957 / 1,278
第六章 【二つの世界】
6-184 変化
しおりを挟む「おかえりなさいませ、ステイビル様、ハルナ様。町の様子はお変わりありませんでしたか?」
「ん?……あぁ。問題ない……だ、だいじょうぶだ」
「……そうですか??」
そういってステイビルはメイヤと一緒にエレーナの屋敷の世話を手伝っているミカベリーを避けて進んでいく。
その後ろには、ハルナが少し困惑したかのような雰囲気でその後ろを何も言わずについていった。
少し距離が離れたところで、ステイビルは立ち止まりミカベリーに向かって振り返った。
「アルベルトは……どこに?」
「え!?あ、はい!アルベルト様は、裏庭でガレムの相手をしておられますが……あ!私が呼んで参りましょうか!?」
ミカベリーは嬉しそうな声で、はしゃぐ感情を必死に抑えながらステイビルに提案をした。
だが、ステイビルからはミカベリーが望んだ答えは返ってこなかった。
「いや、私が行こう。大した用事じゃないからな……」
「え!?そうですか……はぁ」
「――?」
何故、今の対応でミカベリーが落胆したのかは分からない。
ステイビルとしてはミカベリーには他の用事があると思い、アルベルトとガレムの様子を知りたかっただけだったのだ。
「わ……私は、何か間違いをしてしまったのでしょうか?」
「え?いや、特には何もしてないと思いますけど……」
ステイビルは近くにいたハルナに、自分の対応で間違っていたところはないか確認した。その結果、第三者のハルナからも見てもおかしなところはなかったと、ステイビルは安堵した。
「――フッ!!」
――ガキ……ドっ!!
「――ぐぇ!?」
ガレムはみぞおちに、背中の後ろまで突き抜けるようなアルベルトの肘を一発もらった。
手にした剣を放すことはしない……これはアルベルトから課せられている条件の一つだった。
もしも、この剣の柄を手から離してしまえば、今日の訓練はここで終わってしまう。
そうすれば、この重い剣の素振りをしなければならなくなる。
アルベルトからの指示で、ガレムの使う剣は大型の両刃の剣に変更をされた。
剣の幅があり、元々細い剣を両手で扱っていたガレムは防御を盾で行ってはいなかった。
であれば、その両手に持った剣で攻防を行った方がよいとアドバイスした。
そして、騎士団から支給される隊の標準装備の剣では、この男の良い部分が発揮できないと考えたアルベルトは、両手持ちの大型の剣で訓練させることにした。
そうすることにより、通常の剣の幅による加重でガレムの振り回すような攻撃が、さらに重みを増していくとアルベルトは判断した。
実際に、速度や角度が重なったクリティカルな攻撃は、アルベルトも認めるほどの攻撃力を生み出している。
この数日間は、重量の増した剣の扱うための筋量の増加と、その扱いに対する慣れるために時間を費やしてきた。
短い期間で、これほどの進化と対応を見せるガレムのことを、アルベルトは認め始めている。
その裏で、いつか自分たちの敵に回ってしまった場合のことも、頭の片隅に浮かべるようにもなってきた。
0
お気に入りに追加
375
あなたにおすすめの小説
旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】
ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む
家具屋ふふみに
ファンタジー
この世界には魔法が存在する。
そして生まれ持つ適性がある属性しか使えない。
その属性は主に6つ。
火・水・風・土・雷・そして……無。
クーリアは伯爵令嬢として生まれた。
貴族は生まれながらに魔力、そして属性の適性が多いとされている。
そんな中で、クーリアは無属性の適性しかなかった。
無属性しか扱えない者は『白』と呼ばれる。
その呼び名は貴族にとって屈辱でしかない。
だからクーリアは出来損ないと呼ばれた。
そして彼女はその通りの出来損ない……ではなかった。
これは彼女の本気を引き出したい彼女の周りの人達と、絶対に本気を出したくない彼女との攻防を描いた、そんな物語。
そしてクーリアは、自身に隠された秘密を知る……そんなお話。
設定揺らぎまくりで安定しないかもしれませんが、そういうものだと納得してくださいm(_ _)m
※←このマークがある話は大体一人称。

婚約破棄され逃げ出した転生令嬢は、最強の安住の地を夢見る
拓海のり
ファンタジー
階段から落ちて死んだ私は、神様に【救急箱】を貰って異世界に転生したけれど、前世の記憶を思い出したのが婚約破棄の現場で、私が断罪される方だった。
頼みのギフト【救急箱】から出て来るのは、使うのを躊躇うような怖い物が沢山。出会う人々はみんな訳ありで兵士に追われているし、こんな世界で私は生きて行けるのだろうか。
破滅型の転生令嬢、腹黒陰謀型の年下少年、腕の立つ元冒険者の護衛騎士、ほんわり癒し系聖女、魔獣使いの半魔、暗部一族の騎士。転生令嬢と訳ありな皆さん。
ゆるゆる異世界ファンタジー、ご都合主義満載です。
タイトル色々いじっています。他サイトにも投稿しています。
完結しました。ありがとうございました。
聖女を騙った少女は、二度目の生を自由に生きる
夕立悠理
恋愛
ある日、聖女として異世界に召喚された美香。その国は、魔物と戦っているらしく、兵士たちを励まして欲しいと頼まれた。しかし、徐々に戦況もよくなってきたところで、魔法の力をもった本物の『聖女』様が現れてしまい、美香は、聖女を騙った罪で、処刑される。
しかし、ギロチンの刃が落とされた瞬間、時間が巻き戻り、美香が召喚された時に戻り、美香は二度目の生を得る。美香は今度は魔物の元へ行き、自由に生きることにすると、かつては敵だったはずの魔王に溺愛される。
しかし、なぜか、美香を見捨てたはずの護衛も執着してきて――。
※小説家になろう様にも投稿しています
※感想をいただけると、とても嬉しいです
※著作権は放棄してません

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫
むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

【完結】内緒で死ぬことにした 〜いつかは思い出してくださいわたしがここにいた事を〜
たろ
恋愛
手術をしなければ助からないと言われました。
でもわたしは利用価値のない人間。
手術代など出してもらえるわけもなく……死ぬまで努力し続ければ、いつかわたしのことを、わたしの存在を思い出してくれるでしょうか?
少しでいいから誰かに愛されてみたい、死ぬまでに一度でいいから必要とされてみたい。
生きることを諦めた女の子の話です
★異世界のゆるい設定です
飯屋の娘は魔法を使いたくない?
秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。
魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。
それを見ていた貴族の青年が…。
異世界転生の話です。
のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。
※ 表紙は星影さんの作品です。
※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる