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第六章 【二つの世界】
6-319 ハルナがいなくなった日12
しおりを挟む「……あぁ、そうだよ?なんで、そんな当たり前のこと聞くんだ?」
サヤはステイビルの質問に対して、何も考える素振りすら見せずに即答する。
しかも、この世界を崩壊させてるという手段を用いることに、何も感じるものがない様子にステイビルの警戒度は再び最高の域まで上昇する。
しかし、その気配を無かったのように扱うサヤに、ステイビルの決意の熱は静まる。
先ほどから何度も、こちらの常識を外れた……いや。自分が望むものとは反対側の回答をする二つの存在に、期待をかけること自体が間違っていた。
「いえ、念のためと申しますか……そのお考えについて、考えの至らない愚かな私に教えていただきたいのですが……」
ステイビルのいやらしいその言い回しに対し、サヤは少しだけ片方の眉が不愉快な反応を見せる。
それでもすぐにはステイビルに言葉を掛けずに、その先の内容を把握してからにしようと感情を抑え込んだ。
ステイビルもサヤの反応を見て、”この先を続けて良い””と判断をして、途切れた言葉の先を繋げていく。
「サヤ殿の希望を叶えるためには、世界が崩壊するほどの力を要すると理解をしています。ですが、そのの事象を誘発するはずのオスロガルムがいなくなった後、その願いをかなえるにはどのようなことをお考えなのでしょうか?」
ステイビルは、その答えを聞くことを恐れていた。
どのような手段であれ、この世界が崩壊してしまうほどの力を放出させなければならないとなると、碌な方法ではないことは、その辺りに詳しくない者でも容易に推測できるだろう。
だがハルナが盾の創造者に乗っ取られていない今、それを止める手段はほとんど無いに等しいだろう。
それに、盾の創造者自身がこの世界を崩壊させようとしていることも、一番初めに聞いている。
ステイビルたち……この世界に住まう者たちは、――それぞれの理由はどうであれ――この事を行動に起こそうとしている者たちを止めるほどの力や説得する材料も持ち合わせていない。……そう。自分たちには、絶望の未来しか残されていないのだと悟っている。
それでも、その未来に対して僅かにでも生き延びる道があるのであれば、ステイビルは何とかそのわずかな可能性にしがみつきたいと考えていた。
だからこそ、サヤに対してのこの質問だった。
「ん?だって、盾の創造者もこの世界を崩壊させようとしてるんだろ?だったらそれを横取りすればいいんじゃないの?」
「……」
ステイビルはその答えに、わずかながら安堵した感情が沸き上がってくる。
実際にサヤ自身には、世界を崩壊させる術は持ち合わせていないということが判っただけでもこの命を懸けてサヤに質問をした甲斐があった。
「では、まずはこれからどのように行動されるのですか?」
「……そのために、いま来たんじゃないか。アンタ達にもアイツを探すのを手伝ってほしいんだよ」
そう言ってサヤは、ステイビルたちに拒否権のない提案を付きつけた。
力を貸したとしても、その結果が同じに見える未来への行動を。
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