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第六章 【二つの世界】
6-106 無意味な攻撃
しおりを挟むその攻撃は、今までベルトで弾き飛ばしていた攻撃ではなく、ベルトに固定された砲弾をハルナたちに幾度となく打ち付けていった。
しかし、その礫はハルナたちに届く前にある見えない壁によって弾かれてしまっていた。
それでもソイは何度も同じ場所に正確に打ち続け、何とかハルナたちへ攻撃を届かせようと繰り返している。
ソイは数十秒間攻撃を続けると、その行動を止めた。
伸びたバンドをうまく引き寄せ、きれいに束ねながらその手に収まっていくのは、熟練の動きそのものだった。
「なるほど……その力、精霊の力ですね?しかも、かなり高い能力をお持ちの様子」
その事実は、サヤとハルナにとって驚くべきことではない事実。
バレたとしても、二人にとっては何の動揺を見せない。
「……ちっ」
ソイは自分がけしかけた発言に対し、何の反応を見せない二人に苛立ちを感じた。
戦闘に置いて自分の能力については隠しておくことが、相手よりも優位に立つための常套手段だった。
ソイは、相手の技能を引き出し、それらを容易に打ち砕いてきた。
それが、人間や魔物や亜人たちの能力であったとしても。
自信の能力だけでは太刀打ちできないため、アイテムを使って状況を変えながら今までの勝利を収め、任務を遂行してきた。
アイテムを使用していたにしても、相手の能力や性質を判断しなければ有効に発揮できない。
ソイはその分析能力に長けており、今までの先頭に置いて若干の危機はあったが、こうして生き延びてくることができたのは、自身の能力と知識のおかげであると自負している。
今回の相手は陽動にも反応しないため、今まで培ってきた経験がバカにされたように思えてきた。
しかしソイは自分に言い聞かせる、心理戦こそが自分の得意分野であるということを。
相手は自分を苛立たせるために、あのような態度をとり自分たちの不利を誤魔化しているのだ――と。
「ふふふ、やりますね。ですが、あなた達の能力がたった今わかりました。そんな涼しい顔も、これでお終いですよ」
そう告げてソイは、腰に下げた袋の中から一つの石を取り出した。
ハルナたちの視線は、自分が掲げた石に意識が向いている。
それを確認した後、ソイは再び反対の手でベルトをしならせた。
――キン!
「……なっ!?」
ソイは自分の予測と、今までの経験上から訪れるべき結果と掛けなはれた状況に反応を示した。
この手段で、今までと異なる状況を推測していたが、実際に見た結果は先ほどと何一つ変わることはなかった。
そこからソイは自分の考えを修正する、二人が精霊使いではなく魔素を扱うのもの立ちであるということを。
今までに見てきたものたちの中で、魔素を扱えるものは亜人のみであった。
この二人はその亜人であるか、いままでにいるとされてきた人間で魔素を扱える者という存在だということに。
ソイはもう一度腰の袋に手を入れ、もう一つ石を取り出した。
初めに出した石は周囲の元素を取り込むためのもので、今回の石は魔素を取り込む力を持つものだった。
これまでは、精霊使いや魔法を扱う亜人たちにはその源を絶つことによってその能力を抑えてきた。
しかし、ソイの判断はまたしても失敗に終わった。
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