1,093 / 1,278
第六章 【二つの世界】
6-320 ハルナがいなくなった日13
しおりを挟む「私たちが手伝う……」
「そう、アンタ達もハルナをなんとかしたいと考えてんじゃないの?だったらさ、ここは協力しておく方がアンタ達もいいと思うけどね」
ステイビルは、サヤからの提案にどのような意図が隠されているのかを思考する。
だが、ハルナという大きな力が今はない以上、サヤからの提案が最善なようにも思えてしまう。
大精霊という存在もあるが、大きなる存在に対して何かできることがあるかといえば、先ほどの話からしてもできることは少ないだろうと判断する。
そんなステイビルにサヤは、逃げ場がないと悟っているかのようにもう一つ提案をしてみせる。
「それとも他に何かいい手があるなら、アタシにもそれを教えてよ。それならアタシがアンタ達の命令に従ってもいいよ……どうする?」
「……」
こうして、ステイビル達はサヤとハルナを救出するために協力をすることが決まった。
「ラファエル達はどうなの?何か知ってることはないの?」
この場にはいないラファエルたちが何か知っている情報はないかサヤは尋ねる。
その言葉を受け、エレーナは奥の部屋へと下がっていく。
そして、数分経ち再びこの部屋に戻ってくる……その後ろには、人の形をした水の大精霊がエレーナの後ろについてくる。
「ガブリエル様……」
『あぁ。挨拶はしなくてもいいよ、ステイビル。今どんな状況かは、なんとなくだけどわかってるからね』
この場に現れたガブリエルの姿をみて、ステイビルは片膝を付いてすぐに頭を下げた。
ガブリエルはその姿を見て、今はそういう時ではないと判断しステイビルに立ち上がるように告げる。
そう告げられたステイビルはその場に立ち上がると、その横を通り抜けエレーナの前に立ちサヤと対峙しする。そして、もう一度振り返りエレーナたちに向かって上半身をやや振り返り半身の姿勢となる。
『これより、言葉遣いを普通に戻させていただきます。これまではラファエル様に命令によって、あのような態度と言葉遣いでせっしておりましたが……もう今までの流れを知っているステイビルたちには必要ないでしょう』
そうつげて、もう一度サヤに対して正面を向きその手を身体の前に合わせて重ねる姿勢をとる。
『初めまして……この世界を創造された剣の創造者様。わたくしはラファエルより生み出された、ガブリエルと申します』
「あぁ……アタシは知ってるけど。アンタ、確かハルナがいた町にヴェスティーユとやり合った敵だよね?なんでそんな挨拶するの?」
『姿はあなたの姿ですが、その中にいらっしゃる存在に対して行った挨拶です。あなたが依り代のため、そのように見えてもおかしくはないかと』
「あぁ、そう?なんか色々とわかってるみたいね……なら、話は早いか?それじゃぁ……」
サヤがその立場を利用し、ガブリエルに対して命令をしようとした。
だが、それを察していたガブリエルは、サヤの言葉を遮るように告げた。
『……もう少しお待ち下さい、既にラファエル様には声をお掛けしておりますので』
「へぇ……あぁ、そう?それじゃあ、なるべく早くね」
サヤとガブリエルが言葉を交わしてから十数秒した後、この場所に一つの大きな存在が突然姿を見せようとした。
光の粒子が集まりそこに人の形が現れ、風とは違う空気の波がステイビルたちに吹きつけた。
0
お気に入りに追加
375
あなたにおすすめの小説
旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】
ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む
家具屋ふふみに
ファンタジー
この世界には魔法が存在する。
そして生まれ持つ適性がある属性しか使えない。
その属性は主に6つ。
火・水・風・土・雷・そして……無。
クーリアは伯爵令嬢として生まれた。
貴族は生まれながらに魔力、そして属性の適性が多いとされている。
そんな中で、クーリアは無属性の適性しかなかった。
無属性しか扱えない者は『白』と呼ばれる。
その呼び名は貴族にとって屈辱でしかない。
だからクーリアは出来損ないと呼ばれた。
そして彼女はその通りの出来損ない……ではなかった。
これは彼女の本気を引き出したい彼女の周りの人達と、絶対に本気を出したくない彼女との攻防を描いた、そんな物語。
そしてクーリアは、自身に隠された秘密を知る……そんなお話。
設定揺らぎまくりで安定しないかもしれませんが、そういうものだと納得してくださいm(_ _)m
※←このマークがある話は大体一人称。

