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第六章 【二つの世界】
6-184 変化
しおりを挟む「おかえりなさいませ、ステイビル様、ハルナ様。町の様子はお変わりありませんでしたか?」
「ん?……あぁ。問題ない……だ、だいじょうぶだ」
「……そうですか??」
そういってステイビルはメイヤと一緒にエレーナの屋敷の世話を手伝っているミカベリーを避けて進んでいく。
その後ろには、ハルナが少し困惑したかのような雰囲気でその後ろを何も言わずについていった。
少し距離が離れたところで、ステイビルは立ち止まりミカベリーに向かって振り返った。
「アルベルトは……どこに?」
「え!?あ、はい!アルベルト様は、裏庭でガレムの相手をしておられますが……あ!私が呼んで参りましょうか!?」
ミカベリーは嬉しそうな声で、はしゃぐ感情を必死に抑えながらステイビルに提案をした。
だが、ステイビルからはミカベリーが望んだ答えは返ってこなかった。
「いや、私が行こう。大した用事じゃないからな……」
「え!?そうですか……はぁ」
「――?」
何故、今の対応でミカベリーが落胆したのかは分からない。
ステイビルとしてはミカベリーには他の用事があると思い、アルベルトとガレムの様子を知りたかっただけだったのだ。
「わ……私は、何か間違いをしてしまったのでしょうか?」
「え?いや、特には何もしてないと思いますけど……」
ステイビルは近くにいたハルナに、自分の対応で間違っていたところはないか確認した。その結果、第三者のハルナからも見てもおかしなところはなかったと、ステイビルは安堵した。
「――フッ!!」
――ガキ……ドっ!!
「――ぐぇ!?」
ガレムはみぞおちに、背中の後ろまで突き抜けるようなアルベルトの肘を一発もらった。
手にした剣を放すことはしない……これはアルベルトから課せられている条件の一つだった。
もしも、この剣の柄を手から離してしまえば、今日の訓練はここで終わってしまう。
そうすれば、この重い剣の素振りをしなければならなくなる。
アルベルトからの指示で、ガレムの使う剣は大型の両刃の剣に変更をされた。
剣の幅があり、元々細い剣を両手で扱っていたガレムは防御を盾で行ってはいなかった。
であれば、その両手に持った剣で攻防を行った方がよいとアドバイスした。
そして、騎士団から支給される隊の標準装備の剣では、この男の良い部分が発揮できないと考えたアルベルトは、両手持ちの大型の剣で訓練させることにした。
そうすることにより、通常の剣の幅による加重でガレムの振り回すような攻撃が、さらに重みを増していくとアルベルトは判断した。
実際に、速度や角度が重なったクリティカルな攻撃は、アルベルトも認めるほどの攻撃力を生み出している。
この数日間は、重量の増した剣の扱うための筋量の増加と、その扱いに対する慣れるために時間を費やしてきた。
短い期間で、これほどの進化と対応を見せるガレムのことを、アルベルトは認め始めている。
その裏で、いつか自分たちの敵に回ってしまった場合のことも、頭の片隅に浮かべるようにもなってきた。
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