ぶりっ子の夢は玉の輿

猫目 しの

文字の大きさ
上 下
10 / 109
異世界の日々

魔武器と決闘

しおりを挟む
 





あの日以来、私がディオ先生に呼ばれる事はなくなった。

私が五大貴族だからだろうとは思うけどだからって疑われてないわけではない。

今まで疑われる事なんかなかったし、ディオ先生との勝負はちょっと楽しいかも。







「今日は魔武器を作るから今からグラウンドに集合しろよー」





朝礼が終わりクラス中がガヤガヤと騒がしい時に教室を出ようとしたディオ先生の言葉に全員がピタッと固まるもすぐに移動を開始した。

魔武器は使いこなせれば普通の武器より切れ味も威力も強くなる。







「リル、危ない魔武器は欲しくないなぁ」





私の両隣はセルディアとクリュスがいつも居る。

私的には王子に近寄りたいけど卒業まで時間はたっぷりあるし我慢しよう。







「魔武器はその人の本質で決まるからな。 リルちゃんなら回復系の魔武器が出てくるんじゃないか?」



「リルに武器は似合わないからね」





チヤホヤされるのはいいんだけど本質で魔武器が決まるなら回復系の魔武器なんて出てこない。

まあ、剣や斧みたいな大きいのは多分ないから小さなナイフが妥当だと思う。

それか鞭。



魔力がないから纏わせる事は出来ないし魔武器がわかったら使い方を練習しないと。

次の休みにはギルドに行くつもりだしね。







「おっ、もう全員集まってるみたいだな」





グラウンドに着けばもう私たち以外来てたのか欠伸をしてるディオ先生の周りに集まっていた。







「全員集まったな。 今から魔石を取りに来てもらうから取った奴から魔武器作っていいぞ。 そこで寝てるから出来たら報告しろ」



「じゃあ、俺が取ってくるな」





いつもの五大貴族メンバーになってるし、後はシアンとライアだろう。

8人でやるとか多いなぁ。



ライアに近付けるからいいんだけど。

サラ達が固まってる方に向かいながらさり気なくライアの隣に移動した。







「ライアはどんなのが出ると思う?」





最初は様付けしてたけど友達になったからしなくていいと言われたので今は呼び捨てにしてる。

ライアもシアンも私の魅力には落ちてないみたいだし頑張らないと。







「どうだろうね、やってみなきゃわからないや」





にっこりと王子スマイルを浮かべてるライアに周りの女が顔を赤らめてるのがわかった。

私は平気だけどね。



ライアとシアンと一緒に居るようになってから更に女には恨まれてると思う。

元々、セルディアとクリュスと一緒に居るし他の男にも甘い顔してたから恨まれてたけど更にイケメンなライアとシアンも一緒に居るようになったからね。



私は別に苛めとかあっても平気だから大丈夫だけど。

ってか、五大貴族の私を正面から苛める人なんて居ないでしょ。







「持ってきたぜ。 じゃあ、やるか」





クリュスは持ってきた魔石をみんなに配れば我先にと言わんばかりに手に魔力を込めている。

魔石に魔力が集まれば軽く光った後、クリュスは魔石ではなく大剣が握っていた。



あれ?

魔力を込める必要があるなら私はどうすればいいのだろうか?

ディオ先生は何も言わなかったけど。







「おやおや、一直線なクリュスにピッタリな武器だな」



「次、やります」





チラチラとシアンを見ていたアリスが手を上げればサラとレイアは悔しそうにアリスを見ている。

順番なんて何番でも同じでしょ。

ただ、どれだけ優れた魔武器を作れるかどうかでしょうし。



クリュスと同じように魔石に魔力を込めれば魔石は黒い鞭にと変わる。

……普段大人しいのに鞭って見方がちょっと変わるかもね。







「役に立ちそうにないかもね」



「次は私がやるわ」







女の蹴落とし合いは男にとったら恐怖かもしれないわね。

まあ、私は全然怖くないけど。



レイアは良い魔武器を出してシアンに見てもらいたいのか強い魔力を魔石に込めているけど、ただの馬鹿。

魔武器は魔力の量じゃなくて質で決まるのに無駄に魔力込めちゃって。





レイアの魔石は細い剣、レイピアにと変わる。







「攻撃出来るかもしれませんが防御出来ないですね」



「じゃあ、次は私」





ビッチ女たちが張り合ってるのでセルディア、シアン、ライアは見てるだけになってる。

最初に作り始めたクリュスは偉いね。

私もまだだけど魔力ないから作れるかわかんないし。



サラが作る魔武器に興味なかった私は作る姿を見ていなかったけど、サラの手には弓が握られていたのでそれが魔武器なのだとわかる。



今の所、前衛3人に後衛1人か。

8人パーティーなんてないから何かやるとしても半分の4人でしょ。

組むとしたらライアと組みたいけど魔武器にもよるかな

私の武器はナイフだから前衛だし。







「弓なんてただ避ければいいだけじゃない」



「何か文句ある?」



「私が一番いいでしょ?」



「防御しないつもりですか」







3人の間にバチバチと火花が散りながら蹴落とし合いが始まった。

蹴落とし合いってかただの子供の喧嘩だけどね。





「次は僕がいく」





セルディアは喧嘩を見ないようにしながら魔石に魔力を込める。

まあ、あんなの介入しない方がいいしね。



あっ、クリュスが止めようとして巻き添えくらった。









「リル、僕は双剣だったよ」





わざわざ私に報告してきたセルディアの手には綺麗な双剣が握られてる。

……作る所見てなかったけど。



私が見てなかったなんて言ったらセルディアは拗ねるから面倒。

まっ、それだけ可愛い私に惚れてるって事だからいいけどね。







「セル兄様の剣綺麗ぇ~。 格好いいセル兄様にピッタリかも」







少し頬を赤らめながらもちらっとセルディアを上目遣いで見ればセルディアの頬も赤くなってるのがわかる。

私の上目遣い可愛いでしょ?







