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冥土さんです!
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15分程すると、さっきキッカさんが歩いていった方向からキッカさんがやって来た。その歩く姿は、正中線を保ったまま真っ直ぐシャンとしていて、何だか気品を感じる上品なものだった。
「何の用です? ご主人、わざわざ呼び出しなどして。私、まだ仕事が残っているのですが」
キッカさんは何だか少しだけ不機嫌そうだ。まぁ、わざわざ来た道を戻ってきたわけだから無理もないか。
「いやね、俺の友達がキッカに会いたいって……」
「キッカ? ご主人、いつから私をそのような呼び方で呼ぶようになったのですか?」
昌也の言葉に、キッカさんが眉を潜める。その鋭い視線は刺すように昌也を捉えていた。
「いやっ! ゴメン! キッカさんに会いたいって……」
何でメイドの尻に敷かれているんだ。これじゃあ主従関係もあったもんじゃない、これだからドMはダメなんだ。
「あぁ、そうなのですか、解りました。それでは……」
キッカさんが俺の方に向き直り、スカートを摘まみ、頭を下げる。ドラマや映画で見るような、流麗で気品に溢れる動作だ。
「御初に御目にかかります、私、関 昌也のメイドを勤めております『キッカ』と申します。以後、お見知り置きを」
「あ、どうも、響 恭平です、宜しくね、キッカさん」
俺もキッカさんの優雅な動きに、自然と頭が下がる。それにしても、今時こんな挨拶をするメイドも珍しいもんだな。
「それで、私にどのようなご用件で?」
「あぁ、ちょっとキッカさんに聞きたいことがあってね……」
俺はキッカさんに先程の駅前の一件について尋ねた。すると、キッカさんは事も無げにサラッと答える。
「あぁ、そんなこともありましたね、それが何か?」
「ちょっ! ちょっと待って!」
キッカさんの答えに、昌也が慌てた様子で口を挟む。この話は昌也からしたら寝耳に水、この反応は仕方ないだろう。
「キッカさんそんなことしてたの!? 聞いてないんだけど!」
「それはそうでしょう、言ってませんから。このようなこと、わざわざ報告するようなことでもないでしょう」
「いや、そんなことないだろ……だって、下手したら警察沙汰だろ? 普通主人には報告するっていうか……」
昌也の言っていることは最もなんだけど、昌也は何だか弱腰だ。これじゃあ本当にどっちが主人か解ったもんじゃないな。
そんな昌也を尻目に、俺は更にキッカさんに尋ねた。さっきの大立回りでのキッカさんの得物、俺はあれがどうしても気になる。
「えっと、キッカさん、その箒なんだけど、ちょっと貸してくれないかな?」
「えぇ、どうぞ」
俺はキッカさんから箒を受け取った。見た目は普通の竹箒みたいたけど、手で持ってみると、質感は何だか金属みたいだった。それでも、重さはそこまででもない、恐らくこの箒の柄の素材はセラミックの類いだろう。俺は両手で箒を掴み、力を込めて頭の方を引っ張った。
「ンギギギ……」
おかしいな、抜けないぞ。確かにさっきキッカさんは素早く箒から刀を抜いたはずなんだけど。
「ほら~ さっきの話、冗談なんだろ?」
昌也はまだ俺の言うことを信じていないようだ。しかし、このまま力を込めて唸っていてもらちが明かない。
「ありがとう、キッカさん」
俺はキッカさんに箒を返した。すると、キッカさんが俺と同じように箒の頭を持つ。
「これは、私にしか抜けませんから。恐らく、私の思考と連動して刀のロックが外れているのだと思います」
キッカさんが箒の頭を引っ張ると、箒の中から水で濡れたような刃が現れた。その刀の鋭さは、そこにあるだけで俺達を威圧する。
「ぎゃああああ!!」
昌也は刀を見るなり奇声を上げながら飛び上がった。そりゃあ、こんな所でこんなもの見せられたらそうなるよな。
「キッカさん、何でそんな物騒なもの持ってんの!?」
「この箒は私に付属されていたものですから、私に聞かれても困ります」
「確かにそうなんだけど、いや、今思えば何で今時こんなアナログな箒が付いてきたんだろうな……」
いや、重要なのはそこじゃないだろ昌也、論点がずれているぞ。百歩譲って箒が付いてきたにしても刀は付いてこないだろうよ。やっぱり昌也はいい年して情報処理能力に難があるな。俺は脳内でツッコミを入れながら、キッカさんの話に耳を傾ける。
「この箒の銘は『冥土』です。そう説明書に書いてありましたから間違いありません」
「俺、説明書とかあんまり詳しくは読まないんだよな。帰ったら詳しく読んでみようかな……」
なるほど、これが噂の冥土さんって奴か。そんな冗談はさておき、俺は本題を切り出した。
「キッカさんは、なぜ自分がアンドロイドに攻撃したのか、解るかな?」
「それは、私も存じ上げません。ただ、あのアンドロイドが騒がしかったのが気にさわって、つい手が出たとしか言い様がありませんね」
「普通はそんなこと不可能なはずなんだけどね、俺にも詳しくは説明出来ないけど、そういう風になっているはずなんだ」
そう、アンドロイドは他のアンドロイドにも危害を加える事は出来ないはずなのだ。これも現代社会の大原則。最も、そのような状況が稀なのだけど。
「確かに、今までこのようなことをしようと思ったはありませんでしたね、なぜなのでしょうか? 私にも解りかねます」
「俺、もう解んねぇよ。キッカさんが物騒なものを持っていた理由も、キッカさんが何でこんなことをしたのかも」
昌也はウンウン唸りながら頭をガシガシ掻いている。俺だって、事前に情報が無かったら同じような反応をしていただろう。
「あくまで仮定なんだけど、俺の考えが正しければ説明がつくんだけどね」
「何だ? 仮定って、聞かせてくれよ! 恭平」
「私も気になりますね、教えて戴けますか? 響様」
二人は俺の言葉に食いついて、俺に詰め寄る。本当はちょっと言いにくいけど、こうなってしまったら仕方ない。
「えっと、二人とも、落ち着いて聞いて欲しいんだけど……」
この仮定、恐らくは当たっているだろう。俺は二人の顔を見ながら、意を決して、言った。
「キッカさん、あなたもウイルスに感染している」
「何の用です? ご主人、わざわざ呼び出しなどして。私、まだ仕事が残っているのですが」
キッカさんは何だか少しだけ不機嫌そうだ。まぁ、わざわざ来た道を戻ってきたわけだから無理もないか。
「いやね、俺の友達がキッカに会いたいって……」
「キッカ? ご主人、いつから私をそのような呼び方で呼ぶようになったのですか?」
昌也の言葉に、キッカさんが眉を潜める。その鋭い視線は刺すように昌也を捉えていた。
「いやっ! ゴメン! キッカさんに会いたいって……」
何でメイドの尻に敷かれているんだ。これじゃあ主従関係もあったもんじゃない、これだからドMはダメなんだ。
「あぁ、そうなのですか、解りました。それでは……」
キッカさんが俺の方に向き直り、スカートを摘まみ、頭を下げる。ドラマや映画で見るような、流麗で気品に溢れる動作だ。
「御初に御目にかかります、私、関 昌也のメイドを勤めております『キッカ』と申します。以後、お見知り置きを」
「あ、どうも、響 恭平です、宜しくね、キッカさん」
俺もキッカさんの優雅な動きに、自然と頭が下がる。それにしても、今時こんな挨拶をするメイドも珍しいもんだな。
「それで、私にどのようなご用件で?」
「あぁ、ちょっとキッカさんに聞きたいことがあってね……」
俺はキッカさんに先程の駅前の一件について尋ねた。すると、キッカさんは事も無げにサラッと答える。
「あぁ、そんなこともありましたね、それが何か?」
「ちょっ! ちょっと待って!」
キッカさんの答えに、昌也が慌てた様子で口を挟む。この話は昌也からしたら寝耳に水、この反応は仕方ないだろう。
「キッカさんそんなことしてたの!? 聞いてないんだけど!」
「それはそうでしょう、言ってませんから。このようなこと、わざわざ報告するようなことでもないでしょう」
