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第六章 【二つの世界】
6-221 待望
しおりを挟む「ご足労頂き、ありがとうございます。ステイビル様」
部屋に入ると、ナルメルがステイビルに対して、挨拶の言葉を告げる。
ステイビルは、あの紐に隠された内容を問うこともなく、素直にナルメルの挨拶を受け止める。
「それで……私をここに呼んだ理由について聞かせてもらえるだろか?」
用意された席にも付かずに、ステイビルは自分をここに呼んだ理由を問い質した。
だが、その言葉に対しこの場の流れをコントロールすべく、ナルメルはステイビルに提案する。
「その前に、お席についてはいかがですか?落ち着かれたうえで、お話しされませんか?」
ステイビルもその言葉に、自身の対応の過ちに気付き、ナルメルの言葉に従って用意された席に腰を下ろした。エレーナもステイビルの隣に席を用意され、抵抗することなくその席に座った。
「それで……先ほどのこちらからの質問については?」
席について空気が落ち着いた頃を見計らい、エレーナがステイビルに同じことを何度も言わせないために代わりに聞いた。
「もちろんお答えしますわ……イナ様」
「……」
ナルメルの隣にいたイナが、別室に待機していたキャスメルを連れてきた。
だが、その姿を見たステイビルは、特に何の反応を示さない。
「どうやら、お気づきだったようですね」
イナからそう投げかけられても、ステイビルは何も答えない。
諜報員の存在は伝えてはいないはずだが、ソフィーネとの関わり合いから、ナルメルはそのような存在がいたことは察していたようだった。
「キャスメル……この話を持ち掛けたのは、まさか」
「久しぶりだな……ステイビルよ」
ステイビルの言葉を遮り、この部屋にさらに新たな人物が訪れた。
「……カステオ。どうしてお主がここに?」
「おや?私がここにいることに対して、驚かないのは事前に知っていたのか?それとも必死に感情を抑えてみせているのかな?」
「そんなことはどうでもよい。まさかあなたが今回の件を仕組まれたのか?」
「そうだ。私がキャスメル殿に”お願い”をして、この場をもうけてもらったのだ。もちろん大げさにならないようにという条件を付けて……な?だからここまで、誰も傷付いた報告は受けていないだろ?」
「……」
「ですが、この国の運営を混乱させている状況となっています。国王の命令に従わない町は、それだけで危険な存在です。西の王国であってもそうではないのですか?」
カステオの説明に言葉を詰まらせたステイビルに変わり、エレーナがカステオの言葉に異論を唱える。
「エレーナ殿か……さすがだな。うちの国に引き抜きたい人材だ」
「カステオ、いまこの場で関係の無いことはいい……時間の無駄だ。単刀直入に聞く、今回の目的はなんだ?」
「……そうだな、話が早くて助かるよ。いいだろ」
カステオはそういうとイナに合図を送る、するとイナは再び奥の部屋へ戻っていった。
そして、誰かの手を引きながらゆっくりと部屋の中に戻ってくる。
「ご……ご無沙汰しております……す、ステイビル……さま」
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