問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』

山口 犬

文字の大きさ
上 下
962 / 1,278
第六章 【二つの世界】

6-189 責任

しおりを挟む







この部屋に集まっている者たちの顔には、表情が抜け落ちている者が多い。
メイヤだけは、ハッキリとした怒りを含ませた視線を、ハルナに向けて放っていた。


その視線を受けるハルナは何も返えせず、この状況が起きてしまった責任に押しつぶされそうになっていた。



「ハルナさん……あなたが悪いわけではないわ?そんなに気にしないで」



この世界のエレーナは、ハルナのことを知らなくてもやさしい声をかけてくれた。
だが、生まれて間もない我が子を奪われた切っ掛けとなったのはハルナのせいではないが、その友人であることは間違いなかった。






ハルナがサヤと別れると、騎士団たちはエレーナの屋敷から撤退していった。
その際に、エレーナとアルベルトと対峙していたガレムも一緒に姿を消した。



ハルナの話によると、サヤはハルナと急にハルナと敵対すると告げたという。
その理由を聞いても、サヤは答えてはくれなかった



だが、その状況を説明してもメイヤはハルナのことを信用をしてはくれなかった。



「よくもそんなことを!?ミレイ様が攫われて……いま、エレーナ様がどんなお気持ちか」



「メイヤ、そこまでにしなさい。この方がおっしゃられているのは、本当のことですよ」


「で、ですが!?」


「メイヤ……少し落ち着け。お前の言いたいことも充分に判っているつもりだ。エレーナも……な」



ステイビルからの言葉にメイヤも、感情的になりすぎていたことを反省はする。
しかし、それで目の前にいるこの状況を作り出したと思われる人物に対して、信用しろと言われてもメイヤはできないでいた。



「確かに……我々はガレム隊との抗戦で足止めをされていました。ですが、ハルナ様がサヤ様……いえ、サヤを探しに行っていたというのは、あの場面では正しい判断だと思われます」



「しかし……だな。私もあの者の思惑を見抜けなかったというのは、私の責任だ。メイヤ……責めるならば私を責めるがいい」


「そんな……ステイビル様を責めるなど!?」


「だがな、メイヤ。私は、この方たちに助けられたのは事実だ。こうしても神々の助力を得られているのは、この方たちのおかけなのだ。これが計略の結果だとしても、それを見抜けなかったのは私の責任なのだ」



『メイヤとやら……ステイビルの言ったことは、間違ってはおらん。お前がこの方を責めるのであれば、それに協力をしたワシにもその責任はある』



「モイス様まで……そんな」



メイヤはステイビルとモイスが庇うハルナとサヤを、自身の感情の中でどう扱うべきか迷っていた。
落ち着いて考えてみると、ハルナのこの反応は”演技”ではなく本当に何も知らなかったようであるとも取れる。
メイヤの気持ちを汲んだエレーナは、何とかこの場を収めようとした。


「……と、とにかく。ミレイを連れ去ったとしても、それはこちらへの交渉材料としての行動だろうから、すぐに”どうこう”することはないと思うの。もしそうなったら……でも、この状態をどう変えていくことかがこれからにとって重要ね?」


「あぁ、エレーナの言う通りだ。とにかく、これからどうするべきかすぐに検討をしよう……ひとまず休憩をはさんで、今後の計画を話し合うぞ」


「「――はい!」」


こうして一旦この場は収まり、それぞれは一度各自の部屋へ戻って落ち着くことにした。





ハルナは、与えられた部屋に戻ると、ベットに腰かけそのまま横になる。
隣のベットにいたサヤの行方を気にしながら、ハルナはそのまま目を閉じた。






しおりを挟む
ツギクルバナー
感想 5

あなたにおすすめの小説

旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】 ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む

家具屋ふふみに
ファンタジー
 この世界には魔法が存在する。  そして生まれ持つ適性がある属性しか使えない。  その属性は主に6つ。  火・水・風・土・雷・そして……無。    クーリアは伯爵令嬢として生まれた。  貴族は生まれながらに魔力、そして属性の適性が多いとされている。  そんな中で、クーリアは無属性の適性しかなかった。    無属性しか扱えない者は『白』と呼ばれる。  その呼び名は貴族にとって屈辱でしかない。      だからクーリアは出来損ないと呼ばれた。    そして彼女はその通りの出来損ない……ではなかった。    これは彼女の本気を引き出したい彼女の周りの人達と、絶対に本気を出したくない彼女との攻防を描いた、そんな物語。  そしてクーリアは、自身に隠された秘密を知る……そんなお話。 設定揺らぎまくりで安定しないかもしれませんが、そういうものだと納得してくださいm(_ _)m ※←このマークがある話は大体一人称。

婚約破棄され逃げ出した転生令嬢は、最強の安住の地を夢見る

拓海のり
ファンタジー
 階段から落ちて死んだ私は、神様に【救急箱】を貰って異世界に転生したけれど、前世の記憶を思い出したのが婚約破棄の現場で、私が断罪される方だった。  頼みのギフト【救急箱】から出て来るのは、使うのを躊躇うような怖い物が沢山。出会う人々はみんな訳ありで兵士に追われているし、こんな世界で私は生きて行けるのだろうか。  破滅型の転生令嬢、腹黒陰謀型の年下少年、腕の立つ元冒険者の護衛騎士、ほんわり癒し系聖女、魔獣使いの半魔、暗部一族の騎士。転生令嬢と訳ありな皆さん。  ゆるゆる異世界ファンタジー、ご都合主義満載です。  タイトル色々いじっています。他サイトにも投稿しています。 完結しました。ありがとうございました。

聖女を騙った少女は、二度目の生を自由に生きる

夕立悠理
恋愛
 ある日、聖女として異世界に召喚された美香。その国は、魔物と戦っているらしく、兵士たちを励まして欲しいと頼まれた。しかし、徐々に戦況もよくなってきたところで、魔法の力をもった本物の『聖女』様が現れてしまい、美香は、聖女を騙った罪で、処刑される。  しかし、ギロチンの刃が落とされた瞬間、時間が巻き戻り、美香が召喚された時に戻り、美香は二度目の生を得る。美香は今度は魔物の元へ行き、自由に生きることにすると、かつては敵だったはずの魔王に溺愛される。  しかし、なぜか、美香を見捨てたはずの護衛も執着してきて――。 ※小説家になろう様にも投稿しています ※感想をいただけると、とても嬉しいです ※著作権は放棄してません

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

飯屋の娘は魔法を使いたくない?

秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。 魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。 それを見ていた貴族の青年が…。 異世界転生の話です。 のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。 ※ 表紙は星影さんの作品です。 ※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。

こちらの異世界で頑張ります

kotaro
ファンタジー
原 雪は、初出勤で事故にあい死亡する。神様に第二の人生を授かり幼女の姿で 魔の森に降り立つ 其処で獣魔となるフェンリルと出合い後の保護者となる冒険者と出合う。 様々の事が起こり解決していく

【完結】男爵令嬢は冒険者生活を満喫する

影清
ファンタジー
英雄の両親を持つ男爵令嬢のサラは、十歳の頃から冒険者として活動している。優秀な両親、優秀な兄に恥じない娘であろうと努力するサラの前に、たくさんのメイドや護衛に囲まれた侯爵令嬢が現れた。「卒業イベントまでに、立派な冒険者になっておきたいの」。一人でも生きていけるようにだとか、追放なんてごめんだわなど、意味の分からぬことを言う令嬢と関わりたくないサラだが、同じ学園に入学することになって――。 ※残酷な描写は予告なく出てきます。 ※小説家になろう、アルファポリス、カクヨムに掲載中です。 ※106話完結。

処理中です...