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第六章 【二つの世界】
6-388 割れる風船
しおりを挟む軽い動作で投げた塊は、光のはずだが重さがあるようにゆるい放物線を描いてアーテリアたちの近くへと落下していく。
「――って!!!」
アーテリアの口からは、言葉になっているようないないような音がした。それと同時に一人の教員はローディア、もう一人の教員は残りの二人を、アーテリアはヴァスティーユとヴェスティーユの手を引き落下地点からそれぞれを強引に引き離した。
アーテリアは、目の前の人間らしき存在が通常みない攻撃と思われる放ったモノに危険を感じていた。
だからこそ、ゆっくりな軌道ではあったがそれに触れることでかわすことを選択せずに、逃げることを選択した。
そして、その選択は間違っていなかったと証明される。
その様子を見ていたサヤは、とりあえず今の状況に安堵する。
盾の創造者が放ったモノの正体はわからないが、きっと危険なものに違いなかった。
それに盾の創造者とサヤの直線上には、ヴァスティーユ達が間にいたため手を出すことができなかった。
そして……
――ばしゃ
盾の創造者が放った光の塊は、地面に落下すると水風船が割れた液体のように光は弾けた。
その結果を見て、アーテリアの判断は正しかったと判断する。
足元に場所に生えていた草花は全て、光の液体に触れたことにより”消失”してしまっていた。
その結果を見たアーテリアたちは、背筋に冷たい汗が滴る。
もしもアレを避けずに受けていたらならば、自分たちが同じ結果になってしまっていたのではないかという恐怖が身体を支配してしまっていた。
(……マズイ!?)
サヤはそう思うと、アーテリアたちが避けたことにより開けた盾の創造者への射線が開けていた。
そこにサヤは、砲丸のような大きさの黒い瘴気を数十個ほど浮かべ、それを盾の創造者へと撃ち放った。
その攻撃に対し、盾の創造者は避けることも防ぐ動作もない。それは、今までに何度か繰り返された行為で、この行動に対しては自身に対して何の被害もないことは判っていた。
十数秒間のサヤの――なんの意味のない――攻撃は、盾の創造者に対して行われた。
その行為は盾の創造者の視界を塞いでしまうだけで、瘴気は盾の創造者に触れることはなくその手前で次々に魔素へと還っていった。
しかし、サヤにとっては盾の創造者の視界を塞ぐだけでよかった。
サヤが大量に放った最初の数発が盾の創造者へ被弾し、黒い塗料が塗られたように目の前を塞いでいく。
その様子を見て、アーテリアたちはその場から離れるための手助けをしていると理解し、即座にサヤが望む行動をとっていた。
『無駄なことを何度も繰り返さないで欲しいわね?まぁ、私にとってはどうでもいいことですけど……あら?』
自分の周りを覆っていた鬱陶しい攻撃が止んで、辺りを見回すとそれぞれの存在の配置状況が変わっていた。先ほどのサヤの攻撃が、自分の目をくらますことが目的だったということをここで理解をした。それでも、その状況下において盾の創造者の精神状態は安定をしていた。
『フフフ……まぁ、いいでしょう。結局私のやることは変わらないのだから』
そう口にすると、盾の創造者のその掌の上には再び光の塊が浮かび上がる。
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