問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』

山口 犬

文字の大きさ
上 下
997 / 1,278
第六章 【二つの世界】

6-224 嘆願

しおりを挟む









この場にいる全員が、カステオのとった行動に対し驚愕してしまう。
一国の王が、土下座をして頼み込むことなど……本来はあってはならないことだろう。
さらに言えば、西の王国の存在価値が揺るぎかねない程の行為を、カステオはいま見せている。



ステイビルは、今までの行動はナルメルやイナだけでなく、キャスメルも含めてあらかじめ決められた行動であると考えていた。
しかし、この状況を本気で驚いている姿は、ステイビルとエレーナ以外の者たちも考えられなかった行動だろうと判断した。


だが、そのことは後回しにして、いつまでもこの状況を続けさせていては問題になってしまうと考え、ステイビルはカステオの方に手を置いた。



「か……カステオ殿。”そんなこと”をするものではない。一国の王という者がそのような行動を……」



ステイビルの言葉にカステオは反応し、顔を上げてステイビルの顔を睨む。




「そんなことではない!!……すまない。私とてこのような行動が、ステイビルたちに迷惑をかけていることは判っている!それほど、私の願いは真剣なのだ!!」




カステオは上半身を起こし、肩に手をかけたステイビルの腕にしがみつきながら訴える。



「頼む、この願い聞き届けてもらえるのならば……この私の全てを差し出しても構わない!だから……頼む!?」




ステイビルも困惑はしていたが、周囲の空気を察すると、これは自分にしかこの場の空気を収めることができないだろうと推測した。



「判った……とにかく、話を聞かせてくれ。そのためにもすまないが、一度立ち上がってくれないか?カステオ……」



今度はカステオもステイビルの言葉を素直に聞き、強く握っていたステイビルの腕を離し、ゆくっりと立ち上がった。


ナルメルとニナが、テーブルに二人の椅子を用意する。
ナルメルとイナとニナはテーブルの側面に座り、エレーナはステイビルの後方で座っている。
キャスメルは会話が聞こえる程度少し離れた場所で、一人きりで座っていた。

ニナが着席する前に用意してくれた紅茶の香りが、先ほどの緊張感を和らげてくれている。
しかし、このままでいることもできないため、ステイビルは一口飲み物を口に含んでカップを置いた。




「まず……初めに言っておきたい。この場は我々は”王”ではない。”親しい友人”として、気兼ねなく話をすることを提案したいのだが……?」


「感謝するよ、ステイビル……その心遣い、ありがたく頂戴しよう」




カステオは先ほどの行動を思い出して恥じたのか、ステイビルに向けた笑顔は照れが混じったモノになっていた。
ステイビルはその表情を見て、落ち着きを取り戻したと判断し先ほどの話題を切り出すことにした。



「それで……だ。先ほどの話だが、一体何をこの私にお願いしようとしていたのだ?」



カステオも用意されたお茶を口に含み、ステイビルの言葉を返すために皿の上に戻した。



「そのことなんだがな……ニーナをお前に貰った欲しいのだ」


「……は?」


「なんだ、こんなに近くなのに聞こえなかったのか?……ならばもう一回言うぞ。”ニ ー ナ を お 前 に も ら っ て ほ し い の だ”と言ったんだ」







しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】 ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!

珂里
ファンタジー
侯爵令嬢に生まれた私。 3歳のある日、湖で溺れて前世の記憶を思い出す。 高校に入学した翌日、川で溺れていた子供を助けようとして逆に私が溺れてしまった。 これからハッピーライフを満喫しようと思っていたのに!! 転生したからには、2度目の人生何がなんでも生き抜いて、楽しみたいと思います!!!

転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです

青の雀
ファンタジー
公爵令嬢ステファニー・エストロゲンは、学園の卒業パーティで第2王子のマリオットから突然、婚約破棄を告げられる それも事実ではない男爵令嬢のリリアーヌ嬢を苛めたという冤罪を掛けられ、問答無用でマリオットから殴り飛ばされ意識を失ってしまう そのショックで、ステファニーは前世社畜OL だった記憶を思い出し、日本料理を提供するファミリーレストランを開業することを思いつく 公爵令嬢として、持ち出せる宝石をなぜか物心ついたときには、すでに貯めていて、それを原資として開業するつもりでいる この国では婚約破棄された令嬢は、キズモノとして扱われることから、なんとか自立しようと修道院回避のために幼いときから貯金していたみたいだった 足取り重く公爵邸に帰ったステファニーに待ち構えていたのが、父からの勘当宣告で…… エストロゲン家では、昔から異能をもって生まれてくるということを当然としている家柄で、異能を持たないステファニーは、前から肩身の狭い思いをしていた 修道院へ行くか、勘当を甘んじて受け入れるか、二者択一を迫られたステファニーは翌早朝にこっそり、家を出た ステファニー自身は忘れているが、実は女神の化身で何代前の過去に人間との恋でいさかいがあり、無念が残っていたので、神界に帰らず、人間界の中で転生を繰り返すうちに、自分自身が女神であるということを忘れている エストロゲン家の人々は、ステファニーの恩恵を受け異能を覚醒したということを知らない ステファニーを追い出したことにより、次々に異能が消えていく…… 4/20ようやく誤字チェックが完了しました もしまだ、何かお気づきの点がありましたら、ご報告お待ち申し上げておりますm(_)m いったん終了します 思いがけずに長くなってしまいましたので、各単元ごとはショートショートなのですが(笑) 平民女性に転生して、下剋上をするという話も面白いかなぁと 気が向いたら書きますね

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む

家具屋ふふみに
ファンタジー
 この世界には魔法が存在する。  そして生まれ持つ適性がある属性しか使えない。  その属性は主に6つ。  火・水・風・土・雷・そして……無。    クーリアは伯爵令嬢として生まれた。  貴族は生まれながらに魔力、そして属性の適性が多いとされている。  そんな中で、クーリアは無属性の適性しかなかった。    無属性しか扱えない者は『白』と呼ばれる。  その呼び名は貴族にとって屈辱でしかない。      だからクーリアは出来損ないと呼ばれた。    そして彼女はその通りの出来損ない……ではなかった。    これは彼女の本気を引き出したい彼女の周りの人達と、絶対に本気を出したくない彼女との攻防を描いた、そんな物語。  そしてクーリアは、自身に隠された秘密を知る……そんなお話。 設定揺らぎまくりで安定しないかもしれませんが、そういうものだと納得してくださいm(_ _)m ※←このマークがある話は大体一人称。

【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!

暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい! 政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。

溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~

夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」  弟のその言葉は、晴天の霹靂。  アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。  しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。  醤油が欲しい、うにが食べたい。  レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。  既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・? 小説家になろうにも掲載しています。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

処理中です...