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第六章 【二つの世界】
6-355 サヤとハルナと7
しおりを挟む『世界の摂理に反するだと?……私にはそうは思えない。きっとハルナとサヤなどのことを言っているのだと思うが、その二人が来たことによって大きな問題が生じていたとは考えていない。それよりも、我々がその問題を引き起こしていたようにも思えるのだが』
『はぁ……アナタは本当に何も”見えて”いないのですね?だからこそ、私がしっかりしていないといけないんですけど……その苦労も少しはわかっていただきたいですわね?』
『見えていない……?ならば、何が見えていないのか教えてはくれないか?』
その言葉に、話しかけた存在は笑みを浮かべそうになった。
だが、ここでその感情を出すべき場面ではないと、眉間にしわを作りながら感情を抑制した。
『……どうして、私があなたに教えなければならないのですか?それこそ、私たちが離れていた理由をお忘れですか?』
『……』
盾の創造者からの言葉に、遠い昔のことへと意識を移動させていく。
意識も共有しているサヤは、その記憶も同じように共有され見えていた。
―――その記憶は、サヤがこの世界へ来るずっと以前のこと
既にこの世界は創られており、生き物たちも存在し終えた後。
二人の創造者は、見晴らしの良い高い山頂から、自分たちが創り出した世界を満足そうに見渡していた。
「これで……ひと段落ですかね?」
「あぁ……そうだな」
「それで、これからどうするおつもりなの?」
「あぁ……そうだな」
「ねぇ……ちゃんと聞いてるの?」
「す、すまない。この景色に見惚れてしまっていたようだ」
「……そう?で、これからどうするのって聞いているんですけども?」
今度は正常に言葉が届いたようだったが、この場にいるもう一人の存在から言葉が返ってくることはなさそうだった。その意識は未だに、自分の言葉以外のものに興味があるようだ。そこでそのことを少し不快に思ったもう一つの存在は、まだ言葉が返ってこない悔しさから嫌味を込めて確認する。
「そんなにいいの?……自分が創ったこの世界が?」
そこで初めて、こちらの方に意識が向いた気がした。
そして、こちらから求めた答えが初めて返ってきた。
「どうだろうな……だが、この世界。自分が創ったものとは思えない程美しい……いや、完成度が高い」
「あら、自画自賛?そんなにご自分が創ったこの世界が好きなの?」
「そういうことではないのだが……」
「……なら、どういうこと?」
少し考え込むようなやや長めの時間が過ぎ、今自分が感じているこの世界に対しての考えを語った。
「既に”出来上がっている”とは思えないか?この世界が……」
「――?それはそうでしょ?だって、私たちが創ったんだし……」
「違う……そういうことではない。」
的を得ない回答に対しイライラし、少し力の入った感情で最後にもう一度だけ問いかけた。
「なら、一体どういうことなの!?」
「すまない……うまく言えないのだが……この世界が自分が創ったようには思えないんだ」
「はぁ……ますます何が言いたいのかわからないわ?だって私たちは、この世界で最上位に位置する存在でしょ?何を疑問に思うことがあるの?」
「なら、教えてほしい……どうして、我々はこういう力を持って生まれてきたのか?この世界を創ったのが我々なら、その我々を創ったものは……一体誰なのだ?そもそも、我々は一体……」
「そんなのわかるはずがないじゃない?大体、それを知ったからって何か変わるの?」
「……」
世界を創り出した存在には、その質問に返すべき言葉が見つからなかった。
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