918 / 1,278
第六章 【二つの世界】
6-145 侵略12
しおりを挟む二人が来たことにより自分の部下を下げたことに対し、ステイビルも自分たちがこの場にいてはいけないのだと感じて、イナとナルメルに一緒にこの場から外れようと合図を出した。
「どこへ行こうというのだ?お前はここにいろ、ステイビル……ドワーフとエルフどもは、この場から失せろ」
敵からそう言われて、素直に従えるものはいない。
だが、ステイビルから合図を受け、キャスメルの言葉ではく”ステイビルの指示”で行動をすることでデイムは納得した。
そして、この場にはキャスメル、ステイビル、ハルナ、サヤとそれぞれの神々だけが残っていた。
「……で?何か話があるんだろ?」
この場の状況を前に進めるべく、一番初めに声を上げたのはサヤだった。
「うむ……そうだな。話が分かりやすいと助かる」
「では、単刀直入に言おう。サヤ……お前は私の配下に入れ」
「――は?」
「なに?アタシだけ?ハルナは?」
「そこの女は付いてきたいのなら、来ても構わん。だが、本当に私が欲しいと思っているのは……サヤ、お前だけだ」
「キャルメル……お前はクリエという王女がいるだろうが!?その上サヤ殿など……お前は!!!」
「勘違いをするな、ステイビル。お前が思っているような下種な話ではない。この者は、お前にはわからない程の価値の高い存在なのだ」
そこからさらにキャスメルは言葉を繋いでいった。
「このまま両者が対立すれば東の大国にとって大きな損害となることは間違いがない。だが最終的には、我々が勝利を収めることは、決まっていることだ……だからこそ、サヤ。おまえは私の下に付くのだ。そうすれば、お前が望む者……そうだな二人までは”この世”に残すことを約束しよう。お前なら、この言葉の意味は、わかるな?」
いつものサヤならば、挑発してくるような物言いに対して、すぐに反発する高度を見せていたはず。
しかし、キャスメルの言葉に対してサヤは目を閉じて黙って考えている。
その時間は一分にも三十秒にも満たない時間だったが、その返答を待つステイビルたちにとってはそれ以上の長い時間のように思えた。
そして……
「うん……悪いけど、アタシはアンタと戦うことを選ぶわ」
「ふっ……そうか、ならば仕方がない。ステイビル、これから王国はお前たちと抗戦状態に入ることを宣言する。元々お前たちはそのつもりだったのだろうがな……それでは、正式な手続きを踏んだ後に攻撃を仕掛けていく。それまでに精々あがいて見せるがいい」
「剣は……剣はいいのか?」
「あぁ、剣だな。それは力づくて奪って……そうだ、剣を差し出すものはその命を助けることとしよう。お前たちも、見つけたら私のところに持ってくるがいい」
「ちょっと待ちな……」
振り向いて自軍の陣地に戻ろうとするキャスメルを、サヤは声をかけて止める。
「盾……はアンタが持ってるってことでいいんだよな?」
「ということは剣はお前がやはり持っているのだな……まぁいい。そうだ、盾は私の手元にある。欲しければ奪い取りに来るがいい」
そういってキャスメルは、無防備にも背中を見せながら自分の陣地へと戻っていった。
0
あなたにおすすめの小説
貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ
凜
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます!
貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。
前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?
婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました
由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。
彼女は何も言わずにその場を去った。
――それが、王太子の終わりだった。
翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。
裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。
王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。
「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」
ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。
(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅
あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり?
異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました!
完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。
離婚したので冒険者に復帰しようと思います。
黒蜜きな粉
ファンタジー
元冒険者のアラサー女のライラが、離婚をして冒険者に復帰する話。
ライラはかつてはそれなりに高い評価を受けていた冒険者。
というのも、この世界ではレアな能力である精霊術を扱える精霊術師なのだ。
そんなものだから復職なんて余裕だと自信満々に思っていたら、休職期間が長すぎて冒険者登録試験を受けなおし。
周囲から過去の人、BBA扱いの前途多難なライラの新生活が始まる。
2022/10/31
第15回ファンタジー小説大賞、奨励賞をいただきました。
応援ありがとうございました!
【完結】モブ令嬢のわたしが、なぜか公爵閣下に目をつけられています
きゅちゃん
ファンタジー
男爵家の三女エリーゼは、前世の記憶を持つ元社畜OL。社交界デビューの夜、壁際でひとりジュースを飲んでいたところを、王国随一の権力者・ヴァルナ公爵カイルにスカウトされる。魔法省の研究員として採用されたエリーゼは、三年間誰も気づかなかった計算の誤りを着任三日で発見。着々と存在感を示していく。一方、公爵の婚約候補と噂されるクロード侯爵令嬢セラフィーヌは、エリーゼを目障りに思い妨害を仕掛けてくるが...
悪役令嬢発溺愛幼女着
みおな
ファンタジー
「違います!わたくしは、フローラさんをいじめてなどいません!」
わたくしの声がホールに響いたけれど、誰もわたくしに手を差し伸べて下さることはなかった。
響いたのは、婚約者である王太子殿下の冷たい声。
わたくしに差し伸べられたのは、騎士団長のご子息がわたくしを強く床に押し付ける腕。
冷ややかな周囲のご令嬢ご令息の冷笑。
どうして。
誰もわたくしを信じてくれないまま、わたくしは冷たい牢の中で命を落とした。
婚約破棄されたので、隠していた力を解放します
ミィタソ
恋愛
「――よって、私は君との婚約を破棄する」
豪華なシャンデリアが輝く舞踏会の会場。その中心で、王太子アレクシスが高らかに宣言した。
周囲の貴族たちは一斉にどよめき、私の顔を覗き込んでくる。興味津々な顔、驚きを隠せない顔、そして――あからさまに嘲笑する顔。
私は、この状況をただ静かに見つめていた。
「……そうですか」
あまりにも予想通りすぎて、拍子抜けするくらいだ。
婚約破棄、大いに結構。
慰謝料でも請求してやりますか。
私には隠された力がある。
これからは自由に生きるとしよう。
婚約者を奪った妹と縁を切り、辺境領を継いだら勇者一行がついてきました
藤原遊
ファンタジー
婚約発表の場で、妹に婚約者を奪われた。
家族にも教会にも見放され、聖女である私・エリシアは “不要” と切り捨てられる。
その“褒賞”として押しつけられたのは――
魔物と瘴気に覆われた、滅びかけの辺境領だった。
けれど私は、絶望しなかった。
むしろ、生まれて初めて「自由」になれたのだ。
そして、予想外の出来事が起きる。
――かつて共に魔王を倒した“勇者一行”が、次々と押しかけてきた。
「君をひとりで行かせるわけがない」
そう言って微笑む勇者レオン。
村を守るため剣を抜く騎士。
魔導具を抱えて駆けつける天才魔法使い。
物陰から見守る斥候は、相変わらず不器用で優しい。
彼らと力を合わせ、私は土地を浄化し、村を癒し、辺境の地に息を吹き返す。
気づけば、魔物巣窟は制圧され、泉は澄み渡り、鉱山もダンジョンも豊かに開き――
いつの間にか領地は、“どの国よりも最強の地”になっていた。
もう、誰にも振り回されない。
ここが私の新しい居場所。
そして、隣には――かつての仲間たちがいる。
捨てられた聖女が、仲間と共に辺境を立て直す。
これは、そんな私の第二の人生の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる