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第六章 【二つの世界】
6-183 相談
しおりを挟む「……だから、こういうのはどうだ?」
ガレムからの提案はこうだった。
必要とされている戦力として協力する……が、自分の身を危険にさらしたくはない。
協力する理由は、二人の驚異的な技術を習得することがガレムの目的だった。
しかし、二人に命を捧げるつもりはない。
王国の軍や、それ以外の脅威から二人の敗北の色が濃厚になった場合や、ここにいる必要はないと感じた時には抜け出させてもらうという条件だった。
「……どうだ?この条件ならば、協力することもやぶさかではないぞ?」
エレーナはガレムの”自分勝手”な条件に対し、怒りの感情を覚えている。
でも、この者は自分たちの部下でもなく、自分たちの状況を理解した協力者でもない。
それでもガレムの戦力については、アルベルトも認めるところがある。でなければ、このような態度を取れるはずもなく、幾度も乗り越えてきた戦場で生き残れるはずもない。
ステイビル王子がこのガレムの戦力を必要としているということは、それなりの戦力であることは間違いがないはず。
だが、このような者はいつ裏切るか判ったモノではなく、いま提示された条件も裏切る前提のように聞こえている。
そのような人物をエレーナは、信用することなどできるはずもなかった。
エレーナはステイビルの姿を見ると、目を閉じて何かを考えている様子だった。
ステイビルは目を開けると、近くにいたモイスを肩に乗せたサヤという女性に目をやり確認を取っていた。そして、この件に関して結論を導き出す。
「わかった……ガレムのいう通りにしよう。であれば、我々に協力をしてくれるのだろう?」
「あぁ、俺の気が変わるまでは……な」
ガレムがステイビルに協力し始め、一週間の時間が経過した。
その間、特に王国からは何の手出しをされることはなかった。
ステイビルは一度グラキース山へ戻ろうとしたが、王国からの動きが気になるためこのままこの町に滞在し続けていた。
その間、身を隠し町の様子を見て回っていたが、特にあのような騒ぎがあった後でも大きな問題は起きてはいなかった。
町の人々はただ、自分たちの生活を送ることに一生懸命な様子だった。
「……ステイビルさん。どうかしましたか?」
ハルナは、ステイビルに付いて歩き、町の様子を見て回っていた。その際に、時々聞こえてくるステイビルの短いため息が気になっていた。
「い……いえ、なんでもないです」
「もしかして、グラキース山の方たちが気になってるんじゃないですか?」
「い、いや……あっ!えぇ、そのことも気にはなっているのですが……ちょっと……」
「”ちょっと”?……なにか他に気になることがあるんですか??」
「いや……あの……ふぅぅぅ……」
最後の息は、今まで聞いた中でも一際大きなため息だった。それはどこか、決心にもにたため息のようにも感じた。
そして、そのハルナの予測は当たった。
「あ、あの……これからお話しすることは……誰にも言わないでいただきたいのですが」
「は……はい!?」
ハルナは、元いた世界でも同じような体験をしたことがある。
それを思い出してハルナの心臓の鼓動は早くなっていた。
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