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第六章 【二つの世界】
6-233 本当の気持ち
しおりを挟むこの話は、ハルナとステイビルが二人だけで話し合ったことだという。
ある晩、ステイビルはハルナに今の気持ちを確認した。
『本当に自分のことを愛しているのか』――と。
その答えにステイビルはショックを受けた。
愛してはいないが、嫌いではないという。
ハルナは今まで――この世界に来る前も含め――誰かを好きになったり、付き合いたいという感情を抱いたことはなかった。
今回の旅の様に男女問わず協力して、夜なども共にすることは平気だった……ある一定の節度を保ちながらであれば。
特に男性嫌いだとか、独特の趣向を持っていたわけでもない。
アイドルや俳優、お店に訪れる顧客の中にも、素敵だと感じる人物はいた。
もちろんステイビルも、その中に入る程の充分な容姿と頭の切れがあった。
当然、元いたハルナの世界の知識や常識など通じないところはあるが、それを否定せずに受け入れようとする姿勢はハルナもいい印象を持っている。だが、それだけで夫婦になるという決意が、ハルナの中にはステイビルに対して生まれなかった。
その話を聞き、ステイビルは迷っていた。
『ハルナは自分の気持ちに”嘘”をついてまで、自分と一緒になっていいのか』――ということを。
そのことを気にせずに事を進めてしまえば、きっとハルナはその通りに付いてきてくれるだろうということは判っていた。
そのまま一緒になった後でも、国の業務に対しても真摯に取り組んでくれるだろうということも。
しかし、婚姻という儀式の根底にある”もの”が引っ掛かり、ステイビルはそのことを無視することがどうしてもできなかった……それでもこの流れを止めることはできないことも判っていた。
国を挙げての投票を行い、ステイビルとハルナを祝福する意見は多い。
そもそも、本来ならばその前の時点で解決するべきはずの問題が、結果が出たこの状況になって表面に現れてしまった。それはマーホンから持ち掛けられた方式によるが、その方式を決めて欲しいと願っただけでハルナ自身の気持ちをまるで考慮していなかったのは、ステイビルたち側の思慮の浅さが出てしまっていた。
「……それで私は、ハルナにお願いをした。”少しの間、私のことを考えて欲しい”……と。それと並行して、王宮内での作法やこの国の法律に関して身に付けてもらい、婚姻の儀式の前にもう一度、このことについての心境を聞かせて欲しい……と」
エレーナとマーホンは、この場で初めて聞かされた情報に頭の中で整理することに必死だった。
この事は、ステイビルと二人だけの秘密だと約束をしていたため、”その”ハルナは忠実にその約束を守って、ハルナの教育役であったマーホンやハイレインにもそのことを口にしていなかった。
ハルナはその話を聞き、自分の知らない自分が今の自分の判断と同じであることにホッとした。
だが、その責任を負わされるのはどうかという気持ちもあったが、この状況では自分でしか解決できないと判断し、この状況をどうにかするために頭を悩ませていた。
「……そうなんですね」
今までの話を聞き、マーホンが静かにそう口にした。
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※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載させていただいています。
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