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第六章 【二つの世界】
6-307 あの日の出来事6
しおりを挟むハルナは、今すぐこの盾の創造者と話をしたいという気持ちになる。
いまサヤが並べていった、これまでの一連の騒動の首謀者が盾の創造者であるかどうかということを確認するために。
(あの……)
ハルナは頭の中で、盾の創造者へ呼びかける。だが、すぐにはその返事は返ってこない。
これまでは、ハルナの心中でさえも察し、そのこと対して口を出すことがあった。
しかしいまは、サヤと剣の創造者の話しの途中からは、それらの言葉に何の反応も示すことがなかった。
コンタクトを取ろうとするハルナの姿に気付いているのか、サヤたちは何もせずにその姿をただ見守っているだけだった。
(いま、サヤちゃんたちが言ったことは……本当ですか?)
ハルナは再び、頭の中で盾の創造者へと話しかける。
どんな答えが返ってくるかはわからないが、その内容を安易に信用するつもりはない。
反対に、ハルナが望まない結果の答えが返ってきた場合は、どのように対応すべきかの方が重要と考えた。
(……)
だが、その呼びかけに対して何の返答も見せない。
ハルナは何度か、返答の無い盾の創造者に対して声をかけていく。
次の瞬間、サヤは背中の剣を抜きハルナの胸元に向かって剣先を横に向かて切り払った。
ハルナは動くこともなく、その攻撃をただ黙って受けていた。
「――ハルナ!!」
サヤがハルナに向かって、大きな声で叫ぶ。
(ど、どうしたの!?いきなり……)
ハルナの耳には、確かにサヤのその声は届いていた……だが、その攻撃や呼びかけに対する反応は、自分の身体であっても見せることはできなくなってしまっていた。それはまるで”どこかの誰か”に、身体だけを乗っ取られてしまい、自分の意志によって自由に身体を自由に動かすことができなくなってしまっていた。
「……遅かったか」
サヤから見たハルナの後ろには、背負っていた盾が地面に落ちている。
動かなかったハルナの身体は、この日のために練習をした剣の軌道が正確に描かれ、服を着ることなく盾をつないでいた革のベルトだけを切断させることには成功していた。
しかし、この時のために準備してきたことも、結果的に間に合わなかったのだとサヤは悟った。
そして、ハルナの容姿でハルナの声ではあるが、それは決してハルナではない誰かの言葉が聞こえてくる。
「ふふふ……ようやく手にいれました。少々強引でしたが、問題はないでしょう」
「……つながったのか?」
「えぇ……完全にとはいきませんが、ハルナの身体を制御することに成功しました」
盾の創造者は、ハルナの身体を手に入れたことを満足そうに語る。
サヤはその満足そうな表情が不機嫌になり、瘴気の弾をハルナの身体へと撃ち放つ。
しかし、その行動は先ほどと同じように元素の力によって弾かれていく。
この行動からも、ハルナの身体と能力を使いこなせているという結果によるものだった。
「返せ!!今すぐハルナの身体を返せ!!!」
そう言いつつサヤは、ハルナが背負っている盾をどんな手段を用いようとしてもその身から切り離そうとした。
だが、サヤが放った攻撃はハルナに届くことはなかった。
ハルナの身体は宙に浮き、サヤの姿を見降ろしていた。
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