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第六章 【二つの世界】
6-224 嘆願
しおりを挟むこの場にいる全員が、カステオのとった行動に対し驚愕してしまう。
一国の王が、土下座をして頼み込むことなど……本来はあってはならないことだろう。
さらに言えば、西の王国の存在価値が揺るぎかねない程の行為を、カステオはいま見せている。
ステイビルは、今までの行動はナルメルやイナだけでなく、キャスメルも含めてあらかじめ決められた行動であると考えていた。
しかし、この状況を本気で驚いている姿は、ステイビルとエレーナ以外の者たちも考えられなかった行動だろうと判断した。
だが、そのことは後回しにして、いつまでもこの状況を続けさせていては問題になってしまうと考え、ステイビルはカステオの方に手を置いた。
「か……カステオ殿。”そんなこと”をするものではない。一国の王という者がそのような行動を……」
ステイビルの言葉にカステオは反応し、顔を上げてステイビルの顔を睨む。
「そんなことではない!!……すまない。私とてこのような行動が、ステイビルたちに迷惑をかけていることは判っている!それほど、私の願いは真剣なのだ!!」
カステオは上半身を起こし、肩に手をかけたステイビルの腕にしがみつきながら訴える。
「頼む、この願い聞き届けてもらえるのならば……この私の全てを差し出しても構わない!だから……頼む!?」
ステイビルも困惑はしていたが、周囲の空気を察すると、これは自分にしかこの場の空気を収めることができないだろうと推測した。
「判った……とにかく、話を聞かせてくれ。そのためにもすまないが、一度立ち上がってくれないか?カステオ……」
今度はカステオもステイビルの言葉を素直に聞き、強く握っていたステイビルの腕を離し、ゆくっりと立ち上がった。
ナルメルとニナが、テーブルに二人の椅子を用意する。
ナルメルとイナとニナはテーブルの側面に座り、エレーナはステイビルの後方で座っている。
キャスメルは会話が聞こえる程度少し離れた場所で、一人きりで座っていた。
ニナが着席する前に用意してくれた紅茶の香りが、先ほどの緊張感を和らげてくれている。
しかし、このままでいることもできないため、ステイビルは一口飲み物を口に含んでカップを置いた。
「まず……初めに言っておきたい。この場は我々は”王”ではない。”親しい友人”として、気兼ねなく話をすることを提案したいのだが……?」
「感謝するよ、ステイビル……その心遣い、ありがたく頂戴しよう」
カステオは先ほどの行動を思い出して恥じたのか、ステイビルに向けた笑顔は照れが混じったモノになっていた。
ステイビルはその表情を見て、落ち着きを取り戻したと判断し先ほどの話題を切り出すことにした。
「それで……だ。先ほどの話だが、一体何をこの私にお願いしようとしていたのだ?」
カステオも用意されたお茶を口に含み、ステイビルの言葉を返すために皿の上に戻した。
「そのことなんだがな……ニーナをお前に貰った欲しいのだ」
「……は?」
「なんだ、こんなに近くなのに聞こえなかったのか?……ならばもう一回言うぞ。”ニ ー ナ を お 前 に も ら っ て ほ し い の だ”と言ったんだ」
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