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第六章 【二つの世界】

6-225 困惑

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先ほどのカステオの懇願から急転した態度もそうだが、カステオの意味の分からない願いによってステイビルの頭の中で処理が追い付いていなかった。


「ちょっ……!?ニーナ……え?……何をいってるんだ!?」



「……落ち着いてください、ステイビル様。取り乱しております、少し落ち着いてください」


「……!?す……すまない」



エレーナから指摘を受けたステイビルは、落ち着きを取り戻すと同時に、エレーナはこの件について全く動揺をした様子はなかった。
そのことを感心しつつ、当事者で無い立場からの意見であるため、冷静でいられるのだと言い聞かせた。



「なぜ、そんなことになったのだ……?」


ステイビルは、改めてカステオに問いかける。


「おい……本当に、わからないのか……?」


「……」




カステオの返しに、ステイビルは言葉が出せない。
知ったかぶりをしてもすでにバレているだろうし、分からないと答えればきっと人の考えが読めない男として、自分の評価を変えられるであろう。
そんな評価は実際ステイビルにとって大したことではないが、エレーナも含め辺りを見回すとそのことに気付いていないのは自分だけの雰囲気が、ステイビルの言葉を詰まらせていた大きな理由だった。

そんなステイビルを慮って、エレーナはそっとステイビルの衣服を背後から引き、後ろに耳を預けるように合図をする。
そして、きっとステイビル以外か思っているであろうことを、エレーナはステイビルに説明をする。



「……っ!?」




一番初めに理由を告げたのか、ステイビルは驚いて思わず言葉を口に仕掛けた。
だが、それを必死に抑え込み、そこから続けてエレーナが”そう”判断した理由を説明する。



「……そうか。確かに……そうかも、しれん」



話し終えたエレーナは、再び後ろに下がっていく。
そしてステイビルは目を閉じて腕を組みながら、エレーナの説明を頭の中で繰り返す……というよりもそうじゃない理由を探そうとした。
しかし、どう考えもエレーナが説明した内容を否定できる程の推測が出てこなかった。





「……ッホン。では、ニーナがあのような状態になったのは、いわゆる”恋煩い”と言うやつで……素によって食事もろくに食べられずにあのような状態になってしまった」



そこで一旦ステイビルは、カステオの顔を見る。その説明に反論をすることなく、エレーナから聞いた内容の続きを無言で催促した。



「……で、その……対象……が……わ、わ、私だということか……?」


「……やっと理解してくれたか、ステイビル。お前、まさか……そういうの苦手なのか?」



カステオは、ステイビルの後ろにいるエレーナに目線を送る。
こういう時は本人よりも、周りで見ているも者たちの方が、本人以上によくわかっていることの方が多いからだ。

エレーナはカステオから送られてきた視線に対して、下に視線を落としその回答を拒否する。
カステオにとっては、その行動がエレーナからの答えとなった。



「……ふぅ。そうか……だが、それでもかまわん。ニーナをぜひお前の傍に置いてやってくれ」




カステオは両手をテーブルの上につき、もう一度ステイビルに頭を下げた。









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