1,174 / 1,278
第六章 【二つの世界】
6-401 崇拝の対象
しおりを挟む「それじゃあ、行こうか?」
「うん、元素?資源?……も溜まったみたいだし。アーテリアさん、ステイビルさん。お世話になりました」
「サヤ様、どうかお気をつけてください。ハルナ様”も”」
アーテリアに対して投げかけた言葉に対し、まず返した相手はサヤへの配慮だった。ハルナに対する配慮はオマケ程度にしか感じられず、向こうの世界では味方だったアーテリアからの無関心さに、ハルナは少し寂しく感じてていた。
「あぁ……もしかしたら、またこっちに戻るかもしれないしね、それまでの間頼んだよ?」
「はい、お任せください……無事にお戻りになれるように、大精霊の神々にお祈りいたしております」
「大精霊って……あのラファエルたちか?」
「……サヤちゃん?」
祈る先があの大精霊ということに対し、何の効果も得られない気がしたサヤの顔は少し曇った表情をつくる。そのことに対し、ハルナがサヤに注意をする。この国の大勢多数の人間……亜人を含めた存在が、ラファエルたち大精霊を信じて崇めている。
確かに今は、同等もしくはそれ以上の能力を持ったサヤではあるが、多くの者が信じる存在を軽々しく扱うことは良くないことと、ハルナはサヤに注意をした。
「ん?あぁ、悪かったね。アンタたちにとっては、信仰の対象だもんね。馬鹿にしたわけじゃないんだよ」
『……となれば、サヤ様”ご自身”が崇拝の対象としてその地位にお着きになられてはいかがでしょうか?』
その声と同時に、ハルナとサヤの後方に光の塊が現れた。
「――ラファエルさん!」
『遅くなりました……準備が整いましたので、お迎えに参りました』
「……いやぁ、アンタの仕事とるのも悪いしさ。アタシも面倒なことは嫌なんだよね?だから、その辺はアンタに任せるわ」
『フフフ……ありがとうございます。わたくしの”仕事”を奪われなくてホッといたしましたわ!』
「ふん!小賢しいこと言うようになったね、アンタも」
そう口にするサヤも、不快な表情は見せていない。むしろ、そういう口をきいてくれる方が嬉しそうにしているように見える。
とはいえ、ステイビルが同じことを言った場合には、サヤはきっと不快な顔をみせるのだろう。それは、サヤを超える思考の持ち主か、同等の能力を持った者でなければサヤは認めないはずだろうと、その様子を見ていたアーテリアは判断していた。
実際に、今日のためにサヤはラファエルと何度か打ち合わせをしていた。
それは、ラファエルはどの世界も共通の存在だったため、どのようにして世界を渡っているのかを調べていた。
これまでハルナは、盾の創造者の能力を使い世界をわたっていたが、盾の創造者の力を借りれなくなったためラファエルの方法を参考にしようと打ち合わせを行っていた。
最終的には、ラファエルの力をハルナの精霊使いの能力から同期することができたため、世界を渡ることが可能となった。
『準備ができていらっしゃれば……始めますか?』
「あぁ、頼むよ」
「ラファエルさん、お願いします!いってきます!」
「お気をつけて、ご無事を」
ステイビルの声を聞き、ラファエルは転送を開始する。
しかし、その能力を実行するとその先は真っ暗な闇の中だった。
0
お気に入りに追加
375
あなたにおすすめの小説
旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】
ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む
家具屋ふふみに
ファンタジー
この世界には魔法が存在する。
そして生まれ持つ適性がある属性しか使えない。
その属性は主に6つ。
火・水・風・土・雷・そして……無。
クーリアは伯爵令嬢として生まれた。
貴族は生まれながらに魔力、そして属性の適性が多いとされている。
そんな中で、クーリアは無属性の適性しかなかった。
無属性しか扱えない者は『白』と呼ばれる。
その呼び名は貴族にとって屈辱でしかない。
だからクーリアは出来損ないと呼ばれた。
そして彼女はその通りの出来損ない……ではなかった。
これは彼女の本気を引き出したい彼女の周りの人達と、絶対に本気を出したくない彼女との攻防を描いた、そんな物語。
そしてクーリアは、自身に隠された秘密を知る……そんなお話。
設定揺らぎまくりで安定しないかもしれませんが、そういうものだと納得してくださいm(_ _)m
※←このマークがある話は大体一人称。

転生したら神だった。どうすんの?
埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの?
人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。

夫婦で異世界に召喚されました。夫とすぐに離婚して、私は人生をやり直します
もぐすけ
ファンタジー
私はサトウエリカ。中学生の息子を持つアラフォーママだ。
子育てがひと段落ついて、結婚生活に嫌気がさしていたところ、夫婦揃って異世界に召喚されてしまった。
私はすぐに夫と離婚し、異世界で第二の人生を楽しむことにした。

婚約破棄され逃げ出した転生令嬢は、最強の安住の地を夢見る
拓海のり
ファンタジー
階段から落ちて死んだ私は、神様に【救急箱】を貰って異世界に転生したけれど、前世の記憶を思い出したのが婚約破棄の現場で、私が断罪される方だった。
頼みのギフト【救急箱】から出て来るのは、使うのを躊躇うような怖い物が沢山。出会う人々はみんな訳ありで兵士に追われているし、こんな世界で私は生きて行けるのだろうか。
破滅型の転生令嬢、腹黒陰謀型の年下少年、腕の立つ元冒険者の護衛騎士、ほんわり癒し系聖女、魔獣使いの半魔、暗部一族の騎士。転生令嬢と訳ありな皆さん。
ゆるゆる異世界ファンタジー、ご都合主義満載です。
タイトル色々いじっています。他サイトにも投稿しています。
完結しました。ありがとうございました。
聖女を騙った少女は、二度目の生を自由に生きる
夕立悠理
恋愛
ある日、聖女として異世界に召喚された美香。その国は、魔物と戦っているらしく、兵士たちを励まして欲しいと頼まれた。しかし、徐々に戦況もよくなってきたところで、魔法の力をもった本物の『聖女』様が現れてしまい、美香は、聖女を騙った罪で、処刑される。
しかし、ギロチンの刃が落とされた瞬間、時間が巻き戻り、美香が召喚された時に戻り、美香は二度目の生を得る。美香は今度は魔物の元へ行き、自由に生きることにすると、かつては敵だったはずの魔王に溺愛される。
しかし、なぜか、美香を見捨てたはずの護衛も執着してきて――。
※小説家になろう様にも投稿しています
※感想をいただけると、とても嬉しいです
※著作権は放棄してません

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫
むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる