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異世界の日々
集結する帝④
しおりを挟む「私はさっき入ってきたから待ってるよ」
「そう? じゃあ、行ってくるわ」
「うん、行ってらっしゃい」
そうよね、フィアだってあんな森に入って汗もかいてしまったんならお風呂くらいは帰って来てすぐぐらいには入ってるわよね。
部屋に残るってならそれの方がすぐに帰宅出来るかもしれないし、私は帰宅組じゃないからのんびり入ろうかしら。
フィアに別れを告げれば私は準備をしたものを持って大浴場に向かった。
大浴場につけば私以外には誰も居ないのか浴室は静かだった、居ない方がのんびり出来るからいいんだけど、服を脱いで中に入ればまずは汗や泥を流す為に髪と体を洗う。
異世界なのにどうやってこんな浴場作ったのかわからないけど、もしかしたら昔に来てた勇者が作ったのかもしれないわね。
そこだけは今までの勇者に感謝してあげるわ。
体を洗い終わればゆっくりと湯船に浸かる、体の芯から温まるような感覚に肩まで浸かれば小さくため息をつく。
【リルディア~】
「あんたじゃ溺れるんじゃないの?」
【えへ~、リルディアといっしょ】
ぱちゃぱちゃと私の隣でお風呂で遊んでいる様子のミィ、服を着たままなのに濡れてないのは何か理由でもあるのかしらね?
髪も濡れてないみたいだし、妖精は幽霊みたいな感じなの? でも、触れてるから実態はあるはずよね?
ちょっと気になるけども妖精のことを記した本なんてないから本人に聞くしかないのよね……。
「ミィ」
【あー!!】
ミィが答えるかわからないけども聞いてみようと声をかけてみたけど、ミィは私ではなく他の何かに反応したように湯船の真ん中の方に泳いでいる。
私の目からは何も見えない……ミィには何が見えてるのかしら?
【ん? 何だ、ミィフォレントじゃないか】
【さっくん!】
ミィの様子をじっと見ていると湯船の底から何か薄い水色のような球体がぷかりと浮かんできた。
その球体をよくよく見てみると中にはミィと同じ大きさくらいの男の子が入ってるみたいだけど、ミィが呼んでるから知り合いなのかも。
【ミィフォレントはあの場所に引き籠っていたんじゃなかったのか? リトが死んでしまって一番ショックを受けたのはミィフォレントだもんな】
【ミィ、リトがいなくなってかなしかったの……かなしくてかなしくて……ずっとあそこにひとりぼっち。 ……でもね、リルディアがいてくれるからミィまたおそとにでたの】
【リルディア?】
二人の様子を観察しているとミィが水の中から現れたもう一人の妖精を連れてこっちに戻って来た。
いきなり現れた妖精の方は私をじろじろと見ているけど……そんなに見られていると何だかちょっとイライラしてくるわね……。
【うん、いまはリルディアといっしょなの】
【ふーん、こいつがねー】
「たかが妖精ごときがこの私に向かってこいつだなんて言わないでよ」
私は妖精を信仰してるわけじゃないから”こいつ”なんて言われてじろじろ見られたら不愉快で仕方ないわ。
私の言葉にミィはにこにこと笑顔のままだけど、水色の妖精は私が話を聞いてるだなんて思って居なかったのかきょとんとしていた。
【ミィフォレント、この人間はなんだい? 僕たちが見えてるみたいじゃないか】
「うん、リルディアはさいしょからみえてるの」
【それにミィフォレントの祝福も受けているようだが……リトですら僕たちの姿を見るのに苦労してたんだぞ。 それなのに最初から見えてるし聞こえてるなんて本当に人間かい?】
何よ、この妖精は失礼ね、こんなに可愛い私が人間じゃないように見えるっての?
まあ、私の可愛さは人間とは思えないくらい美しくて可愛いのかもしれないけど、ちゃんとした人間ではあるんだからね。
妖精の姿が見えてる私が珍しいのか水色の妖精は私の周りをくるくると回りながら私を見ている。
「何よ」
【これは面白い! ミィフォレントは面白い人間を見つけたようだな!】
私の周りをくるくる回っていた水色の妖精は嬉しそうな笑みを浮かべながら楽しそうにしてる。
は? 意味わかんないんだけど……ミィは最初は人間嫌いだったみたいけどこの妖精は違うのかしら?
さっさから二人が呼んでるリトって人も居たみたいだけど誰かも知らないし、興味もないわ。
【うん、リルディアはたのしいの!】
【うんうん、ミィフォレントが楽しそうで何よりだ。 さて、リルディアだったか?】
「ええ、そうよ」
楽しそうにしてる妖精二人に少し面倒になってきたけども、水色の妖精の方に呼ばれればため息をついてしまいながらも返事を返す。
水色の妖精はぷかりと浮かび上がると私の目の前に立っていた。
【あのミィフォレントが選んだ人間だ、僕からも祝福を与えてほしいかい?】
「いらないわ」
祝福ってこの手の甲にある花の模様の痣と同じやつでしょ?
これが何なのかも良くわかってないし、本当に私の役に立つかどうかもわからないのに私の体に痣ばかり増えるのは嫌だもの。
手の甲に一個だけならまだ隠せるけども他の場所につけられたら隠せないし、そのせいで狙われ続けるもの面倒になるしね。
水色の妖精は断られるなんて思って居なかったのかぽかんと間抜けな表情を浮かべている。
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