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第六章 【二つの世界】

6-111 落下

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(フランム……お父様お母様……アリルビート……シュクルス……ごめんなさい……クリエ)



ルーシーは重力に従いながら、地面に向かって落下をしている。
精霊使いであるルーシーだが、自然の摂理には抗うことは出来ない。
とはいえ、この”落下”も自分自身が選択した行動である。
自分の命が終るその時まで、世話になった者たちへ感謝の気持ちを頭の中で告げていく。
そこには、供に旅をしたん者たちの名は出てきたが、キャスメルの名が出てくることはなかった。


名を挙げた二人には、申し訳ない気持ちになる。
これから先の未来、キャスメルに対して自分が抱いていた気持ちを更に背負わせてしまうことになる。
今までは、アリルビートと二人でその気持ちを分け合っていたが、今後は一人きりとさせてしまうことにルーシーは一番身近な存在に詫びた。


クリエ――キャスメルと共になってから……いや、その直前辺りから、クリエの態度は豹変した。
今までの記憶も問題なく、外見も何も変わっていないように見えた。
だが、臆病でやさしかったクリエは、ある時からその中身がそっくりと入れ替わってしまったかのような別人になってしまっていた。


ルーシーとアリルビートはその原因を調べようとしていたが、結局その原因に到達することは適わなかった。
そこには王国からの制限が見え隠れし、何かを隠蔽しているようにも思えた。
精霊使い長となったとしても、王国に従っている身であるため、全てにおいて自由に行動できるというわけでもない。
それからは多忙な日々が始まるため、それ以上調査をすることはできず、クリエとの距離も次第に離れていった。
そして、アリルビートも……


キャスメルからは直接な言葉はなかったが、ルーシーたちが調べようとしていたことを即座に中止し、その情報を消去させるような動きがみられた。
実際には、ルーシーの部屋の重要書類が収められている隠し箱の存在を誰かがそのことを知っており開けようとした痕跡があった。
もちろん、その存在をルーシーは誰にも話したことはなく、アリルビートさえも知らないことだった。
それを誰かが開けようとしていた……そのことに、ルーシーは王国から自分が監視されていることに気付いた。

ルーシーはそこから表立った調査を止め、ひそかにキャスメルに関する情報を集めていた。
だが相手もガードが固く、真実にたどり着くことに困難を極めた。



しかし……この国の闇を暴いてくれそうな存在をルーシーは知ることになる。



違う国から来たと言っていた二人の女性たちは、幾多の困難を共に乗り越えてきた自分の契約精霊が怯えるほどの力を持っていた。

その力は、きっとこの国の秘密を暴き出し、自由にしてくれるものだと肌で感じた。
だからこそルーシーは、国を裏切るような行動を選択し、あの二人に協力した。


そうすることが自分の役目……自分の生きていた価値だったのだと思わずにはいられなかった。
ルーシーはこの国に、一つの楔を打てたことに満足をした。
だから、この選択を選んだ。





「さようなら……アリルビート」





地面直前で、ルーシーは涙を流してそう呟いた。








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