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第六章 【二つの世界】
6-272 ニーナとステイビル1
しおりを挟む「……ハルナ。昨夜は眠れたのか?」
「あ、ステイビルさん。おはようございます。ニーナさんも、おはようございます」
ハルナは声を掛けられた方向へ目を向けると、ステイビルの後ろに、ニーナの姿も見られた。
ニーナは、ハルナからステイビルのお世話をお願いされていた。
今現在、女王となる予定のハルナが特段にステイビルのお世話をするようなことはない。
ハルナはこれから世界の崩壊を防ぐために、心と体の準備を行っていかなければならない。
それを理由に、今回の旅についてはステイビルの面倒を見る専用のメイドを付けた方がいいとハルナから提案した。
最初はステイビルはそのことを拒否していたが、先ほどの理由からニーナのメイドという職の教育と、ソフィーネの負担軽減からこの案が採用された。
ソフィーネ自身は、この人数でもまるで問題はなかったが、ハルナにそう言われてニーナにその役目をお願いするために協力してもらっていた。
エレーナからもこの案について承諾してもらっていたが、”どうして自分のことにはそこまで気が回らないんだろうねぇ”と付け加えられていた。
隣にいたマーホンは、ステイビルの姿をみていま自分の座っている席を開けようとした。
しかし、ステイビルはその行動を制して、たき火を挟んだハルナの反対側の席へと腰を下ろした。
「ステイビルさんは、よく眠れましたか?」
「あぁ、おかげでな。王選の旅をしていた頃の懐かしい感じに最初は興奮したものだが、数日であの頃と同じように慣れてしまう自分に驚いてしまうよ」
「私も、思い出していたところですよ?今日で終わりなんて、信じられないくらいに」
「そうか……そう思ってくれるのは、なんというか、少し嬉しいものだな」
「ステイビル様。今度、わたくしにも旅のお話をお聞かせくださいませんか?あ、もちろん仕事の合間でも構いませんので」
ニーナは東の王国では、当初は”メイド”の地位でしかなかった。
本来ならば、国王に対して要望を告げることはあってはならないこと。
国王自身はそれに対して制限は掛けていないが、礼儀としてそういう行為は皆が慎んできた。
ニーナは度々ステイビルに対して、そのような発言をすることを聞かれた。
でも、そのことを咎めないようにとお触れを出したのはハルナだった。
皆、ニーナが西の王国の王女であることは東の王国に滞在し始めた時から知れ渡っている。
初めは他のメイドたちも緊張をしていたが、ステイビルの対応が王女ではなく、一般のメイドと同じように接していることから、皆も同じように接するようになっていった。
ニーナは西の国では王女であるため、一般の者よりも博識で身なりや言動も一般のメイドには身に付けられないものだった。
そんなこともあり、一部の者はニーナのことを良く思わない者がいた。
直接的な被害は受けていないが、ニーナは周囲のメイド仲間から孤立させられるような動きが見られた。
ニーナはそのことを体感的に感じていた、自分自身は”この場に必要とされていない”ということを。
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