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第六章 【二つの世界】
6-391 後退
しおりを挟む「悪いね。待ってもらっちゃって……さ」
サヤは、ヴァスティーユを助けようとした時間……ほんの数分間の間だが、盾の創造者が何の行動も起こさずに、この状況を見守っていたことが不思議で仕方がなかった。
だからこそ、ヴァスティーユの身の安全を確保した後に、真っ先にその真意を探るべく、サヤは再び対峙する敵にその考えを聞いた。
『……いいえ、何の問題もないわ?それに、アナタが苦しむ顔見たかったのだけれど、想像していたよりも悲しまなくて残念だったわ』
「ったく、お前は本当に趣味が悪いな。まぁ、お前の望む通りにならなかったのは、良かったのかもな」
『あなたも結構な……性格っていうのかしら?良くないんじゃないかしらね?』
「あんたも中々な性格の悪さだと思うけど?自分の立場を利用して”わがまま”し放題だし、自分が創り出したものを勝手に消そうとしてるんだしさ。それに……」
『……それに?』
サヤの言葉は自分に対しての評価であり、ある程度の言葉でその内容に区切りがついていた。そこから先に続く言葉に、盾の創造者はどんな言葉を自分のために用意しているのかと興味深くその先をサヤに促した。
「あんたのパートナーだったヤツの意見は無視してるだろ?結局それは、あんた自身が考えたこと以外は受け入れてないってことじゃないか?それが”わがまま”じゃなきゃ何だっていうんだ?」
『……』
サヤは胸の前で組んでいた腕を解き、背中に背負っている剣を親指で指す。
「あんた”コイツ”のこと好きだったんだろ?それを無視されたから怒っているだけなんじゃないの?」
『――お、お前ごときが!わ、わ、私たちのことをっ!?』
その言葉と同時に、盾の創造者の周りには目には見えないが何らかの空気の圧力が高まっているようだった。サヤだけでなく、周囲にいるローディアたちですら、その気迫に押され気味になっていた。
しかし、サヤはその尋常ではない、創造者の怒りの気迫に後ろ脚を引き風圧に耐えてみせる。
それを見た盾の創造者は不快に感じ、さらに圧力を上げる。
「――ぐっ!?」
それでもサヤは、圧力に抗いながら盾の創造者へと歩をすすめる。さらに盾の創造者も圧力を高める。
そこから先は、お互いの意地の張り合いだった。
盾の創造者は、人という惰弱な存在がこれほどまでに創造者である自分に反抗的な態度を見せる存在に対して、絶対的な力を見せつけるために。
サヤは、とち狂った行動を取ろうとする相手に、目に物を見せてやろうとして。
「――っ!?」
サヤが盾の創造者の場所まで、あと数メートルと迫った際に圧力がさらに高まり、既にアーテリアたちは地面に這いつくばりながら、何とか飛ばされてしまわないように辺りにしがみついていた。
その状態でもアーテリアは、この状況を最後まで見守らなければならないと、辛うじて開いた目で見届けているなかで不思議なものを見た。
(相手が……後ろに引いている!?)
そこには盾の創造者が、サヤが一歩ずつ自分に近付いていることに恐怖を感じたのか、サヤが近づくたびに盾の創造者の足が後方に下がっていっていた。
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