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第六章 【二つの世界】

6-267 エレーナとの夜2

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”―――私たち、大丈夫だよね?”



その言葉にハルナは、申し訳ない気持ちになると同時に、エレーナたちのことが心配になった。
今までも口にはしなかったが、やはり自分たち……自分たちの世界が消えてしまうという恐怖は相当な不安でしかないだろう。


オスロガルムの時はよりも、今回は創造者が告げたということでさらに世界が崩壊してしまうという信憑性が高い。
それにエレーナは、別の世界でアルベルトとの間に授かった子供のことをハルナによく聞いてきていた。
それほど深く接していたわけではなかったが、ハルナはエレーナの知りたいことをできる限り教えてあげた。



それを聞いてからのエレーナは、早くアルベルトと一緒になりたいという気持ちが強くなった気がする。
今までも周囲はいつ決断をするのかというだけの状態だったので、二人が結ばれたとしても何の違和感もない。
むしろ、”時間がかかり過ぎた”とも感じる者の方が多いだろう。



自分たちの未来に、希望が見えてきた矢先にこのようなことを聞かされたのだから、その胸中を考えるだけでハルナは息苦しくなる。




「ねぇ、何とかして……ハルナ。あなたなら……できるんでしょ!?」


「ちょっ……ちょっと!?わたしも、不安で一杯なのよ!で、できることなら何とかしたいのはやまやまけど、私だって……どうすればいいか……」




ハルナの声は次第に小さくなっていき、下にうつむいてエレーナと顔を合わせることができなくなった。




「……ごめん。そうだよね……ハルナだって……急にこんなことになって……不安だよね。そう、私だってハルナの立場だったら、絶対にこんなに落ち着いてなんかいられないわ」



「落ち着いてなんかないわよ!?本当は……言えないけど、逃げたい気持ちでいっぱいだもの。何で私がこんなに大勢の人たちの運命を左右することを、私に託されてるのか意味が分からないわよ……」



ハルナは嫌なことを思い出してしまい、手にしていたコップの中の飲み物を口に含んで飲み込んだ。
その間を持たせるように、エレーナも同じようにコップを口に付けたが、その中には飲めるほどの量は入っていなかった。

エレーナは傍に置いていた冷やしておいた瓶を手に取り、自分に注ぐよりも先にハルナの方へ注ぎ口を向ける。
ハルナはお礼を言いながらコップを差し出し、丁度空になったコップの中に再び冷たい飲み物が注がれていった。
そのタイミングで、エレーナはあることを思い出してそれを口にする。




「そういえば、ハルナって元の世界では”普通の人”なんだっけ?貴族でもなく、王宮に仕えたりする地位の家系でもなかったんでしょ?」




「そうよ。私の住んでいた国では、王様とかはいなかったの。だけど”選挙”っていう投票で決めて国の代表を選ぶ人を決める権利はあったけどね。そんなのほとんどの人が大人になれば、与えられる権利だからそんなにすごいものでもないし」

「そこなのよね……それなのに、こんな力を持ってるなんて……この国だと、ラファエル様とかと同じ存在だからねハルナは。だけど、どうしてその指輪を……持っていたのかしらね?」


ハルナは右手の指に付けていた指輪をなぞりながら、これをくれた人物のことを久しぶりに思い出していた。







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