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第六章 【二つの世界】
6-377 準備
しおりを挟む「サヤ様、これが依頼をいただきました許可証でございます」
「あぁ、ありがとう……じゃあ、これはアンタが持ってな」
「は、はい!?」
サヤは。蝋によって封がされた紙が巻かれたものをヴァスティーユに手渡した。
ヴァスティーユは、今まで見たことのない綺麗な紙と一目でわかる上品質な糸で紡がれた紐に巻かれている巻き物をてにして手が震える。
きっと、この使用されている全ての素材は、自分が王宮のメイドになるまでは一生働いても稼ぐことのできないであろう、高価なものであることは一目でわかった。
その高価なものの中身が、自分たちに関する者に使われていることを考えると、ヴァスティーユもヴェスティーユも複雑な気持ちになった。
「悪いねぇ、エレーナ……こんなことまで頼んじゃってさ」
「いいえ。サヤ様のお傍に仕える者が精霊の力を扱えた方が、その身もより安全でしょうから」
サヤの力であれば、心配することすら失礼に当たるかもしれないが、何があるかわからないため味方が多いことに越したことはない。
それに、サヤから紹介された人物であれば、なにか特別なことが起こるのではないかという、理由なき期待も込めて。
「ヴァスティーユ、ヴェスティーユ。事前に説明した通り、これから先はあなた方の実力と運次第です。それに特別な方法での施設への入所となるため、妬まれたりする可能もあります。このことは、周囲には知らせておりませんが、どこからか漏れる可能性も覚悟しておいてね」
「はい!」
「肝に銘じておきます!」
「サヤ様……それで、あれから何か問題は起きていないのでしょうか?不在の間も神々のご協力を得て周囲を探索しておりましたが、一向に何かが起きる気配はないのですが」
「ステイビル……今はアイツはこっちの世界に来ているんだ。きっとアタシたちにバレない程度にこの世界の存在を消しながら、力を蓄えているんだと思う。だから、警戒を怠るんじゃないよ?」
「はっ!それはもちろんです。ですが……」
「アンタ……自分の大切な人はいるか?」
「はい!?え……っと……それは」
もう一つの世界のステイビルは当の本人に聞かれた質問に、どのように答えていいかわからなかった。
いまここで自分の気持ちを伝えるべきなのか……しかし、これだけの人が集まっている中でそんなことを口にする勇気はステイビルにはなかった。
そのステイビルの沈黙をサヤは質問の答えと判断し、話を先へと進めていく。
「まぁ、アンタの好きな人をさらそうとしているわけじゃないから……っていうよりも、その”人”が消されてしまったらどう思う?」
「いいえ!絶対にそんなことはさせません!!この命に変えましても、守り抜きたいとおもいます!!」
「は?あんたは命かけちゃダメだろ?一国の王がそんなこと軽々しく言うもんじゃないよ!」
その正論に、ステイビルは少し自分が興奮して余裕がなかったことを反省する。
「まぁ、言いたいことは、状況を軽く見てないでその人のことを守るっていうならその気持ちで警戒を続けなよってこと」
「……は。もうしわけありません」
ステイビルは、サヤに諭されていろんな恥ずかしさから背中の汗が多量ににじみ出ていた。
そして、サヤたちは自分のメイドと共にラヴィーネへ向かって出発する準備を始めた。
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