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第六章 【二つの世界】

6-117 報告4

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「それで……ですね、ステイビルさん、言いにくいことなんですけど……」


ステイビルは、ハルナの言葉に力を込める。
いつか来ることとは思っていことで、ここまで見ず知らずの二人が自分に協力をしてくれたことには感謝をしている。
だが、ここから二人が離脱したとしても、それは仕方のないことだとステイビルは理解している。
その反対側で、自分に協力してくれている亜人たちが急に裏切ってしまわないかという心配もあった。
この者たちは、ハルナとサヤという二人の存在に従っていた感もあった。

その二人がこの状況から完全に手を引いた場合、どのようなことになるかは何度思考を繰り返してもよい方向に結論が出なかった。


「なんでしょう、ハルナ様?……覚悟はできております、なんでもおっしゃってください」


「……?え、っとですね。あのソイっていう人なんですけど……どうやら、”キャスメルさん側”だったみたいで」



警戒していたものよりも衝撃度の低い話を持ち出され、ステイビルは安堵の表情を浮かべる。


「ふぅ……そんなことでしたか……」



「そんなことって……ソイさんは、ステイビルさんを裏切って……」


「はい。そのことは既に感じ取っていましたし、然程の影響はありません」


「サヤちゃんといい、ステイビルさんといい……わかってたんですか!?」


「やっぱり、アンタだけだみたいだよ?わかってなかったの?」



サヤのその言葉にハルナは軽くショックを受けた、サヤもステイビルもソイという人物が怪しい者だということに気付いていたようだった。



「ど……どうしてステイビルさんはソイさんが怪しいと……その、気付いてたんですか?」


ハルナからの質問に対するその答えは、やはりわざと投擲の失敗をしてみせていたところだった。


「普通はいくら戦闘能力のない者でも、もう少し違った”動き”をします。筋力については問題なく、あのような失敗したような動きをみせることで、自分とは関係のないことを主張したかったのかもしれません。それとは別に……」


「別に?……何か?」



「はい。自分ではないということの他に、我々がそのことに気付くかどうかを”試していた”とも思える行動でした」


試していたとなると、サヤとステイビルは気付き、そうでなかったのは自分だけということになる。
ハルナはその事実に対し、気付かなかった自分の気持ちをどう処理すればよいか迷っていた。
それに気付いたステイビルは、そこから言葉を繋げハルナの気持ちを軽くするように努力した。


「で……ですが、そのソイの行為は無意味と言えるでしょう。既に二人がそのことに気付いておりますし、それ以降の行動に対しても気を使いながら行動していましたから。それよりも……」


そういうとステイビルは、視線をルーシーの方へ送った。


「セイラム家への対応を早急に行わなければなりませんね……」


「そうだね、それがいいと思うよ。ルーシー……アンタがどう思おうが、もう王国に歯向かってしまってんだ。そうなれば、アンタの家にもそのツケが回ってくると思った方がいいね。アンタもそれが心配だったんだろ?」



ルーシーは自分の思いを言い当てたサヤの言葉に驚き、素直に二度ほど頷いてサヤの言葉が正しいと意思を示す。




「でしたら、そのことは我らにお任せください……ドワーフがここまで頑張られているのですから、我々エルフも活躍できることをお見せしたいと思います」



そのナルメルの言葉をステイビルは素直に受け取り、セイラム家の救助をナルメルに依頼した。







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