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第六章 【二つの世界】
6-134 侵略1
しおりを挟む「この村は完全に包囲されている!無駄な抵抗を止めて、おとなしく降伏するがいい!さすれば、今はその命だけは保証しよう!!」
「……」
フルプレートの鎧に身を包んだ男が前に立ち、大きな声で威圧的に村の入口から叫ぶ。
声をかけてから一分程度相手の反応を待つ……しかし、期待する反応が返ってこない……男は成果がなかったことに対し舌打ちを一つして、再度大声で叫んでみた。
「繰り返す!この村は完全に包囲されている!無駄な抵抗を止めて……」
その前線の後方に、王国の旗が掲げられた建物がある。
建物と言っても、石の壁でつなぎ合わせた簡易的な建物だ。
土の精霊使いが用意した、この作戦を指示するための場所でもあった。
今回の作戦を王の命令によって計画した者たちと、その命令自体を出したキャスメルの姿がその中にはあった。
騎士団を取りまとめる男は、入口で部下からの報告を受けている。
その内容を伝達するために、男はキャスメルの傍に近付いていった。
「キャスメル王……村の中の者たちは何度呼び掛けても応じる気配がありません。森の中に隠れていた偵察隊と思われる存在も、交戦する様子は見せずにそのまま村の中へ撤退したままです」
「ふむ……そうか。それでは仕方ない、全ての仕掛けに火を放て」
「――っ!?」
男はその報告に考えることもなく、決断を下したキャスメルの言葉に驚いてしまい、命令に対しての承諾の言葉が遅れてしまった。
遅れたというよりも、その命令を受けてしまうことに躊躇していた。
その反応を不思議な目で、キャスメルは報告をしてきた男の顔を見る。
「……どうした?お前は私に何か言いたいことがあるのか?……まぁよい、お前の発言を許そう」
「お、恐れながら……相手は無抵抗のままです。その者たちに火を放てばこの村にいる者たちは……」
ここにいる者たちは無事では済まないことを告げようとしたが、ここに攻め込んできている時点で相手の心配をすることは無意味だと理解する。
だが、男はキャスメルにもう一度考え直してもらいたくてその続きを告げようとしたが、キャスメルがその言葉を遮った。
「私の言った言葉を聞いていなかったのか?……お前には”火を放て”と言ったんだ、お前がどのように考えているかなど聞いていない。もし私に何かを言いたいのであれば、それはどのようにすればこの中の者たちを逃がさずに火の餌食にすることができるかという方法だけだ。それ以外の言葉は、私にとっては無意味だ。……それともお前は、私の命令に逆らうというのか?それならば、それなりに私にも考えがあるが?」
「い、いえ!?直ちにどのように火を放てば誰も取り逃すことができないように攻められるかを検討し……」
「検討はいらん、今すぐ準備した火薬に順次火を放て。そして、誰一人逃がすことの無いようにしろ……よいな?」
「……はっ!」
男は悟った、次に王に報告する際には、”完璧に作戦が終了した”という報告以外受け付けてもらえないことを。そしてその結果以外には、自分の命が無くなってしまうということも……
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