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第六章 【二つの世界】
6-481 期待
しおりを挟む「……あ」
サヤの口から、思わず言葉が漏れた。エレーナのその言葉に対し、真っ先に反応を示したのはサヤの方だった。
エレーナの言葉をヒントに、サヤはなにか思い当たることがあったようだ。
ステイビルも、まさかすぐに思い当たることがあるだろうとは思ってもみなかった。
だからこそ、そのサヤの声に反応し、ハルナたちは期待を込めてサヤの方へ一斉に視線を送る。
その圧力にサヤは、手に持っていたカップが揺れてお茶がカップから零れそうになった。
「な……なんだよ?っていうか、ハルナアンタもわかってんだろ!?」
「え?……あ!もしかしてラファエルさん?」
ハルナは二人の創造者のやり取りの中で、傍にいてくれたラファエルのことを思い出した。
他の大精霊や大竜神たちは各世界で別々に存在していたが、ラファエルだけは二つの世界の中で自分たちと同じく唯一の存在だった。
だからこそ、本来の世界に戻って盾の創造者と対峙した時も協力してもらったのだ。
ハルナ自身は自分の意思により、世界を渡ることはできなかった。その能力は、同じ身体に存在した盾の創造者の能力によって行われていた。その際にハルナが保有する資源を利用することによって、短期間での能力の発動が可能となっていた。
しかし、ラファエルは自分の力だけで、二つの世界を行き来しており、盾の創造者が何かの力を貸しているようには見られなかった。
盾の創造者が、ハルナが保有する能力や資源を用いるときには、ハルナ自身にもそのことは伝わってきていた。
そのため、あの世界を渡る能力についてラファエルと一緒に行っていた時は、盾の創造者だけに資源が用いられていたため、をラファエルに使用していたとは考えられなかった。
「そう……ラファエルは、盾のヤツと一緒に世界を行き来していたよね?あれはアイツもその能力を持っているからじゃないの?」
「あ!確かに、そうだったね。じゃあ、ラファエルさんを……!?」
ハルナがラファエルを呼び出そうとしたその言葉の途中で、ハルナたちが座っているテーブルから離れた位置に光の塊が現れた。
『お呼びでございますか?……ハルナ様』
光が収まりその姿を見せると、ラファエルは片膝折ってハルナに向かって頭を下げる。
その動きは、既に呼び出されることを知っているかのような雰囲気を持った行動だった。
そう感じたハルナは、ラファエルがここに呼ばれた理由を知っていると判断し、余分な言葉を抜きにして問いかけた。
「あの、ラファエルさんって、自分の力であっちの世界へ渡れるんですか?」
『はい。可能と言えば可能ですが……』
「……なんだよ、その言い方は。何か条件でもあるっていうの?」
渡ることが可能と聞いたハルナは喜んだ表情を見せるが、サヤはその言い方が気に入らなかった。
そこには何か”良くない”条件があるのではないかと、そのことをラファエルに聞いた。
『サヤ様のおっしゃる通り、条件があるようです……』
ラファエルは、サヤの言葉に申し訳なさそうにそう告げた。
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