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異世界の日々
サバイバル演習と再会③
しおりを挟む火事になってはいけないのでちゃんと焚き火を消してから移動を始めた。
「シャイニングトカゲに武器はあまり効かない」
「まだ学園の実習だからいいけどギルドの依頼なら魔法使ったら鱗がボロボロになるから売れないしね」
「まあ、今回は魔法使ってもいいだろう」
ライア達が話してるのを聞きながら歩く。
喉仏辺りにしか武器が効かないのは結構有名なわけ?
私はラースに教えられたけど。
「フィアちゃん、シャイニングトカゲって武器効かないのぉ?」
「うん、そうだよ。 剣術が得意な人なら素材を無駄にしなくて済むんだけど……」
てことは、フィアはそんなに剣術が得意じゃないってことね。
アルトも剣は持ってないみたいだし。
「フィア、リルディアから離れるなよ」
「リルディアちゃんは守るから大丈夫、アルト」
フィアとアルトは仲良いわねー。
「ねえ、フィアちゃん。 リルの事はリルって呼んでもいいよぉ?」
セルディアやクリュスもあだ名で呼ぶし、フィアやアルトなら許せるわ。
「え、……いいの?」
驚いてはいるけど嫌ではなさそうな感じね。
猫耳がぴくぴくと動いてるわ。
「うん! だって、フィアちゃんもアルトくんも大切なお友達だもん」
「……じゃ、じゃあ……リル……」
「なぁに、フィア?」
恥ずかしそうに頬を染めながら私の名前を呼ぶフィアににっこりと笑ってみせる。
ついでに私もちゃん付けを無くして呼んだらフィアは更に嬉しそうに微笑んだ。
……何だかくすぐったいわね。
「リルディアがリルディアでよかった」
私達を見ていたのか安心したような笑みを浮かべたアルトが言った。
意味わかんないけど。
「嘆かわしい事に種族の違いで差別する貴族がまだ多いからね」
「王子であるお前が言っていいのか?」
「王子だからこそ、この国を良くする為に考えないといけないんだよ。 獣人だから、盲魔だから、そんな差別はなくさなければならない」
ライアも色々と考えてるんだね。
次期国王とされてるライアなら当たり前のことかもしれないけど。
「ライア、凄いねぇ! リルもライアのお手伝いするぅ」
王妃になったらそれくらいはしないとね。
ライアに嫌われたら元も子もないし。
「ありがとう」
にっこりと笑ってるライアに私もにっこりと笑ってみせる。
ライアに気に入られれば気に入られる程、私が王妃になる日が近付くわ。
……それにしてもシアンがまた何か言いたそうに私達を見てるけど。
もしかして、シアンって男色なの?
それなら可愛い私を見ても何も思わない理由にも納得がいくわね。
ライアもシアンと常に一緒みたいだから悪い気はしてないのかしら?
シアンがライバルだとは思わなかったわ。
「止まれ」
私を見てたシアンだったけど急に歩くのを止めて私達を静止させる。
木々の間から覗けばシャイニングトカゲが二匹居た。
シャイニングトカゲは群を作る事があるから二匹は少ないかも。
「一気に五匹居た方が楽だったよな」
「でも、……少ない方がリルを守れるから……」
トカゲ如きに怪我する訳ないけど私は戦闘が苦手な可愛い女の子なんだからね。
「俺らからやっていいか?」
「僕は構わないよ」
「ああ」
アルトがライアとシアンに言えば腰にあった剣を抜きシャイニングトカゲの前に飛び出した。
武器はあまり効かないって言ってたのに魔法じゃないの?