「……ライア、次やれ」







セルディアと見つめ合ってたら不機嫌そうにシアンがライアに言った。

ライアとシアンは落ちにくそうだし、あんま色恋に興味ないのかな。





「はいはい」







にこにこと楽しそうに笑ってるライアは不機嫌そうなシアンも気にせず魔力を込めた。

親友っぽいしライアにはシアンが不機嫌になった理由がわかるのかも。



セルディアといちゃつくのを止めながらライアを見ていれば魔石は細長い棒に変わった。







「これ、何だろ?」





ライアも武器が出てくると思ってたのか細長い棒に不思議そうにしてる。

あれ? 私あれが何か知ってる、武器じゃないけど。



あれはフルートだ。

こっちは楽器がないから誰もわからないだろう。

もしかしたら、棒状だし殴る物だと思ってるかもしれない。 





「これも魔武器なのぉ?」



「初めて見る形だけど魔石から出来たし魔武器かな?」







やはりライアは使い方をわかっていないのか不思議そうにしながらフルートを振っている。



教えた方がいいだろうけど……いっか。

自分でわかった方がいいだろうし、それでもわかんなかったら教えればいいだけ。





「次は俺だ」





疑問を抱えてるライアを無視しながらシアンは魔石に魔力を込めてる。



そう言えばシアンとライアってどんな仲なわけ?

王子とギルドマスターの息子だからやっぱりギルドの依頼とかなのかな。

……今度聞いてみよう、もしかしたらライアを落とす為の攻略法がわかるかもしれないしね。



シアンの魔石は軽く光れば銃に変わった。

この世界の銃は弾ではなく魔法を撃てるらしい。

普通に買えば結構値段が高いからあまり貴族とかしか持ってない。







「シアンは銃か。 次はリルディアちゃんだろう?」



「リル出来なぁい……」





ライアに催促されたとしても魔力のない私が作れるわけないし。

たくっ、クリュスもわかってるんなら持って来ないでよね。







「リルは僕が守るから魔武器なんていらないさ」



「俺も居るしな」







1人でギルドに行く時はちゃんと戦うけどね。

学校に居る間は私を好きな奴が守ってくれるから必要ない、何があるかわかんないから一応ナイフは持ってるけど。





「甘やかしてるだけじゃ駄目じゃないっ」



「そうよ。 リルディアももう10歳なのよ」



「戦えなきゃ死にますよ」







いつの間にか喧嘩が終わってた3人が私を援護してるセルディアとクリュスに意見する。

あんた達的には私は死んだ方がいいんでしょう?

死ぬ気はないけど。





「だからって魔力がないんだから魔武器は作れないだろ?」



「魔法も使えない、魔武器も持ってないじゃ可愛いリルがそれこそ死んでしまうじゃないか」







セルディアとクリュスは絶対私の味方なんだから守ってくれるに決まってんじゃん。

特にセルディアは過保護で着替えから何もかもさせてくれないのに。

だからこそ、ラースとの特訓の時は怪我もしたからうるさいくらい騒がれたんだけどね。







「……人には向き不向きがある。 無理に戦う必要はない」





シアンにも言われてしまえば3人はショックを受けたように黙ってしまった。

私もシアンが言うとは思わなかった。



ライアも予想外だったのか鳩が豆鉄砲を食らったようにシアンを見てる。

あっ、もしかして私に惚れちゃったとか?

……あのシアンが誰かに惚れるなんてあるかわかんないけど。







「おや、そこに居るはリルディア嬢じゃないか」





悔しそうに手を握り締めながらも泣きそうな表情の3人をスルーしていればいきなり声が聞こえてくる。

振り向けば入学してからすぐに私に告白してきたコーノ・トスシルナが居た。



もちろん、私は断ったけど。







「リルに何か用か? トスシルナ」



「僕の愛しの姫君が居たから声をかけただけさ。 リルディア嬢もこの僕に声をかけられて嬉しいだろう?」





 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

王が気づいたのはあれから十年後

基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。 妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。 仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。 側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。 王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。 王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。 新たな国王の誕生だった。

悪役令嬢の去った後、残された物は

たぬまる
恋愛
公爵令嬢シルビアが誕生パーティーで断罪され追放される。 シルビアは喜び去って行き 残された者達に不幸が降り注ぐ 気分転換に短編を書いてみました。

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

愚かな父にサヨナラと《完結》

アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」 父の言葉は最後の一線を越えてしまった。 その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・ 悲劇の本当の始まりはもっと昔から。 言えることはただひとつ 私の幸せに貴方はいりません ✈他社にも同時公開

私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。 ※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!

目が覚めたら夫と子供がいました

青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。 1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。 「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」 「…あなた誰?」 16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。 シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。 そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。 なろう様でも同時掲載しています。

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

処理中です...