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第六章 【二つの世界】

6-241 解決

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ハルナは、ステイビルの言葉からもう一つの世界のステイビルの状況を思い出す。

あの世界では、優位の差がステイビルとキャスメルの間にあった。
その時は今とは逆で、ステイビルの方が不利な状況であった。
だが、その状況もサヤと一緒に行動することによっていくらか改善が見られ、ステイビル本来の良さがあの世界でも伝わっていった。



この”元”いた世界ではその状況とは真逆で、ステイビルの方が優位な状況に思えた。
ハルナが別な世界に行くまではそんなことは思いもしなかったのだが、二つの世界の状況を比較してみれば、そう考えてしまうことも仕方がなかった。





「お前があの日……王都を抜け出してウェンディアのことを探しに行かなければ……今こうしてハルナと巡り合うこともなかった。私も気にはなっていたが、お前のように自由に行動するわけにはいかなかった。だから俺は……お前のことがとてもうらやましく思っていたんだ」


「そんなことで……簡単じゃないか!自分の思い通りに行動をすればいいだけだろ?」


「二人が自分勝手に行動していたら……王宮の評判は下がるだろ?だが、そこは俺ができないことを、お前が代わりにやってくれたのだ……少なくとも俺はそう思っている」


「……ステイビル」


「だからこそ、今回はお前に西と東の橋渡しをお願いしたい。もちろん、お前の考えの全てを受け入れることはできないかもしれないが、東の王国の代表としてある程度の権限は持たせるつもりだ……だから、この案を受け入れてはくれないか?キャスメル……」




「兄弟の話に割り込んで済まないが……私もその案を推すぞ、キャスメル」


「カステオ……」



「今回のことで、お前の優しさや辛いとところに付け込み、巻き込んでしまった。本来ならば別な形でステイビルと交渉するつもりだったのだが……お前が来てくれたおかげで、こんなにも早く事が進んだ。ありがたい……そのお詫びと言ってはなんだが、西に拠点を作る際には、あまり不自由のない生活を約束しよう」


「さぁ、立ってくれ。キャスメル……これから忙しくなるぞ?いろいろと準備や決め事を考えなければならないからな!」





ステイビルは肩に置いていた手を、キャスメルの手に変えて座り込んでいた身体を引き起こした。
キャスメルも足に力が入るようになり、ステイビルの補助を受けて膝を立て、その場に立ち上がった。


そして、キャスメルはそのままハルナの方へ向かい、自分の今までの行動を恥じながら頭を掻く。



「ハルナ……すまなかった。これでもう、諦めることができたよ。ハルナが幸せになってくれることを祈っているよ」



あっさりとした対応と、勘違いもされているようなキャスメルからの挨拶に、ハルナは戸惑いながらもキャスメルに言葉を返す。



「え?……あ、ありがとうございます。キャスメルさんも……えっ……と、これからもよろしくお願いしま……す?」



「……?あぁ、こちらこそよろしく頼みます」


ハルナの歯切れの悪い挨拶に疑問を感じながら、キャスメルはハルナに手を出して握手を求めた。
ハルナもその手をとり握手に応じたが、背中にはこれから解決しなければならないことを思うと、背中に汗が流れていった。









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