『悪役』のイメージが違うことで起きた悲しい事故
ラララキヲ
ファンタジー
ある男爵が手を出していたメイドが密かに娘を産んでいた。それを知った男爵は平民として生きていた娘を探し出して養子とした。
娘の名前はルーニー。
とても可愛い外見をしていた。
彼女は人を惹き付ける特別な外見をしていたが、特別なのはそれだけではなかった。
彼女は前世の記憶を持っていたのだ。
そして彼女はこの世界が前世で遊んだ乙女ゲームが舞台なのだと気付く。
格好良い攻略対象たちに意地悪な悪役令嬢。
しかしその悪役令嬢がどうもおかしい。何もしてこないどころか性格さえも設定と違うようだ。
乙女ゲームのヒロインであるルーニーは腹を立てた。
“悪役令嬢が悪役をちゃんとしないからゲームのストーリーが進まないじゃない!”と。
怒ったルーニーは悪役令嬢を責める。
そして物語は動き出した…………──
※!!※細かい描写などはありませんが女性が酷い目に遭った展開となるので嫌な方はお気をつけ下さい。
※!!※『子供が絵本のシンデレラ読んでと頼んだらヤバイ方のシンデレラを読まれた』みたいな話です。
◇テンプレ乙女ゲームの世界。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるかも。
◇なろうにも上げる予定です。
聖女を騙った少女は、二度目の生を自由に生きる
夕立悠理
恋愛
ある日、聖女として異世界に召喚された美香。その国は、魔物と戦っているらしく、兵士たちを励まして欲しいと頼まれた。しかし、徐々に戦況もよくなってきたところで、魔法の力をもった本物の『聖女』様が現れてしまい、美香は、聖女を騙った罪で、処刑される。
しかし、ギロチンの刃が落とされた瞬間、時間が巻き戻り、美香が召喚された時に戻り、美香は二度目の生を得る。美香は今度は魔物の元へ行き、自由に生きることにすると、かつては敵だったはずの魔王に溺愛される。
しかし、なぜか、美香を見捨てたはずの護衛も執着してきて――。
※小説家になろう様にも投稿しています
※感想をいただけると、とても嬉しいです
※著作権は放棄してません

【完結】内緒で死ぬことにした 〜いつかは思い出してくださいわたしがここにいた事を〜
たろ
恋愛
手術をしなければ助からないと言われました。
でもわたしは利用価値のない人間。
手術代など出してもらえるわけもなく……死ぬまで努力し続ければ、いつかわたしのことを、わたしの存在を思い出してくれるでしょうか?
少しでいいから誰かに愛されてみたい、死ぬまでに一度でいいから必要とされてみたい。
生きることを諦めた女の子の話です
★異世界のゆるい設定です
飯屋の娘は魔法を使いたくない?
秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。
魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。
それを見ていた貴族の青年が…。
異世界転生の話です。
のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。
※ 表紙は星影さんの作品です。
※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。

【完結】契約結婚は円満に終了しました ~勘違い令嬢はお花屋さんを始めたい~
九條葉月
ファンタジー
【ファンタジー1位獲得!】
【HOTランキング1位獲得!】
とある公爵との契約結婚を無事に終えたシャーロットは、夢だったお花屋さんを始めるための準備に取りかかる。
花を包むビニールがなければ似たような素材を求めてダンジョンに潜り、吸水スポンジ代わりにスライムを捕まえたり……。そうして準備を進めているのに、なぜか店の実態はお花屋さんからかけ離れていって――?

婚約破棄され逃げ出した転生令嬢は、最強の安住の地を夢見る
拓海のり
ファンタジー
階段から落ちて死んだ私は、神様に【救急箱】を貰って異世界に転生したけれど、前世の記憶を思い出したのが婚約破棄の現場で、私が断罪される方だった。
頼みのギフト【救急箱】から出て来るのは、使うのを躊躇うような怖い物が沢山。出会う人々はみんな訳ありで兵士に追われているし、こんな世界で私は生きて行けるのだろうか。
破滅型の転生令嬢、腹黒陰謀型の年下少年、腕の立つ元冒険者の護衛騎士、ほんわり癒し系聖女、魔獣使いの半魔、暗部一族の騎士。転生令嬢と訳ありな皆さん。
ゆるゆる異世界ファンタジー、ご都合主義満載です。
タイトル色々いじっています。他サイトにも投稿しています。
完結しました。ありがとうございました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる