問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』

山口 犬

文字の大きさ
上 下
1,249 / 1,278
第六章 【二つの世界】

6-476 不安定な感情

しおりを挟む







「え?……サヤちゃん、何かしたっけ?」

「……ハルナ、アンタさぁ!?」

「ご、ごめん!?」


ハルナのとぼけたような態度にも惑わされず、サヤはしっかりと膝の上で手を握りしめていた。
これまでの話しの中で”このタイミングで”と意を決したサヤに反して、ハルナのふざけたような言葉がサヤをイラつかせた。
しかし、ハルナが自分の誤った態度を詫びると同時に、サヤ自身もこれから自分がお詫びする対象の人物に威圧してしまったことに対しすぐに反省する。


「いや……うん、いいんだけどさぁ……アタシも覚悟を決めて……いや、なんでもない……と、とにかく!アタシはアンタに謝りたいんだってば!?」

「う、うん!わかったよ!?」


サヤの勢いに飲まれたハルナは、謝られるのか責められるのかわからなくなりそうな状況の中で、サヤの機嫌を損ねないように、とにかく肯定する態度をとった。


「ったく……アンタはアタシのこと乱暴でガサツで自分勝手な奴だって思ってるだろ?」

「え!?い、いや……そんな……こと?」

「……」


ハルナのはっきりしない返答に、サヤは目をやや閉じてハルナにちゃんと答えるようにと無言で催促した。


「ちょっと……だけ、そう思ってたことも……あるかなぁ……って」


ハルナは恐る恐る正直に答え終ると、サヤの反応を待つ。いつ大声で怒鳴られてもいいように、ハルナはお腹に力を入れた。
しかし、その準備は全く無意味なものとなった。ほんのわずかな沈黙のあと、サヤはハルナの顔を見て深い息を吐いて感情をコントロールした。


「まぁ、いいや……別に怒ってるわけじゃないし、アンタもはっきり言ってくれて……逆に嬉しくもあるんだけどね」


サヤにそう告げられたハルナは驚いたが、また変な反応をするとサヤの言いたいことが遅れてしまうだろうと考え我慢をした。


「さっきのことだけど、今思えばあの時のアタシは自分勝手だったよ……うん。改めて思い出すとちょっと恥ずかしいね……そ、それでも今はやっと落ち着いてきたんだよ、アタシにとってはさ……で、何が言いたいかというと……さ。”あんな”ことになって申し訳ないってこと。あんなことがあって、この世界で長い間考える時間もあったから気付けたんだよね。結構遅すぎたんだけど……っていうか、遅いのはアンタもこの世界に来るのが遅かったんだからどうしようもないだろ!?」

「ちょっとサヤちゃん……怒ってんの?誤ってんの?どっちなの!?……本当にもう!?」

「――あ」


ハルナはサヤの態度に困った顔を見せる。だが不思議とその口元には笑みが浮かんでしまう。
そんなハルナの可笑しな顔につられて、サヤも思わず吹き出してしまっていた。
それがきっかけで、二人はお互いの顔を見つめ合い笑いが止まらなくなった。
笑いか、心が触れ合い感情が溢れてきたせいなのか、二人の目からは涙が流れ出ていた。
その笑い声もいつしか、泣き声へと変わっていった。

そして、二人は思いっきり笑って泣き、スッキリとしていた。今までずっと、誰にも言えずにらえてきたものを全て吐き出した。




しおりを挟む
ツギクルバナー
感想 5

あなたにおすすめの小説

出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む

家具屋ふふみに
ファンタジー
 この世界には魔法が存在する。  そして生まれ持つ適性がある属性しか使えない。  その属性は主に6つ。  火・水・風・土・雷・そして……無。    クーリアは伯爵令嬢として生まれた。  貴族は生まれながらに魔力、そして属性の適性が多いとされている。  そんな中で、クーリアは無属性の適性しかなかった。    無属性しか扱えない者は『白』と呼ばれる。  その呼び名は貴族にとって屈辱でしかない。      だからクーリアは出来損ないと呼ばれた。    そして彼女はその通りの出来損ない……ではなかった。    これは彼女の本気を引き出したい彼女の周りの人達と、絶対に本気を出したくない彼女との攻防を描いた、そんな物語。  そしてクーリアは、自身に隠された秘密を知る……そんなお話。 設定揺らぎまくりで安定しないかもしれませんが、そういうものだと納得してくださいm(_ _)m ※←このマークがある話は大体一人称。

旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】 ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

婚約破棄され逃げ出した転生令嬢は、最強の安住の地を夢見る

拓海のり
ファンタジー
 階段から落ちて死んだ私は、神様に【救急箱】を貰って異世界に転生したけれど、前世の記憶を思い出したのが婚約破棄の現場で、私が断罪される方だった。  頼みのギフト【救急箱】から出て来るのは、使うのを躊躇うような怖い物が沢山。出会う人々はみんな訳ありで兵士に追われているし、こんな世界で私は生きて行けるのだろうか。  破滅型の転生令嬢、腹黒陰謀型の年下少年、腕の立つ元冒険者の護衛騎士、ほんわり癒し系聖女、魔獣使いの半魔、暗部一族の騎士。転生令嬢と訳ありな皆さん。  ゆるゆる異世界ファンタジー、ご都合主義満載です。  タイトル色々いじっています。他サイトにも投稿しています。 完結しました。ありがとうございました。

聖女を騙った少女は、二度目の生を自由に生きる

夕立悠理
恋愛
 ある日、聖女として異世界に召喚された美香。その国は、魔物と戦っているらしく、兵士たちを励まして欲しいと頼まれた。しかし、徐々に戦況もよくなってきたところで、魔法の力をもった本物の『聖女』様が現れてしまい、美香は、聖女を騙った罪で、処刑される。  しかし、ギロチンの刃が落とされた瞬間、時間が巻き戻り、美香が召喚された時に戻り、美香は二度目の生を得る。美香は今度は魔物の元へ行き、自由に生きることにすると、かつては敵だったはずの魔王に溺愛される。  しかし、なぜか、美香を見捨てたはずの護衛も執着してきて――。 ※小説家になろう様にも投稿しています ※感想をいただけると、とても嬉しいです ※著作権は放棄してません

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

【完結】内緒で死ぬことにした  〜いつかは思い出してくださいわたしがここにいた事を〜

たろ
恋愛
手術をしなければ助からないと言われました。 でもわたしは利用価値のない人間。 手術代など出してもらえるわけもなく……死ぬまで努力し続ければ、いつかわたしのことを、わたしの存在を思い出してくれるでしょうか? 少しでいいから誰かに愛されてみたい、死ぬまでに一度でいいから必要とされてみたい。 生きることを諦めた女の子の話です ★異世界のゆるい設定です

飯屋の娘は魔法を使いたくない?

秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。 魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。 それを見ていた貴族の青年が…。 異世界転生の話です。 のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。 ※ 表紙は星影さんの作品です。 ※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。

【完結】白い結婚で生まれた私は王族にはなりません〜光の精霊王と予言の王女〜

白崎りか
ファンタジー
「悪女オリヴィア! 白い結婚を神官が証明した。婚姻は無効だ! 私は愛するフローラを王妃にする!」  即位したばかりの国王が、宣言した。  真実の愛で結ばれた王とその恋人は、永遠の愛を誓いあう。  だが、そこには大きな秘密があった。  王に命じられた神官は、白い結婚を偽証していた。  この時、悪女オリヴィアは娘を身ごもっていたのだ。  そして、光の精霊王の契約者となる予言の王女を産むことになる。 第一部 貴族学園編  私の名前はレティシア。 政略結婚した王と元王妃の間にできた娘なのだけど、私の存在は、生まれる前に消された。  だから、いとこの双子の姉ってことになってる。  この世界の貴族は、5歳になったら貴族学園に通わないといけない。私と弟は、そこで、契約獣を得るためのハードな訓練をしている。  私の異母弟にも会った。彼は私に、「目玉をよこせ」なんて言う、わがままな王子だった。 第二部 魔法学校編  失ってしまったかけがえのない人。  復讐のために精霊王と契約する。  魔法学校で再会した貴族学園時代の同級生。  毒薬を送った犯人を捜すために、パーティに出席する。  修行を続け、勇者の遺産を手にいれる。 前半は、ほのぼのゆっくり進みます。 後半は、どろどろさくさくです。 小説家になろう様にも投稿してます。

処理中です...