動きが鈍いシャイニングトカゲと身体能力が高いアルトでは全然違う。
上手く剣と身体能力でシャイニングトカゲ二匹を翻弄している。
「風よ、我が力となりて敵を貫け、ウィンドアロー!」
まるで剣を使いながら踊っているようなアルトから目を離せないでいると隣から詠唱か聞こえた。
フィアが両手を前に出し、うっすらとした緑色の矢をシャイニングトカゲに放った。
十本ぐらいの矢は一匹のシャイニングトカゲに突き刺さる。
フィアの属性は風なのね。
「リル、戦い初めて見たぁ」
アルトとフィアのコンビネーションを見ながらもライアに甘えるのを忘れない。
ここは怖がってた方がいいのかしらね。
「シャイニングトカゲは中級魔法さえ使えれば簡単に倒せるからね」
ふーん、ライアは軽く言ってるけど私たちの年齢なら使えるか使えないかぐらいじゃない。
フィアもアルトもそれぐらいの能力はあるって事よね。
「こんなもんか」
フィアが中級魔法使えるならアルトも使えるのだろうし、今回は囮役になったんだろうね。
アルトは持っていた剣を腰につければ戻ってくる。
「フィアもアルトも凄いねぇ~!」
「わ、私はそんな事ないよ」
ほんのりと頬を赤く染めたフィアがふるふると首を横に振ってる。
「さあ、素材を剥ぎ取って次を探そう」
もちろん、私が素材剥ぎ取りなんてするわけないけど。
私は可愛いからそんな事しなくても許されるのよ。
ライア達が素材を剥ぎ取るのをぼんやりと見ていたが急にどこからか大きな鳴き声が聞こえた。
私が気付いたのだからライア達が気付いてもおかしくはないよね。
「今のは?」
【ギャアアアア】
ライア達が素材の剥ぎ取り止めて剣を抜き辺りを警戒する。
すると、上から黒い龍が降りてきた。
「あれはデスドラ!」
「馬鹿な、この森にデスドラがいるはずはない!」
黒く光鱗、体長は三メートルはありそうな巨体、先が尖ってる尻尾。
ラースに聞いたことがある。
デスドラ。
Aランク上位の竜種。
異常なまでの食欲と凶暴さにデスドラが出たら森が破滅すると言われてる最悪な竜。
この森に現れた事がないからラースも見たことないって言ってた。
『ふん、ゴミがたくさん居るわ』
魔物の声がわかる様にしてもらった私には不愉快なトカゲね。
魔物にはこの私の可愛さがわからないのかしら。
私はまだ対応策があるけどフィアは真っ青になって辛そうね。
「フィア、アルト。 リルディアを連れて逃げろ」
固まって動けなくなったであろうフィアとアルトを庇う様にシアンは前に出る。
王子であるライアは庇わなくてもいいのかしらね。
「で、でも……デスドラを2人で相手するなんて無謀……!」
「2人も4人も変わらない。 逃げて教師を呼べ」
「だったら、リルディアだけ逃げてもらって……」
「戦えないリルディアちゃんに1人で行かせるわけにはいかないなよ」
デスドラはこっちを睨み付けているだけで攻撃してこようとはしてない。
私達が束になっても勝てないと判断してるんでしょうけど確かに勝てないわね。
フィアもアルトも真っ青で戦えそうになさそうだし、シアンは強いけど私達を庇いながら戦う事は出来ない、シアンより弱いライアも同じく。
でも、フィアもアルトも2人を置いて逃げる事はしない、シアンとライアを見殺しにするのが嫌なのかな。
あ、でもバリアの使い方次第では私なら倒せるかも、やらないけどね。
『我の食事になれる事を光栄に思うかが良い!』
また大きな鳴き声(私にとってはムカつく言葉だけど)を上げ、こっちに向かって炎のブレスを吐き出す。
「フレイムバリア」
シアンは受付女の魔法を受け止めたバリアを直ぐに張った。
『ゴミの癖に小癪な』
「フィア! アルト!」
いつものシアンでは考えられないくらいの声で二人を呼ぶも先ほどのデスドラのブレスに腰を抜かしてしまったのか座り込んでいる。
フィアの瞳からはポロポロと涙もこぼれていた。
「チッ!」
シアンの魔法により私達は無事だけどずっと守ってばかりも居られないでしょうね。
教師にも報告しなきゃいけないのに、フィアとアルトは動けない。
八方塞がりの時、遠くから遠吠えが聞こえた。
だけど、私にはしっかりとその遠吠えの意味がわかったの。
“リルディア!”って……。
デスドラもその遠吠えに気付いたのかブレスを吐くのを止めた。
そして、ガサリと落ち葉を踏みしめた様な音が聞こえた方を見たら……。
「デスドラに続いてライウルフだと」
鋭い牙を持ち、銀色の毛並みにすらりとした身体。
ライウルフ、……私の親友の息子。
私が守れなかった大切な家族!
『トカゲ風情が俺のリルディアに手を出す事は許さない!』
『犬っころか増えただけで何も変わらん』
デスドラがいきなり現れたキルクにブレスを吐こうと口を開く。
駄目! もう、私の大切な家族は失わせない!!
「リルディア!」
デスドラが口を開いた瞬間、私はキルクに向かって走る。
シアンが私を引き止めようとしても、ライアに嫌われたとしても、フィアが泣いていても、アルトが絶望した表情をしていても、私は二度と家族を失いたくないのよ!
私はキルクを庇うように前に出るとデスドラのブレスか放たれる。
私はあの神からどんな魔法も物理攻撃も効かないバリアを貰ったのよ。
こんなブレス怖くないわ。
「プランドル!」
私とキルクを包み込むシャボン玉の様なバリアは放たれたブレスも通さない。
威力を吸収するバリア、そしてこれは受けた威力を放出出来る。
デスドラが私にブレスが効かない事に驚いたのかブレスを吐くのを止めた。
『ば、馬鹿な!』
「リベレ」
私の可愛い家族に攻撃した事を悔いなさい。
私か言葉を放つとシャボン玉は割れ、大きな炎のブレスとなってデスドラに襲いかかる。
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