上 下
1,272 / 1,278
第六章 【二つの世界】

6-499 再会

しおりを挟む







「……私たちにも、挨拶させていただけませんか?」

「あ……」

その姿は、いつも思い出していた若々しい頃のエレーナたちだった。


「久しぶりね……ハルナ」

「エレーナ!元気だった!?」

「ちょっと……この状態で元気だったは無いでしょ!?まぁ、ハルナらしいっていえばそうなんだけど」

陽菜はエレーナの言っている意味がよくわからなかったが、ただ笑顔で頷いてエレーナの再会を喜んだ。
そして、その背後にはハルナと交流を重ねてきた者たちの姿が見える……が、その中に知っていた顔が見えなかったことに疑問を感じた。


「あ、ステイビルさんは?」

「ステイビル様は、また”あの世界”へと戻られたわ」

「え?……”あの世界”って?」


エレーナの説明にピンと来ていないハルナに対し、その助け舟を出したのはマーホンだった。


「エレーナ様がおっしゃっているのは、ついこの前までハルナ様が精霊使いとしていらっしゃった世界のことですよ」

「マーホンさん!」


陽菜は久々に、マーホンと対面し


「……アンタさ、この状態になっても鈍いんだね?これだけ、アタシたちにとって懐かしい人たちがそろっていることをおかしいとは思わないの!?」


「あー……そういえば、そうだね。なんでだろう?」


「はぁ……まったく。まぁ、こっちに来たばっかりだから受け入れられないのはわかるけど、馴染みすぎだね」


その言葉に、自分がこの状況になれるために苦労したエレーナと他の者たちも、小夜の陽菜に対する言葉にうんうんと頷いていた。



「じゃあ、ここってもしかして……」


「そうだよ、もう肉体から解放された世界なんだよ……ここは」



「でも、私たちは特別なんだ」


「特別?……どうして?」


「じゃあさっきのステイビルさんは……」

「もう一回、あの世界に向かっていったのよ。自分には足りないものが多すぎるんだって言ってね」

「ってことは、つい最近まではこっちに行ったってこと?」

「そうね、こっちの世界では時間っていうものを意識することは無いけど、ハルナがこっちに来る少し前に降りていったわ」


エレーナは本当は、ステイビルがなかなか来ないハルナのことを迎えに行ったことを知っている。
だけど、その後だった……陽菜が、向こうの世界での役目を終えて、この世界へとやってきたのは。


久しぶりにみんなの顔をみて嬉しい反面、先程の小夜の説明であることが浮かんできた。


「多分、ここって”死後の世界”……っていうのかな?そうだと思うんだけど、あっちの世界と私たちがいた世界って繋がってるってことなの?」


「ううん……私たちも特別なはからいで、陽菜が元いた世界の空間とつなげてもらうことができたのよ。あるお方にお願いしてね」


「ある……お方?」


エレーナはその言葉に、にっこりと笑顔をむけて次の存在にその説明を託した。


その場にまた、新しい光の塊が浮かび上がってくる。
そしてそに光は小さな光と集約され、陽菜があの世界で最初に見た存在が思い浮かんだ。


『ひさしぶりだね!ハル姉ちゃん!!』





しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます

結城芙由奈 
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】 ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

【完結】天下無敵の公爵令嬢は、おせっかいが大好きです

ノデミチ
ファンタジー
ある女医が、天寿を全うした。 女神に頼まれ、知識のみ持って転生。公爵令嬢として生を受ける。父は王国元帥、母は元宮廷魔術師。 前世の知識と父譲りの剣技体力、母譲りの魔法魔力。権力もあって、好き勝手生きられるのに、おせっかいが大好き。幼馴染の二人を巻き込んで、突っ走る! そんな変わった公爵令嬢の物語。 アルファポリスOnly 2019/4/21 完結しました。 沢山のお気に入り、本当に感謝します。 7月より連載中に戻し、拾異伝スタートします。 2021年9月。 ファンタジー小説大賞投票御礼として外伝スタート。主要キャラから見たリスティア達を描いてます。 10月、再び完結に戻します。 御声援御愛読ありがとうございました。

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。

克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。

婚約破棄されたので森の奥でカフェを開いてスローライフ

あげは
ファンタジー
「私は、ユミエラとの婚約を破棄する!」 学院卒業記念パーティーで、婚約者である王太子アルフリードに突然婚約破棄された、ユミエラ・フォン・アマリリス公爵令嬢。 家族にも愛されていなかったユミエラは、王太子に婚約破棄されたことで利用価値がなくなったとされ家を勘当されてしまう。 しかし、ユミエラに特に気にした様子はなく、むしろ喜んでいた。 これまでの生活に嫌気が差していたユミエラは、元孤児で転生者の侍女ミシェルだけを連れ、その日のうちに家を出て人のいない森の奥に向かい、森の中でカフェを開くらしい。 「さあ、ミシェル! 念願のスローライフよ! 張り切っていきましょう!」 王都を出るとなぜか国を守護している神獣が待ち構えていた。 どうやら国を捨てユミエラについてくるらしい。 こうしてユミエラは、転生者と神獣という何とも不思議なお供を連れ、優雅なスローライフを楽しむのであった。 一方、ユミエラを追放し、神獣にも見捨てられた王国は、愚かな王太子のせいで混乱に陥るのだった――。 なろう・カクヨムにも投稿

飯屋の娘は魔法を使いたくない?

秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。 魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。 それを見ていた貴族の青年が…。 異世界転生の話です。 のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。 ※ 表紙は星影さんの作品です。 ※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。

異世界着ぐるみ転生

こまちゃも
ファンタジー
旧題:着ぐるみ転生 どこにでもいる、普通のOLだった。 会社と部屋を往復する毎日。趣味と言えば、十年以上続けているRPGオンラインゲーム。 ある日気が付くと、森の中だった。 誘拐?ちょっと待て、何この全身モフモフ! 自分の姿が、ゲームで使っていたアバター・・・二足歩行の巨大猫になっていた。 幸い、ゲームで培ったスキルや能力はそのまま。使っていたアイテムバッグも中身入り! 冒険者?そんな怖い事はしません! 目指せ、自給自足! *小説家になろう様でも掲載中です

転生先は盲目幼女でした ~前世の記憶と魔法を頼りに生き延びます~

丹辺るん
ファンタジー
前世の記憶を持つ私、フィリス。思い出したのは五歳の誕生日の前日。 一応貴族……伯爵家の三女らしい……私は、なんと生まれつき目が見えなかった。 それでも、優しいお姉さんとメイドのおかげで、寂しくはなかった。 ところが、まともに話したこともなく、私を気に掛けることもない父親と兄からは、なぜか厄介者扱い。 ある日、不幸な事故に見せかけて、私は魔物の跋扈する場所で見捨てられてしまう。 もうダメだと思ったとき、私の前に現れたのは…… これは捨てられた盲目の私が、魔法と前世の記憶を頼りに生きる物語。

処理中です...