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第六章 【二つの世界】

6-274 ニーナとステイビル3

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一方で、ステイビルはハルナに対して不信感を抱いていた。
婚姻の相手である自分に相談役と言う名目ではあるが、他の女性を……しかも”あの”ような騒動の原因となった人物を自分の傍に薦めてくることに対し、ハルナの提案を不思議に感じていた。



確かに、ハルナはこれから大きな事態に対峙していくことになる。
本来であれば、人生を一緒に共にすると誓った相手のことを第一に大切にするものではないかと、ステイビルは考えていた。
実際、今回のことが失敗に終わったとした場合、まずステイビルはハルナがどのようになるのかが非常に心配だった。




反対にハルナは、そんな気配はまるで感じられない。
創造者と別れた後も、今までと同じように日々を過ごしてきた。

最近はそんなことばかり考えている自分が、少し嫌になってきていた。
だがそれは、現実逃避のような側面もあることも判っている。
王国や世界の危機に対して、国王である自分に何もすることがないということに、解消できない不満だけが募っていく。


そんな時、ステイビルの部屋の扉を叩く音が聞こえた。



「――?」


既に夜も遅い時間に、誰がこんな時間に自分のもとへ訪ねてくるというのだろうか。
誰かと扉の向こうにいる者に尋ねようとしたが、この時間に失礼なこととも考えずにそんなことをできるのは、この場ではハルナしかいないだろうと考え、中へと通す。


「……どうぞ」



すると、そこに入ってきたのはステイビルが望んでいなった人物だった。


「どうした……ニーナ。こんな時間に」



ステイビルの声は疲れに沈んでおり、その中には怒りのような色も混ざっていた。
いつもならば、すぐにでも感情の制御をするために反省をするが、今回はそのようなことは必要ないと考え、このまま夜中に訪れたニーナの対応をする。


ニーナは、ここにきた理由を尋ねられ、自分のことに対する不信感をあらわにするステイビルの態度にも怯むことなく言葉を返す。



「夜分遅くのご訪問、大変申し訳ございません」


ニーナはまず、前に手を合わせて、腰を九十度近く曲げてお詫びをする。

ニーナの対応は、他のメイドたちよりも洗練されているのはステイビルも認めている。
だが、ニーナがここにきた経緯を考えると、素直に認めることができない。
ましてや、元西の王国の王女だったという事実からしても、扱いにくさがあるのは当然のこと。
いまは収まっているが、一部のメイドたちが不満を募らせるのも仕方のないことだったと思っている。

ハルナからの提案で、ニーナを国王の相談役としてメイドより上の地位に上げることになったが、それも下の者たちから見れば、不満の種となっているのではないかと思っていた。


「いい……それで、一体何の用だ?」


「はい。ステイビル様に、お話しておきたいことがございまして」


「そんなに急ぎの用なのか?明日の朝では、ダメなのか?」


ステイビルは、先ほどの感情よりも苛立つ感情を隠すことなく交え、ニーナの要望に対して返答をする。
しかし、その内容はステイビルが驚いてしまう内容のものだった。



「はい、周囲にあまり人がいない今が適当かと思います」


「わかった……それで、一体どんなこと私に伝えたいのだ?」


「ステイビル様の態度に関するメイドたちからの要望でございます」






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