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不運を呼ぶ男
⑧
しおりを挟むシイと別れた後に私はマイケルが運ばれた救護所に向かった、すぐに向かったので煙の影響はないと思いたいが、私がついた頃には火の回りが早かったからな。
念の為に地蔵鑑定をして無事を確認した方がいいだろう。
救護所に入ると医者も誰も居なくマイケルだけがベッドに寝かされていた、起きていたのか少し怪我をしているマイケルが私の方を見た。
「……え……」
私は透明化を切ってに人形も使わずに来たので初めて見るであろう地蔵の私にビックリして目を見開いているようだ。
ぽかんとした様子で叫ぶことを忘れてしまっているのか金魚のように口をぱくぱくとさせるだけなのでベッドの横まで近付く。
「私は地蔵のアヴニールだ」
「じ、地蔵? アヴニール?」
少し混乱したような感じではあるが私が危害を加えないと思ったのか起き上がろうとしていた体をまたベッドに沈める。
軽く地蔵鑑定をしてみたが擦り傷があるくらいでそれほど大きな怪我はないようだな。
これぐらいの怪我なら大丈夫そうだが、地蔵治癒をかけておくか。
「ああ、私自身がマイケルに会うのは初めてだがマイケルの噂は聞いた」
「僕の……噂?」
「不運なとこがあり、いつも怪我をしたり物を壊したりと大変だと」
大幅な理由はシイだっただろうが、今回の件を見ればシイが原因じゃない不運もあるようだな。
私の言葉に何も言えなさそうな表情をして苦笑いしていたが、混乱も少しは落ち着いたのか体から力が抜けたのがわかった。
「……ははっ、少し恥ずかしいな……それで、アヴニールは僕に何か用かな? アヴニールとは初めて会うよね?」
「私の知り合いがマイケルのことを心配していたのでお見舞いにな。 彼女は前からマイケルのことを知っていて今回の火事のことも心配していたのだが、事情があって来れなくなってしまってな」
「僕の心配を……?」
私も少し心配はしていたが、一番心配しているのはシイだっただろう。
それでも、シイはマイケルに己を知ってもらいたい一心で頑張ろうとしている、マイケルのことが心配だっただろうに。
「ああ」
「僕にも心配してくれる人が……」
「ああ、だけどマイケルのことを心配するのは彼女だけじゃない。 私が噂を聞いた街の人間もマイケルをからかってやろう、悪口を言ってやろうと考えていたわけではなく純粋に心配をしていた。 あの火事になった家の中にマイケルが取り残されていた時もマイケルを助けようと街の者は走り回っていた。 この街の者は皆、マイケルを心配しているんだ」
初めに会った街の者も、マイケルを助ける為に人を呼びに走った者も、シイも含めてこの街の人間はマイケルのことを心配している。
そう誰も心配をしないかのような言い方は止めた方がいい。
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