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森の中の貴族の少女
⑧
しおりを挟む「私の可愛いエリー、もう大丈夫よ。 貴女を脅かすものは全て私が葬ってあげるわ」
「いや……お母様、私の姿を見ないで下さい……。 こんな醜い姿で帰っても私を嫁がせる家なんてありませんわ、お母様やお父様の御迷惑になるなら私はここでアヴニール様と暮らします」
私は人の見た目なぞ気にはしないから問題はないがそれを言ってると父親の方が怖い顔で私の方を見てくるので出来れば止めて欲しい。
攻撃をされてもこの地蔵ボディには効かないから大丈夫ではあるのだが。
「貴女は例えどんな姿になっても私の可愛い娘よ、誰にだって貴女のことを悪く言わせたりしないわ。 もし、リアムが認めなかったら離縁してでも貴女を守ってみせる」
「どんな姿になろうとも私のエリーには変わりないぞ!? あの馬鹿は私が後で消し炭にしてあげるから帰って来い、エリー!」
母親の言葉に本気を感じた父親は焦ってはいるものの本当にエリザベートのことを愛しているのに間違いは無かった。
これは地蔵読心術が使える私だからわかることではあるので、エリザベートからしたら両親が本心で言っているのかどうかがわからないようだった。
エリザベートの恐怖心が私には伝わってくるが、ここで他人の私が口を挟めばややこしいことになるのは必須。
しかし、エリザベートを説得出来なければ自害してしまう可能性もあるので私の旅に連れて行くのも問題はないが……。
「……エリザベート嬢……いや、エリー」
「ト、トール様……」
そんな両親とエリザベートのやり取りを見ていた第一王子は覚悟を決めたような表情をしてドアの前まで近付くと開けようとはせずにドアに手をそえた。
そんな第一王子の声が聞こえたのかエリザベートの声は震えており更なる恐怖心が私には伝わってくる、しかしそんなエリザベートを呼ぶ第一王子の声は柔らかい。
「エリー、君には弟が申し訳ないことをしたね。 兄として謝罪するよ」
「そ、そんなっ、トール様が謝ることではございませんわ! これは私が至らないばかりに起きたこと、トール様の責任ではございません!」
「いや、僕の責任だよ。 君を守ってあげられるのは僕だけだったのに、僕は王妃の命令に逆らえず君を守れなかった」
「トール様……」
第一王子とエリザベートが話してる中、父親が何か言いたそうにしているのを母親が止めているのが横目に見えた。
二人の仲に何があったかなんて過去を見ればわかるが、地蔵はそんな野暮なことはしない、黙って二人の行く末を見守るのみ。
「エリー、君は皆から嫌われた黒を持つ僕を綺麗だと言ってくれたね?」
「だって、本当に綺麗だと……」
「エリー、僕に顔を見せてくれないか?」
エリザベートは覚悟を決めたのかそっとドアを開けて第一王子を向き合う、その顔には不安や恐怖心が見えているが第一王子はふんわりと柔らかい笑みを浮かべるとその酷い火傷の跡がある額に口付けた。
驚いたように体を跳ねさせ信じられないモノを見るような目でエリザベートは第一王子を見上げている、第一王子はそんなエリザベートを大切な者を見るかのように優しい目をしている。
父親は今にでも第一王子に殴り掛かりそうになっているが母親の魔法により口を氷で覆われ、足も凍らされているので動けないでいるようだった。
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