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第六章 【二つの世界】

6-243 ねがい

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ルーシーは王宮精霊使い長と騎士団長に了解を得て、一旦自分たちの任務を離れたと説明した。



キャスメルの記憶では、アリルビートとシュクルスは騎士団に、ルーシーは王宮精霊使いの一員として所属していた。
ただクリエは王宮精霊使いの一員として認められていたが、自身の体調不良のため王都から離れてソイランドに戻っていると聞いている。

そのため仲の良かったシュクルスは、クリエに付き添いソイランドの警備兵の一員として騎士団から派遣されていた。それはクリエの状態を見守るためと聞いていた。


この場に王選のメンバーが集まってきたこと……それ以前に、なぜクリエたちがここに来たのかが判らなかった。

キャスメルは素直に、ここに集まった元メンバーにその理由を問いかけた。




「それは……」


ルーシーは、一度ステイビルの顔を見て、その問いかけに答えて良いものかを伺っている。
だが、ステイビルは自信をもって頷き、その姿を見てルーシーは再びキャスメルへと向き合う。


「……それは、キャスメル様が西の王国へお一人で旅立つとお聞きし、心配になりこうして参った次第です。キャスメル様”お寂しがり屋”ですので、お一人で他の国へ行かれるのは心細いだろうと思いまして……」


「だが……お前たちの仕事も……」


「それは我々が許可したので問題ありませんよ、キャスメル様」




この場には、騎士団長のアルベルトと王宮精霊使い長のエレーナがいる。
その二人が問題ないと言っているのであれば、これ以上キャスメルはそのことに対して何も言うことはなかった。
そして、最後の疑問……クリエに対してキャスメルは目を向ける。

健康的で勝手に食事制限を掛けていたころのクリエとは異なり、この場にいるニーナと同じようなやせ方をした姿がそこにあった。



「クリエ……どこか身体でも悪いのか?」



キャスメルは、クリエの身体に気を遣い優しい声を掛ける。
クリエは、これまでこの場でキャスメルに目を合わせていない。
キャスメルが投げかけた言葉に対しても、長いと思われるほどの時間が経過しても言葉は帰ってこなかった。



「ほら……クリエ……」



ルーシーはクリエの背中にそっと手をかけて、キャスメルの前に連れていく。
そして、先ほどのキャスメルの言葉に対して、返答するように促した。



「……」


「……ん?どうした?」


「……す」



「ほら、クリエ」


声の小さいクリエにキャスメルはクリエに聞き返し、ルーシーはもう一度大きな声で答えるように促した。


「あの……わたし……き……きゃ……キャスメル様の……お傍に……いたい……です……ずっと……一緒に……ダメ……です……か?」



ルーシーは、クリエが言いたいことを言えたことにホッとした。
肝心なところは伝えられてはいないが、この場で見ている者たちの数や、クリエの性格を考えれば、これが今のクリエにとっては限界だろう。



「詳しいお話はまたあとで……ですので、キャスメル様。我々もお供させていただいてもよろしいでしょうか?」



キャスメルは、ステイビルにそのことに対しての意見を求めた。
だが、ステイビルは一つ頷いただけで、それ以上のことは言わなかった。



「あぁ……じゃあ頼むよ。みんな」



こうして馬車の中が賑やかになった。
道中の食料や物資などは、クリエたちの物も含めて乗せられていた。
こうして、キャスメルとカステオは西の国に向かって出発した。








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