐ意味
しおりを挟む
収録終わりに、楽屋前で陽向とじゃれ合っていると…
『氷雨さ~ん!!』
遠くから、大声で俺を呼ぶ可愛い後輩の声が聞こえた。
その声は徐々に近づいて来る。
走って近づいて来る姿は大型犬の様だ。
同じグループの隼だ!
隼は長身で、まるでモデルみたいにすらっとしていてスタイル抜群だ。
それなのに、笑った顔は幼くて可愛らしい。
隼が陽向を跳ねのけて、俺にハグをする。
それは、飼い主を見つけて駆け寄って来た犬そんな感じだった。
『氷雨さんも終わりなんですね?一緒に帰りましょうよ!!』
俺を慕ってくれる可愛い後輩。
『まぁ~いいけど…。陽向も一緒に…』
無表情で陽向は
『俺は…いいや…』と言った。
『陽向さんはいいって!帰りましょうよ!』
なんか少し、陽向が寂しそうに見えたのは俺の気のせいなのだろうか?
隼に腕を掴まれて、楽屋に戻ってそのまま連行されるみたいに連れていかれた。
なんか、さっきの陽向の顔が浮んで…
胸の奥がざわざわする。
テレビ局を出るところで
『隼…ごめん…やっぱ先帰って!』
俺は、準の腕を振り払って、陽向の所へ戻って行った。
別れ際のあの表情が頭から離れなくて、気になって仕方がなかったから。
走っていって楽屋のドアを開けた。
そこにまだ、陽向がいる様にと願って。
ドアを開けるとそこには支度を終えて、これから帰ろうとしていた陽向がいた。
よかった。まだいた。
『ハァハァ…ひなた!』
陽向は俺を見て驚いていた。それもそうだろう、さっき隼と帰っていったのだから。
『ひーくん?どうしたの?隼と帰ったんじゃなかった?』
『なんか…わかんないけど…陽向が…気になって…』
陽向は瞳を大きく見開いた。
『え?』
『え?あっ?…違うっ…そのっ…』
言葉に困っている俺に
『ありがとう。帰ろう。』ってさっきまでの表情とは全然違う穏やかな優しい顔で言った。
それは、名前にふさわしい太陽みたいな温かな笑顔だった。
陽向がぱっと手を差し出した。
俺は思わずその手を握った。
不意に出されたその大きな手に吸い寄せられるように、俺の手が重なった。
止められなかった…。
不意に出されたから、心は正直でその手を握ってしまったのだろう。
<好きだよ>
心の中で呟いた。
ぎゅっと握った手に力を込めた。
伝わって欲しくないけど…伝われと…。
一瞬、陽向がこっちを見たような気がした。
そして、握り返された手に陽向の体温を感じた。
好きな気持ちを隠すって、決めたはずなのに…。
こんな些細なことで、溢れてしまいそうになる。
このままでいたいから、俺の心の入れ物から溢れ出してしまいそうな好きを、もう少し閉じ込めておきたいんだ。
だから、手を離そうとしているのに、それが出来ない。
手を繋ぐ意味を、ハグしてくる意味を、俺に触れて来る意味を勘違いしそうになる。
陽向の行動に勘違いしそうになるんだよ。
陽向が思っている<手を繋ぐ意味>と、<俺の手を繋ぐ意味>が…悲しいけど違うんだよ。
俺、勘違いしてしまいそうになる。
陽向にそういうつもりはないから!!って自分に言い聞かせた。
『氷雨さ~ん!!』
遠くから、大声で俺を呼ぶ可愛い後輩の声が聞こえた。
その声は徐々に近づいて来る。
走って近づいて来る姿は大型犬の様だ。
同じグループの隼だ!
隼は長身で、まるでモデルみたいにすらっとしていてスタイル抜群だ。
それなのに、笑った顔は幼くて可愛らしい。
隼が陽向を跳ねのけて、俺にハグをする。
それは、飼い主を見つけて駆け寄って来た犬そんな感じだった。
『氷雨さんも終わりなんですね?一緒に帰りましょうよ!!』
俺を慕ってくれる可愛い後輩。
『まぁ~いいけど…。陽向も一緒に…』
無表情で陽向は
『俺は…いいや…』と言った。
『陽向さんはいいって!帰りましょうよ!』
なんか少し、陽向が寂しそうに見えたのは俺の気のせいなのだろうか?
隼に腕を掴まれて、楽屋に戻ってそのまま連行されるみたいに連れていかれた。
なんか、さっきの陽向の顔が浮んで…
胸の奥がざわざわする。
テレビ局を出るところで
『隼…ごめん…やっぱ先帰って!』
俺は、準の腕を振り払って、陽向の所へ戻って行った。
別れ際のあの表情が頭から離れなくて、気になって仕方がなかったから。
走っていって楽屋のドアを開けた。
そこにまだ、陽向がいる様にと願って。
ドアを開けるとそこには支度を終えて、これから帰ろうとしていた陽向がいた。
よかった。まだいた。
『ハァハァ…ひなた!』
陽向は俺を見て驚いていた。それもそうだろう、さっき隼と帰っていったのだから。
『ひーくん?どうしたの?隼と帰ったんじゃなかった?』
『なんか…わかんないけど…陽向が…気になって…』
陽向は瞳を大きく見開いた。
『え?』
『え?あっ?…違うっ…そのっ…』
言葉に困っている俺に
『ありがとう。帰ろう。』ってさっきまでの表情とは全然違う穏やかな優しい顔で言った。
それは、名前にふさわしい太陽みたいな温かな笑顔だった。
陽向がぱっと手を差し出した。
俺は思わずその手を握った。
不意に出されたその大きな手に吸い寄せられるように、俺の手が重なった。
止められなかった…。
不意に出されたから、心は正直でその手を握ってしまったのだろう。
<好きだよ>
心の中で呟いた。
ぎゅっと握った手に力を込めた。
伝わって欲しくないけど…伝われと…。
一瞬、陽向がこっちを見たような気がした。
そして、握り返された手に陽向の体温を感じた。
好きな気持ちを隠すって、決めたはずなのに…。
こんな些細なことで、溢れてしまいそうになる。
このままでいたいから、俺の心の入れ物から溢れ出してしまいそうな好きを、もう少し閉じ込めておきたいんだ。
だから、手を離そうとしているのに、それが出来ない。
手を繋ぐ意味を、ハグしてくる意味を、俺に触れて来る意味を勘違いしそうになる。
陽向の行動に勘違いしそうになるんだよ。
陽向が思っている<手を繋ぐ意味>と、<俺の手を繋ぐ意味>が…悲しいけど違うんだよ。
俺、勘違いしてしまいそうになる。
陽向にそういうつもりはないから!!って自分に言い聞かせた。
0
お気に入りに追加
21
あなたにおすすめの小説
キスより甘いスパイス
凪玖海くみ
BL
料理教室を営む28歳の独身男性・天宮遥は、穏やかで平凡な日々を過ごしていた。
ある日、大学生の篠原奏多が新しい生徒として教室にやってくる。
彼は遥の高校時代の同級生の弟で、ある程度面識はあるとはいえ、前触れもなく早々に――。
「先生、俺と結婚してください!」
と大胆な告白をする。
奏多の真っ直ぐで無邪気なアプローチに次第に遥は心を揺さぶられて……?

