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第六章 【二つの世界】
6-459 決戦31
しおりを挟む「……え?あれ?」
ハルナは、姿を消した盾の創造者の姿を目だけで追った。
サヤは緊張を高めつつ、手にした剣をもう一度握り直した。周囲に魔素を散布し、この一帯の魔素の濃度を高める。
そうすることにより、周囲の物体の動きを感知でき、姿を消した状態でも物体が残っていれば検知できる筈だった。
その気配を探るも、サヤの脳にはそれを知らせる刺激は届いてこなかった。
「……!」
更に警戒を続けていると、探していた反応が届いた。サヤはその反応を見せた存在に、不機嫌な感情を顔と声に表しながら振り向く。
「……ちょっと、何やってんのラファエル。前もって言ってただろ?こういう場面は、アタシから声を掛けない限りじっとしていろって」
『……申し訳ありません、サヤ様。この雰囲気に耐えられなくなってしまいまして』
「ったく、しょうがないね。……まぁ、いいか。こういう流れも、予想していたんだしねぇ」
サヤの言葉を聞き、ここまで動かないままでいたモイスとハルナも、その緊張を解いて動き出した。
その様子を見てから、ラファエルも動き始めて、サヤの側に近づいていく。サヤも周囲に撒いていた魔素を吸収し、張り詰めていた周囲の緊張感も和らいでいった。
モイスはその場に留まり周囲の警戒を続けるが、ハルナとラファエルはサヤの近くへと足を進めていく。
『これから、どのようにされるのですか?あの者の姿が見えないようですし……サヤ様は何か心当たりが?』
「あぁ……そうだね。ないわけじゃないけど……さて、どうしてやろうかねぇ」
そう言いながらサヤは、剣を手にしたまま腕を組んだ。そして、ゆっくりと考え込むようにして歩き始めてラファエルにその背中を向ける。
ラファエルもサヤとの距離を詰めるべく、その背中に近付いていく。
――ドス
『かっ――は!!』
サヤの脇から剣が突き出され、重い音と共にラファエルの脇腹に突き刺さっている。
そして、その突き刺した剣はハルナが握っており、ラファエルからはその姿が見えない状態で刺されていた。
『な……なぜ』
息苦しそうにするラファエルは、どうして自分が刺されているのかわからずにいた。
サヤが身体をひねらせ、ラファエルに向き直す。
刺したハルナの姿は、目をつぶったままサヤの身体の近くまで両手で剣をしつけているのが見えた。
「何でって?……わかんないの?アンタはようやく罠にかかってくれたんだよ」
そう言いながら、目をつぶっているハルナの肩を叩き、必死につかんでいる剣の柄を離させた。
サヤはその後を引き継ぎ、ラファエルが逃げ出さないようにしっかりと剣を握りしめ、さらに剣を押し込めた。
そうすると剣の先は、ラファエルの反対側の脇を突き委抜けていき、その傷からは元素が漏れていっているのが見える。
『わ……な?何故私のこと……』
「フン。もういいよ、出ておいで――ラファエル」
『――!?』
サヤがそう呼びかけると、もう一体のラファエルがモイスの近くに姿をみせた。
だが、その姿をみてもハルナですら驚きの表情を見せていない。
それが、この状況が全て”仕組まれたもの”であることが理解できていた。
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