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第六章 【二つの世界】
6-202 違和感12
しおりを挟む「配慮が足りず、申し訳ありませんでした……」
「よいのです、それよりも……キャスメル殿。我々に協力して頂けないでしょうか」
「"協力"……それはどのようなものですか?」
「そうですね。……食事でもしながら、いかがですかな?」
キャスメルはカステオの提案に乗り、案内されるがままに客室へと通された。
そこでいく時間かくつろいだ後、準備ができたとメイドに言われて食事の部屋へと案内された。
キャスメルは案内された席に座り、自分を待っているプライベート用に配置されたテーブルの反対側に座るカステオとニーナに目線をやる。
(……?)
キャスメルはテーブルに並べられた食器の様子を見て、その様子に違和感を感じる。
ニーナの前に並べられた料理の数が明らかに少なかった。
キャスメルは初めに、女性によくある”食事制限”だと感じた。王選の旅の中でも、クリエは時々自分のお腹周りを気にしながら食事の量を自主的に制限をしたことがあった。
そんなクリエをルーシーは、”成長のためにも食事を摂らなければなりません”となだめていた。
”この年でまだ成長するのか”という言葉を出そうとしたが、クリエが食事を摂るのを止めてしまうことを恐れ、それは口にしなかったことを思い出す。
だが、目の前のニーナは、反対に食事を口にしなければ命にもかかわるような状態である。
それなのに、食事の数が少ないことにキャスメルは違和感を感じていた。
「……ニーナは、これでよいのです」
「え?」
その表情を感じ取ったのか、カステオがニーナの前に並べられた料理の皿の量の違いを説明した。
ニーナは食事……主に固形物の食事が受け付けられないとのことだった。
どのような食事を口にしても、戻してしまうらしい。だからこそ今では、スープなどの料理しか受け付けられない身体になってしまったようだった。
「それは一体……いつから?」
「こうなってしまったのは、東の王国の方々がこの国から戻られた、数か月後あたりからなのです」
ここまでの内容でようやくキャスメルは、ニーナに何が起きているのかを察した。
「ま……まさか、ニーナ様は……ステ」
――カラーン!!
その言葉を聞き、ニーナは手にしていたスプーンを自分の手から落としてしまった。
そのはずみでスプーンはテーブルの上で跳ねて床に落ち、甲高い澄んだ金属音がこの場に響き渡った。
周りのメイドたちがニーナの元に集まり、跳ねたスプーンによって飛散したスープを静かにふき取っていった。
それが何事もなかったかのように、カステオはこの状況に驚くキャスメルに対して詫びた上でこう述べた。
「キャスメル殿……その”名”は少し控えていただきたい。ですが……今キャスメル殿が考えておられるその通りの状況なのです」
「で、では……まさか、協力というのは?」
ようやくその位置まで状況が進んだことに安堵し、カステオはつい先ほどまで使っていたナイフとフォークを置き、テーブルの上にあったナプキンで口元を拭いた。
「そうです、ニーナと”あの方”との間を、キャスメル殿に取り持っていただきたいのです」
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