吸血鬼にとって俺はどうやら最高級に美味しいものらしい。
音無野ウサギ
BL
「吸血鬼に血を吸われるってこんなに気持ちよくっていいのかよ?」
超絶美貌の吸血鬼に恐怖よりも魅せられてしまった山田空。
ハロウィンまでの期間限定ならとその身を差し出してしまったが・・・・
7話完結
ハロウィン用に頑張りました🎃
ムーンライトノベルズさんでも掲載しています


美形×平凡の子供の話
めちゅう
BL
美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか?
──────────────────
お読みくださりありがとうございます。
お楽しみいただけましたら幸いです。

切なくて、恋しくて〜zielstrebige Liebe〜
水無瀬 蒼
BL
カフェオーナーである松倉湊斗(まつくらみなと)は高校生の頃から1人の人をずっと思い続けている。その相手は横家大輝(よこやだいき)で、大輝は大学を中退してドイツへサッカー留学をしていた。その後湊斗は一度も会っていないし、連絡もない。それでも、引退を決めたら迎えに来るという言葉を信じてずっと待っている。
そんなある誕生日、お店の常連であるファッションデザイナーの吉澤優馬(よしざわゆうま)に告白されーー
-------------------------------
松倉湊斗(まつくらみなと) 27歳
カフェ・ルーシェのオーナー
横家大輝(よこやだいき) 27歳
サッカー選手
吉澤優馬(よしざわゆうま) 31歳
ファッションデザイナー
-------------------------------
2024.12.21~

婚約者に会いに行ったらば
龍の御寮さん
BL
王都で暮らす婚約者レオンのもとへと会いに行ったミシェル。
そこで見たのは、レオンをお父さんと呼ぶ子供と仲良さそうに並ぶ女性の姿。
ショックでその場を逃げ出したミシェルは――
何とか弁解しようするレオンとなぜか記憶を失ったミシェル。
そこには何やら事件も絡んできて?
傷つけられたミシェルが幸せになるまでのお話です。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる