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第六章 【二つの世界】
6-457 決戦29
しおりを挟む盾の創造者は、この人間をどう扱うか迷っていた。
このままにしておくか、そうでないか……を。
先ほど見た記憶はこの世界の中にはないものを持っており、それらがこの世界に与える影響についても興味がある。
しかし、それが毒にもなるような事も当然ながら考えられた。
そして、盾の創造者はあることを思いついた。
”この者を誰かに監視させる”と。
この頃すでに、盾の創造者の中では、この世界を崩壊させたいという思いもあった。
自分がその行動を取れば、当然相手はそれを阻止しに来るだろう。自分が気に入っているこの世界を、全て無にしようとしているのだから。
(だったら、その考えをこの人間に……)
盾の創造者は、自分が浮かべた最善の案をすぐに実行した。
最後に見た爆発は、きっとこの者が行った行動のはず。それだけの力と凶暴な性格からして、監視させるものはきっと信じ込むだろうと確信した。
そうして盾の創造者は、先程の爆発の凶暴さを元に記憶を改竄し、この人間が全ての世界を破壊するというか思想を持っているかのようにした。
準備が整うと、盾の創造者はこの周囲の元素の濃度を一気に高めていく。
その気配を感じた動物たちが、一斉に騒ぎ始めてこの一帯から逃げ出していく。
盾の創造者は気配と姿を消し、この場を見守っている。
すると、異変に気付いたラファエルが現れ、上空から辺りを見回す。そこに一体の人間の姿が見えた。
近寄ると、既にその人間には多くの損傷がみられ、既に虫の息の状態だった。
だが、この世界にはない服装などを見て、この者の存在について疑問を持ち始めた。
その記憶を覗くことにした……
『やっぱり……あなたはあの時見捨てておけば……』
『え?』
その言葉に驚いたのは、ラファエルだった。
ラファエル自身も、記憶を覗いただけでそれ以降何もしていなかった。
「ん?ってことは、アンタが最初にアタシを見つけたの?」
そのサヤの質問に対して頷いて見せて、発見からラファエルに発見させるまでの経緯を語った。
「ということは、ラファエルさんがサヤちゃんを助けてくれたってことですね。ありがとうございます!」
『いいえ、サヤ様をお助けしたのは……私ではありません』
「え?でも……さっき盾の人は、サヤちゃんを助けなかったみたいだし……」
『ええ。ですが、私もサヤ様の記憶を覗いた後に、急いで対策を立てるために戻りましたから……』
「……それじゃあ一体、誰がアタシを?」
『わかりません、少なくとも私ではございませんので』
思い返せば、確かに傷を癒してもらったというよりは、ボロボロの状態で目覚めていたのは確かだった。
それに、最初の記憶はあの洞窟の中での出来事で、どうしてあの場所に居たのかすらわからなかった。
「フーン……まぁいいか。じゃあ、とにかくアタシの頭の中勝手にいじってくれちゃって、何の手当もせずに放置してたアンタでよかったよ。これで手加減なく、アンタを消せるってもんさ」
「……いや、手加減してなかったと思うけど……ご、ゴメン!?」
ハルナは、余計なことを口にしてサヤに睨まれて一歩後ろに下がった。
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