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第六章 【二つの世界】
6-278 ニーナとステイビル7
しおりを挟む「……ニーナ」
ステイビルは、ニーナに迫られた選択に対し、戸惑いを見せる。
そんな自分に気付き、ステイビルはこの空気を変えるために一つ咳払いをした。
そして、その瞬時に考えたこの選択に対しての回避策……質問によって回答を先延ばしすることにした。
「うむ……お前の質問を答える前に、いくつか確認しておきたい。いいか?」
ニーナは、その言葉に対して予想外といった態度も見せずに、ステイビルからの確認に応じる意思を表す。
ステイビルはその態度を見て、机の上に肩肘をつきニーナと全身で向き合った。
「まず、ニーナをこの国へ受け入れる際に、カステオと交わした約束のことだ。こちらからはキャスメルとその使い達を西の国へ送っている。万が一ニーナがこの国を離れた場合、その者たちはどういう扱いになるのだ?」
ステイビルからの質問が、自分に対してではなく期待をしていなかった内容にニーナは少し思うところはあったが、その心情を表に出すことなく答えた。
「そのことでしたら、問題ございません。キャスメル様のことは、ステイビル様やキャスメル様が望むのでありましたら、このまま西の王国に滞在して頂いても構いません。兄……カステオ王としても、この国との連携は常々望まれていたことです。それに、これは私が一方的に破った約束ですから……わたくしからもお二方が望むように王に申し伝えます」
「わかった……では、次の質問だ。ニーナがこの国を離れた場合、何かやり残したことなどはあるか?」
「やり残したこと……わたくしとしては、グラキアラムのことを踏まえ、ここまで騒ぎを大きくしてしまったことに対して、寛大な処置をして頂けたことに満足しております。ただ……心残りなのは。せっかく通じ合ってきたメイドの方々のことです。ここまで、わたくしに自分たちの心の内を見せてくれた方々に対し、申し訳ない気持ちがあります。あ、その方々には決して罰をお与えにならないようにお願いいたします。あの方たちは何も悪いことをしているわけではありませんので!……もしお許しいただけるのであれば、それが私からの最後のお願いです……どうか、お願いいたします」
「うむ……その者たちに何の処分を与えないことを約束しよう。それと、そのことを告げた者たちを詮索しないことも併せて約束する」
その言葉に、ニーナはステイビルに感謝の気持ちを表した。
そこから少し時間が開き、ステイビルは椅子の上で組んでいた足を変える。
そして、最後の質問をステイビルは告げた。
「……さ、最後の質問だ」
「はい、お願いいたします」
ステイビルは、頭にある質問の内容がどのように言葉にすれば誤解なく伝わるかを考えている。
そのため、確認の言葉から更に時間が経過したが、ニーナはそのことを気にせずステイビルの言葉を待っていた。
ステイビルもニーナの待ち構える視線を受けつつ、覚悟を決めて言い出し辛かった最後の質問を口にした。
「ニーナ……」
「はい」
「お前は……その……ゴホン……わ……私の……こと……が」
「……」
「……私のことが……き、嫌いになったのか?」
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