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異世界の日々
風帝キャリー・レイモンド⑥
しおりを挟む「リルディアが妖精様に祝福を受けたのは俺も確認してる。 現セシルト家の当主はあまり良い噂を聞かない、リルディアが妖精様の祝福を受けたのを知れば妖精様の迷惑に……おい、聞いてるのか」
シアンが私が祝福を受けたことを説明しているけども風帝は聞いていないのかじっと手にした花を見ている。
風帝の様子が思っていたことと違うのか不思議そうに風帝を見て居るけど……とシアンの方に視線を向けるとシアンも私を見た。
風帝が居たら私の得になるって感じだったけども、本当に役に立つのかしら?
「ま……」
「ま?」
ようやく風帝が立ち上がったと思えば風帝は下を向いたまま小さく何かを呟いた。
何を言ってるのか聞こえないけど、さっき戦ってた時なんて大きな声を出してたんだからちゃんと言いなさいよね。
「まじかよ! シアンもディオももっと早く言えよ、あたしが生きてる内に妖精様の祝福を受けたお方に出会えるなんて思ってなかったさ!」
「……リルディアが祝福を受けたのは昨日のことだからな」
「こんなことなら手紙を受け取った時点で来ればよかったよ。 妖精様とずっと居られたんだからな!」
がばっと顔をあげたと思えば頬を紅潮させテンションもあがってるのか猫の尻尾もぶんぶんと揺れてる。
フィアも風帝の言葉には同意出来るのかこくこくと何も言わずに頷いている、私は同意出来ないけど。
シアンはこんな風帝の言動が予想出来ていたのか小さなため息をついてるだけで何も言わない、この状況をさっさとどうにかして欲しいんだけどさ。
「シアン」
「キャリー、まずは移動するぞ。 魔族のこともギルドに報告しないといけないからな」
「あたしは妖精様とご一緒したいんだけどねえ」
本当に妖精であるミィが好きなのか複雑そうな顔をしながらも一応帝のプライドがあるのか我儘は言わないみたい、……目の前にミィが居るからかもしれないけどね。
風帝が死んだ魔族の体を持ち上げ歩き出そうと森の中からさっき逃げて行った冒険者が四人揃ってやって来た。
今更戻って来なくてもよかったのに……。
「も、もしかして風帝様ですか?」
「ああ、そうだけど……あんたらは?」
冒険者たちは風帝のことを知っていたのか驚いたような表情をしているけど、風帝的には興味ないのか先ほどとは違い余裕そうにしてる。
妖精のことになると人が変わったかのようにテンションがあがるタイプなのね、よくあるオタクみたいな感じかしら?
「お、いや、私たちはギルドから来た者です。 魔物に捕らわれてる子供がいるとのことでこの近くの洞窟に来たのですが魔族が現れたとのことで戦ったのですが敵わず……他の子供を助けるために戻ってきました」
冒険者はみんな荒っぽい感じなんだって想像してたけど、ちゃんと敬語が使えることは使えるのね。
真面目に話してる冒険者だけど興味はないのか、風帝の尻尾はさっきみたいではなくたらんと垂れてるのが後ろから見える。
「そうかい、魔族はあたしが倒したから問題ないよ」
「魔族すらもこんな短時間で倒すとは流石は風帝様!」
「……ああ、そうだ。 あたしはこれから用事があるからこれをギルドに運んでくれないかい?」
良いことを思いついたと言わんばかりに冒険者に話しながら軽々と持っていた魔族の死体を地面に置いた。
その魔族の死体に少し顔が引き攣ったような冒険者たちだけど、帝である風帝には逆らえないのか少し絶望したような感じで頷いた。
まあ、こんなでかい死体なんて持って帰りたくはないわよね。
生きてる時より死んだ時の方が重いってどこかで聞いたことはあるし、死んだ時ってよりは意識がばい時もかしらね。
冒険者たちが運ぶことに絶望してる間も風帝は気にしてないのかミィと一緒に居られることだけを嬉しそうにしてる。
「わかりました……」
「ああ、ギルドに持って帰ったらあたしの名前で保存しておいてくれ。 用事が終わったら面倒だが解剖に参加しないといけないかもしれないからな」
「はっ、はい!」
解剖って日本みたいな感じでするのかしら?
ドラマぐらいでしか見たことないからどうするのかはわからないけど、私には関係ないことだから気にしないことにしましょう。
風帝は胸ポケットの中から小さな緑色の玉を取り出すと冒険者たちのリーダーっぽい人に渡してる。
あれが何か知らないけども冒険者の慌てたような姿から結構値が張る物かもしれないわね。
「じゃあ、行くぞ」
私たちはディオ先生にも報告をしないといけないし、それよりもさっさとお風呂に入りたいわ。
シアンの言葉を聞くと私たちの体はふわっと浮いた。
私やフィアは驚いてしまったけどもシアンは何も言わない。
「これは風帝様の魔法だから大人しくしてろ」
「これぐらいは出来ないとねえ」
冒険者が居るからか先ほどまで風帝のことを呼び捨てにしていたけど、様付けになっていた。
宿に戻ったらその様付けも変わるでしょうけどね。
四人の冒険者と魔族の死体を放置して、私たちは空に飛び立った。
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