問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』

山口 犬

文字の大きさ
上 下
946 / 1,278
第六章 【二つの世界】

6-173 見覚えのある者19

しおりを挟む










隊長が今ここでやらなければならないことは、この男が騎士団という集団から離脱することの阻止だと考える。
そのために、今この男からの問いに対してどのように答えるべきか考えた。



「だ、だからと言って団を抜けることは許されるものではないぞ!?それに……それにだ、このまま騎士団に所属していても、お前の強さを磨くことは可能だろうが!!」



その言葉を聞いている男は、アルベルトから戻された剣を掴み相手と打ち合った剣の痕を見つめる。
鍛えられた鉄と研ぎ澄まされた刃は、騎士団の中でも特急品の道具を渡されていた。
アルベルトと打ち合った剣の痕は、今まで見たことのない力だけでは付かないような傷が打ち合った数だけ残されていた。
その傷は、きっとこの剣以外であれば、その技によって折られていた可能性が高いと男は推測する。
自分の剣の丈夫さに、初めて男は感謝の気持ちを抱いた。
男はゆっくりと膝に手を付いて立ち上がり、ゆっくりと休ませるように剣を自分の腰の鞘に戻した。




「そうか……そういうところなのか……」


「な、何がだ!?」


「ふん……何でもないさ。あと、いくら止めようが俺はいま、この時点で騎士団を抜けさせてもらう」


男はそういいつつ、頭にかぶっていた防具を取り、腕、体幹、下肢など自分の身を守っていた王国から支給されていた防具を全て取り外した。



「これは、お前たちに返す。だけど、これだけは……頂いておくぞ。今までの王国を勝利に導いた……そう、手間賃としてな」


男は腰に下げた剣の鞘を数回軽く叩き、無理やりにでも自分の意見を通そうとする意志を示した。




「ば、バカな!!そんな身勝手な行動が”はい、そうですか”と簡単に許されるわけがなかろう!?それに、集団を何だと思っている!!お前の勝手な行動によって、仲間の命を奪うことだってあるのだ。騎士団お前を中心に動いているわけではない、”私”がこの場預かる隊長だ!!……おい、お前たち!」


隊長が合図をすると、真っ先に騎士団と兵士たちがこの男の周りを取り囲む。
その際に、防御に特化した兵が前列で取り囲み、その後ろに槍などを持った兵士たちが身構える。
そしてその後ろには、精霊使い達が防御と攻撃をできるように兵に護られるように配置されていた。


この陣形は、万が一この男が反乱を起こした際にと――この男には知らされていなかった――極秘で知らされていた陣形だった。
男は剣の熟練度は高いが、槍や弓などのそれ以外の武器は長けてはいなかった。
こうして中距離を保ちつつ一斉に槍などで遠くから攻撃すれば、いくらこの男でも無事はずはないと準備をしていた。



「ちょっと卑怯じゃないの、それ!?」


エレーナはこの状況を見て、思わず口を挟まずにはいられなかった。


「だまれ!これはこちらの問題だ!!次はお前たちだ、そこで大人しく待ってろ!!!」


隊長がそう叫ぶと、男を囲む外周から精霊使い達が攻撃を仕掛けるために準備を始めた。
エレーナとミカベリーには肌で感じるほどの元素が集まっていく感覚が判る、それがこの男に対して一斉に浴びせされられたら決して無事では済まないということも。



エレーナは、男を守るために自分の力で出来る限りの準備をしようとする。
が、腕の中にいた我が子が不快感からか大声で泣き始めた。








しおりを挟む
ツギクルバナー
感想 5

あなたにおすすめの小説

旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】 ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む

家具屋ふふみに
ファンタジー
 この世界には魔法が存在する。  そして生まれ持つ適性がある属性しか使えない。  その属性は主に6つ。  火・水・風・土・雷・そして……無。    クーリアは伯爵令嬢として生まれた。  貴族は生まれながらに魔力、そして属性の適性が多いとされている。  そんな中で、クーリアは無属性の適性しかなかった。    無属性しか扱えない者は『白』と呼ばれる。  その呼び名は貴族にとって屈辱でしかない。      だからクーリアは出来損ないと呼ばれた。    そして彼女はその通りの出来損ない……ではなかった。    これは彼女の本気を引き出したい彼女の周りの人達と、絶対に本気を出したくない彼女との攻防を描いた、そんな物語。  そしてクーリアは、自身に隠された秘密を知る……そんなお話。 設定揺らぎまくりで安定しないかもしれませんが、そういうものだと納得してくださいm(_ _)m ※←このマークがある話は大体一人称。

婚約破棄され逃げ出した転生令嬢は、最強の安住の地を夢見る

拓海のり
ファンタジー
 階段から落ちて死んだ私は、神様に【救急箱】を貰って異世界に転生したけれど、前世の記憶を思い出したのが婚約破棄の現場で、私が断罪される方だった。  頼みのギフト【救急箱】から出て来るのは、使うのを躊躇うような怖い物が沢山。出会う人々はみんな訳ありで兵士に追われているし、こんな世界で私は生きて行けるのだろうか。  破滅型の転生令嬢、腹黒陰謀型の年下少年、腕の立つ元冒険者の護衛騎士、ほんわり癒し系聖女、魔獣使いの半魔、暗部一族の騎士。転生令嬢と訳ありな皆さん。  ゆるゆる異世界ファンタジー、ご都合主義満載です。  タイトル色々いじっています。他サイトにも投稿しています。 完結しました。ありがとうございました。

聖女を騙った少女は、二度目の生を自由に生きる

夕立悠理
恋愛
 ある日、聖女として異世界に召喚された美香。その国は、魔物と戦っているらしく、兵士たちを励まして欲しいと頼まれた。しかし、徐々に戦況もよくなってきたところで、魔法の力をもった本物の『聖女』様が現れてしまい、美香は、聖女を騙った罪で、処刑される。  しかし、ギロチンの刃が落とされた瞬間、時間が巻き戻り、美香が召喚された時に戻り、美香は二度目の生を得る。美香は今度は魔物の元へ行き、自由に生きることにすると、かつては敵だったはずの魔王に溺愛される。  しかし、なぜか、美香を見捨てたはずの護衛も執着してきて――。 ※小説家になろう様にも投稿しています ※感想をいただけると、とても嬉しいです ※著作権は放棄してません

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

【完結】内緒で死ぬことにした  〜いつかは思い出してくださいわたしがここにいた事を〜

たろ
恋愛
手術をしなければ助からないと言われました。 でもわたしは利用価値のない人間。 手術代など出してもらえるわけもなく……死ぬまで努力し続ければ、いつかわたしのことを、わたしの存在を思い出してくれるでしょうか? 少しでいいから誰かに愛されてみたい、死ぬまでに一度でいいから必要とされてみたい。 生きることを諦めた女の子の話です ★異世界のゆるい設定です

飯屋の娘は魔法を使いたくない?

秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。 魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。 それを見ていた貴族の青年が…。 異世界転生の話です。 のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。 ※ 表紙は星影さんの作品です。 ※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。

【完結】男爵令嬢は冒険者生活を満喫する

影清
ファンタジー
英雄の両親を持つ男爵令嬢のサラは、十歳の頃から冒険者として活動している。優秀な両親、優秀な兄に恥じない娘であろうと努力するサラの前に、たくさんのメイドや護衛に囲まれた侯爵令嬢が現れた。「卒業イベントまでに、立派な冒険者になっておきたいの」。一人でも生きていけるようにだとか、追放なんてごめんだわなど、意味の分からぬことを言う令嬢と関わりたくないサラだが、同じ学園に入学することになって――。 ※残酷な描写は予告なく出てきます。 ※小説家になろう、アルファポリス、カクヨムに掲載中です。 ※106話完結。

処理中です...