「いや、そんなことないだろ……だって、下手したら警察沙汰だろ? 普通主人には報告するっていうか……」
昌也の言っていることは最もなんだけど、昌也は何だか弱腰だ。これじゃあ本当にどっちが主人か解ったもんじゃないな。
そんな昌也を尻目に、俺は更にキッカさんに尋ねた。さっきの大立回りでのキッカさんの得物、俺はあれがどうしても気になる。
「えっと、キッカさん、その箒なんだけど、ちょっと貸してくれないかな?」
「えぇ、どうぞ」
俺はキッカさんから箒を受け取った。見た目は普通の竹箒みたいたけど、手で持ってみると、質感は何だか金属みたいだった。それでも、重さはそこまででもない、恐らくこの箒の柄の素材はセラミックの類いだろう。俺は両手で箒を掴み、力を込めて頭の方を引っ張った。
「ンギギギ……」
おかしいな、抜けないぞ。確かにさっきキッカさんは素早く箒から刀を抜いたはずなんだけど。
「ほら~ さっきの話、冗談なんだろ?」
昌也はまだ俺の言うことを信じていないようだ。しかし、このまま力を込めて唸っていてもらちが明かない。
「ありがとう、キッカさん」
俺はキッカさんに箒を返した。すると、キッカさんが俺と同じように箒の頭を持つ。
「これは、私にしか抜けませんから。恐らく、私の思考と連動して刀のロックが外れているのだと思います」
キッカさんが箒の頭を引っ張ると、箒の中から水で濡れたような刃が現れた。その刀の鋭さは、そこにあるだけで俺達を威圧する。
「ぎゃああああ!!」
昌也は刀を見るなり奇声を上げながら飛び上がった。そりゃあ、こんな所でこんなもの見せられたらそうなるよな。
「キッカさん、何でそんな物騒なもの持ってんの!?」
「この箒は私に付属されていたものですから、私に聞かれても困ります」
「確かにそうなんだけど、いや、今思えば何で今時こんなアナログな箒が付いてきたんだろうな……」
いや、重要なのはそこじゃないだろ昌也、論点がずれているぞ。百歩譲って箒が付いてきたにしても刀は付いてこないだろうよ。やっぱり昌也はいい年して情報処理能力に難があるな。俺は脳内でツッコミを入れながら、キッカさんの話に耳を傾ける。
「この箒の銘は『冥土』です。そう説明書に書いてありましたから間違いありません」
「俺、説明書とかあんまり詳しくは読まないんだよな。帰ったら詳しく読んでみようかな……」
なるほど、これが噂の冥土さんって奴か。そんな冗談はさておき、俺は本題を切り出した。
「キッカさんは、なぜ自分がアンドロイドに攻撃したのか、解るかな?」
「それは、私も存じ上げません。ただ、あのアンドロイドが騒がしかったのが気にさわって、つい手が出たとしか言い様がありませんね」
「普通はそんなこと不可能なはずなんだけどね、俺にも詳しくは説明出来ないけど、そういう風になっているはずなんだ」
そう、アンドロイドは他のアンドロイドにも危害を加える事は出来ないはずなのだ。これも現代社会の大原則。最も、そのような状況が稀なのだけど。
「確かに、今までこのようなことをしようと思ったはありませんでしたね、なぜなのでしょうか? 私にも解りかねます」
「俺、もう解んねぇよ。キッカさんが物騒なものを持っていた理由も、キッカさんが何でこんなことをしたのかも」
昌也はウンウン唸りながら頭をガシガシ掻いている。俺だって、事前に情報が無かったら同じような反応をしていただろう。
「あくまで仮定なんだけど、俺の考えが正しければ説明がつくんだけどね」
「何だ? 仮定って、聞かせてくれよ! 恭平」
「私も気になりますね、教えて戴けますか? 響様」
二人は俺の言葉に食いついて、俺に詰め寄る。本当はちょっと言いにくいけど、こうなってしまったら仕方ない。
「えっと、二人とも、落ち着いて聞いて欲しいんだけど……」
この仮定、恐らくは当たっているだろう。俺は二人の顔を見ながら、意を決して、言った。
「キッカさん、あなたもウイルスに感染している」
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