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第二章 調停者。
朝陽。
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宙を舞う松ぼっくり。
ゆるりと放物線を描くそれは。
警戒心の強いトロールの警戒網を遂に擦り抜け。
静かにその頭へと命中します。
──コツン。
それは一人と一匹にとっての合図。
その瞬間、それに気づいたトロールが後ろを振り向くと生まれた大きな隙。
森に身を潜めていたアナスタシアは迷う事なくその足を踏み出します。
──ザッッ!!
「はぁああああっ!!」
──ザシュンッ!!
今までのどの攻撃よりも強く深い一撃を身体に刻み込まれたトロール。
「グフウゥウウッ!!」
彼は大きな咆哮を上げるとそれでも倒れる事なく力任せにその大きな棍棒を振り回します。
──ガギンッ!!
「……っくっ!!」
両手で剣を持ち何とかその一撃を防ぎ耐え凌ぐアナスタシア。
「グウゥオオオッ!!」
そんな彼女はその重い一撃に動きを鈍らせているとすかさずトロールは次の一撃を狙います。
「フォォオオオーーーー!!」
──ピョーン。
トロールがその手を振り翳した瞬間、目の前に奇声と共に現れたのは葉っぱのお化け。
「フゥッ!?」
そんな得体の知れない生物の行動にトロールは驚くとその動きを止めてしまいます。
「はぁあああっ!!」
──ザシュン……ザシュン、ザシュン、ザシュン。
その一瞬にアナスタシアの無数の斬撃がトロールに襲いかかると。
「グ、グ、グゥウウウッ!!」
たまらず天を見上げトロールは雄叫びを上げます。
「今だ!! アナスタシア!!」
「ああ。トロール、キミに沢山の不安を抱えさせてしまって、本当にすまなかった……」
──ザンッ!!
そしてアナスタシアの剣がトロールの身体を貫きます。
…………
……
光輝くトロールの形を象った淡い光の粒。
──バシュンッ。
そうして飛び散って消えていく光の粒の向こうに揺れて映る葉っぱのお化けの姿。
「お疲れ様、アナスタシア」
体に付けた葉っぱを落としながらいつもの口調で届くのはくろうさぎさんの声。
「……いや、クロエ。キミのお陰だよ。本当にありがとう。お疲れさま」
静かに剣を鞘に収めながらアナスタシアも答えます。
ここに『違和感』との戦いに決着をつけた一人と一匹の顔に自然と溢れる笑顔。
空には丁度朝陽がその顔を覗かせた頃。
この静かな森にも新しい一日が始まりを告げます。
──ポンッ!! マル!!
そして手元のクエスト依頼書に付けられたクエスト完了の大きなマル印を確認し視線をアナスタシアに向けた先、そこにあったのはくろうさぎさんの予想とはまるで違う表情を浮かべる彼女の顔でした。
「……どうしたんだい、アナスタシア?」
しかし、そんなくろうさぎさんの彼女を心配する声は届きません。
「……そんな……どうして……」
一人自分の世界に入り込むアナスタシアにくろうさぎさんはもう一度、今度は彼女の名前を呼びます。
「アナスタシア」
「──はっ!?」
その声に我を取り戻したアナスタシアはくろうさぎさんの名前を呼びます。
「……クロエ……」
「……アナスタシア……」
くろうさぎさんの胸によぎる嫌な予感。
アナスタシアが胸の前に翳した手の先でそれははっきりとしたかたちとなって現れます。
──フィン。
揺れる金色の天秤、聖慮の天秤。
その天秤の傾きは『違和感』を倒した先で元に戻るどころか。
その傾きを更に強めてそこに姿を表したのでした。
ゆるりと放物線を描くそれは。
警戒心の強いトロールの警戒網を遂に擦り抜け。
静かにその頭へと命中します。
──コツン。
それは一人と一匹にとっての合図。
その瞬間、それに気づいたトロールが後ろを振り向くと生まれた大きな隙。
森に身を潜めていたアナスタシアは迷う事なくその足を踏み出します。
──ザッッ!!
「はぁああああっ!!」
──ザシュンッ!!
今までのどの攻撃よりも強く深い一撃を身体に刻み込まれたトロール。
「グフウゥウウッ!!」
彼は大きな咆哮を上げるとそれでも倒れる事なく力任せにその大きな棍棒を振り回します。
──ガギンッ!!
「……っくっ!!」
両手で剣を持ち何とかその一撃を防ぎ耐え凌ぐアナスタシア。
「グウゥオオオッ!!」
そんな彼女はその重い一撃に動きを鈍らせているとすかさずトロールは次の一撃を狙います。
「フォォオオオーーーー!!」
──ピョーン。
トロールがその手を振り翳した瞬間、目の前に奇声と共に現れたのは葉っぱのお化け。
「フゥッ!?」
そんな得体の知れない生物の行動にトロールは驚くとその動きを止めてしまいます。
「はぁあああっ!!」
──ザシュン……ザシュン、ザシュン、ザシュン。
その一瞬にアナスタシアの無数の斬撃がトロールに襲いかかると。
「グ、グ、グゥウウウッ!!」
たまらず天を見上げトロールは雄叫びを上げます。
「今だ!! アナスタシア!!」
「ああ。トロール、キミに沢山の不安を抱えさせてしまって、本当にすまなかった……」
──ザンッ!!
そしてアナスタシアの剣がトロールの身体を貫きます。
…………
……
光輝くトロールの形を象った淡い光の粒。
──バシュンッ。
そうして飛び散って消えていく光の粒の向こうに揺れて映る葉っぱのお化けの姿。
「お疲れ様、アナスタシア」
体に付けた葉っぱを落としながらいつもの口調で届くのはくろうさぎさんの声。
「……いや、クロエ。キミのお陰だよ。本当にありがとう。お疲れさま」
静かに剣を鞘に収めながらアナスタシアも答えます。
ここに『違和感』との戦いに決着をつけた一人と一匹の顔に自然と溢れる笑顔。
空には丁度朝陽がその顔を覗かせた頃。
この静かな森にも新しい一日が始まりを告げます。
──ポンッ!! マル!!
そして手元のクエスト依頼書に付けられたクエスト完了の大きなマル印を確認し視線をアナスタシアに向けた先、そこにあったのはくろうさぎさんの予想とはまるで違う表情を浮かべる彼女の顔でした。
「……どうしたんだい、アナスタシア?」
しかし、そんなくろうさぎさんの彼女を心配する声は届きません。
「……そんな……どうして……」
一人自分の世界に入り込むアナスタシアにくろうさぎさんはもう一度、今度は彼女の名前を呼びます。
「アナスタシア」
「──はっ!?」
その声に我を取り戻したアナスタシアはくろうさぎさんの名前を呼びます。
「……クロエ……」
「……アナスタシア……」
くろうさぎさんの胸によぎる嫌な予感。
アナスタシアが胸の前に翳した手の先でそれははっきりとしたかたちとなって現れます。
──フィン。
揺れる金色の天秤、聖慮の天秤。
その天秤の傾きは『違和感』を倒した先で元に戻るどころか。
その傾きを更に強めてそこに姿を表したのでした。
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