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第六章 【二つの世界】

6-294 放置

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「アンタは覚えてる?アタシと風香で二人でお使いに行った日のこと……」




「え?……あ、うん。覚えてるよ……確か私が習い事で、いなかった時だよね?」



そのハルナの言葉に頷いたサヤは、その先の話を始めた。





あの日、ハルナは塾によって家を不在にしていた。
そこにサヤが母親と共に、ハルナの家に訪れていた。

ハルナがいないと知ったサヤは、既に歩きだすことができた風香の面倒をハルナの母親から頼まれてみることになった。
事前にサヤが、妹か弟が欲しいと自分の母親にねだっていると聞き、ハルナの母親が気を利かせてくれていたという。
サヤは、風香と一緒にコンビニまで買い物に出かけることになった。



「……覚えてるよ。でも私はその時いなかったから、後で聞いたんだけど。風香がサヤちゃんと一緒に出掛けた時の話しでしょ?それがどうかしたの?」


「あの時のこと、どうなったか覚えてる?」


「うん……確か、サヤちゃんが風香を助けるためにお母さんを呼びに……」


「違うんだよ!!アタシは、呼びに行ったんじゃないんだ。面倒だから、その場に置いてきたんだよ」


「……え?」


そうしてサヤは、あの時は黙っていたが本当に自分がとった行動について続きを話し始めた。



手に入れたかった風香と二人だけで外に出れたことが嬉しかったサヤは、少し遠回りをしてコンビニまで出かけた。自分に妹ができたら、こんな感じだろうかと思いながら、機嫌よく手を繋いで歩いていく。
だが、風香は家から距離が離れていくことと、隣にいるあまり知らないサヤに対して不安を感じ、途中で泣き出してしまった。


泣きじゃくる風香を何とかなだめようとするサヤだったが、風香は泣き出してこの場から離れようとしない。大きな声でハルナに助けに来てもらおうと、何度も何度も姉の名前を必死に叫んでいる。



サヤはそのことが気に食わなかったのか、風香をその場に残して家に戻っていった。




「え?サヤちゃん、風香……置いていったの?で、でも何事もなく、無事に家に帰ってきたって……」


「あぁ。置いてきたんだよ……面倒臭くなってね。それに、アタシじゃ不安だったみたいで、憎たらしいアンタの名前ばっかり呼んでたんだよ……いまこうやって思い出してみても、腸が煮えくり返る思いだよ、まったく」



――ハルナはサヤの言葉が、すぐに理解できなかった


確かにあの時、風香は家に何事もなく戻ってこれた。
ハルナが家に戻ってから聞いていた話だと、迷子になったサヤが風香のことを心配して家族を呼びに行った。しかし、その直前にちょうど道の真ん中で泣きじゃくる風香を見付けてくれた近所の方が車に乗せて家まで送ってくれたということだった。


しかし、いまサヤから聞いた話は、似ているようで何かが違う。
偶然にも近所の人が異変に気付いて、無事に風香が戻ってきてくれたおかげであの頃は平穏に過ごしていくことができた。


だが今の話しが本当ならば……この話を当時に聞いていたならば、ハルナの中のサヤに対する感情は今まで抱いたことのないほどの悪い感情が生まれてきそうになっていた。






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