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第六章 【二つの世界】
6-256 気まぐれ
しおりを挟むこれまでの話しの中で、ハルナ以外の者たちにはいまいちよくわからない箇所が多くあった。
資源と言う言葉は理解ができるが、その資源がこの世界の崩壊にどのようにつながるのか。
ハルナはそのことを理解しているようだが、今はそのことを問い質す時間ではないと考え、誰も自分の疑問を口にはしなかった。
ハルナの頭の中には、今回の創造者が告げる話の内容には思い当たる節がある。
だが、その知識はこの世界のものではなく、元いた世界……しかもこの世界にはない”パソコン”という世界での話だった。
パソコンでは、資源(リソース)が逼迫すると、稼働中のシステムやアプリケーションの動作に影響をもたらしていた。
だが、世界というものに対し、その知識が当てはまるかは、ハルナには判断が付かなかった。
自分がいた世界でも石油や石炭などのエネルギーや、食物や森林、水源などが資源として扱われていた。
勿論その中には、社会活動を行うための人も、資源という括りに数えられていたのは覚えている。
災害や何らかの問題によって、資源が足りなくなってしまうと、社会活動が停滞してしまうことはニュースやネットでの話題でその時々で見かけていた。
だが……世界が崩壊するということは、ハルナの今までの常識では考えられなかった。
オスロガルムの際には、ラファエルがサヤの記憶から見たという情報を信用し、その結末を防ぐために行動をしていた。
今回の問題はハルナを含め、この場にいる人間たちには、いまひとつその緊迫感が伝わっていなかった。
そのことを感じた創造主は、ため息を吐いてハルナに告げた。
『……その顔はどうやら、私の言ったことが伝わっていないようですね。それならそれで構わないのです、私にとっては何の被害も受けないのですから』
「……被害を受けない?あなたも同じこの世界に存在するお方なのではないのですか?」
創造者の言葉に怒りを感じたのか、ステイビルが真っ先に食って掛かるのようにように追求する。
しかし、その言葉に対して反応を見せたのは、投げかけた創造者ではなく、近くにいたラファエルだった。
『このお方は……最初にお話しした通り、この世界をお創りになられた方。ですから、この方はこの世界の崩壊には何ら影響は受けません』
「だ……だったら!?なぜあなたはこうまでして、この世界の崩壊を止めようとしているのですか!?」
エレーナが我慢できずに、ラファエルが代弁した内容に対して、平気な顔でいる創造者に対して思いをぶつけた。
その反応に対して、ラファエルが何かを言おうとした際に、創造者は手でラファエルの言葉を遮る。
そしてラファエルは再び、一歩下がって創造者の後ろ側にその身を隠した。
『……いいでしょう、エレーナ。そのことに対する私の答えは……”気まぐれ”です』
「はぁっ!?き……気まぐれですって!?私たちの命が……あなたの気まぐれでどうにかなるというの!?」
『あなたは受け入れられないでしょうが……その通りとしか。これをごらんなさい』
創造主は手のひらを上にして、ハルナたちに向ける。
するとその手のひらの上に一羽、小鳥がその姿を現した。
『……触ってごらんなさい』
創造主はハルナに、その鳥を触れるように指示をする。
手を伸ばしたハルナは、その鳥が逃げてしまわないようにそっと挟んで包み上げる。
「あ……」
ハルナの手の中には、何とかして羽ばたこうとする鳥の羽の感触が伝わってくる。
それは何とかしてハルナの手の中から逃げようとする行動だった。
『いい?それじゃ、いくわよ?』
「――!?」
その直後、ハルナの手の中の鳥の感触は消え……自分の手が合わさった感触だけが残っていた。
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