問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』

山口 犬

文字の大きさ
上 下
874 / 1,278
第六章 【二つの世界】

6-101 風の大精霊

しおりを挟む











ハルナは自分の身体の中にある元素を、胸の中の盾に注いでいく。



「――あっ!」



その変化に驚きを見せて声をあげたのは、サヤではなくフランムだった。

精霊であるフランムも、この空間の中の元素の量が急激に枯渇していたのは気付いていた。
この空間にある元素はほとんど存在せず、流し込む元素はハルナの体内の中に貯め込まれていた元素だけを盾に注いがれていた。
元素を感じる者は、その盾に巡る元素の流れが渦を巻きその中心に集まっていくのを感じ取っているだろう。
フランムが感じたのは、盾へ流れ込む規則的な元素の流れ方だけでなく、ハルナの身体から注がれていく大量の元素の量のに言葉が出なった。
サヤにはその能力がないため、盾の中で起きている変化については感じ取れることは出来なかったが、ハルナが元素を注いでいることについて感じていた。
この空間に関する大きな制御は出来ないが、この空間に流れる魔素や元素の量や流れについては認識することができていた。


「……ふぅ」


しばらくしてハルナは、軽くひと息ついて自分のやりたかったことを終えた。
ハルナに然程疲労感は無かったが、自分の中での一つの行動の区切りとして息を吐くことが、周囲にも自分の行った行動を示す理由で習慣化していた。


そして……

――ピ……シッ



「……え?」


「あんた……壊したの!?」



「ち……違うわよ!」


本来ならハルナが”何かをした”くらいではヒビが入ることなどない。
この盾は前の世界で、魔神と呼ばれていたオスロガルムの攻撃からステイビルたちの身を守ってくれるほどの防御力があった。
王国ができた時のことや、実際に自分が体験した話からするとこのようなことが起こることは考えづらいとハルナはサヤに説明する。



「それじゃ……これって」


「うん……きっとこれ、”ニセモノ”だと思う」


「じゃあ本物……!!」





そのサヤの言葉の途中で、盾のヒビ割れは大きくなっていき、陶器のように線が走っていく。
盾の端がポロポロとかけらが落ちていき、そしてそのヒビ割れから光が漏れ始める。



「――っ!!」



手にした盾が光出し、近くにいるハルナは眩しさのあまりに盾から手を放して腕で光を遮る。
不思議なことに手放した盾は宙に浮いたまま、光を発し続け次第にその光の量は増えていく。

その眩しさに、ハルナは思わず盾から手を離し自分の腕で視界を遮り守った。
サヤもその経過を何とか確認しようとしたが、眩しさに負けて目を閉じて網膜を守った。
閉じたの目の裏にはチカチカと光の粒が残り、視覚は正常に機能していなかった。



この薄暗かった空間を真っ白に染めていた光も、次第にその量が減少していく。
それにつれてまた元の薄暗い状態に戻っていったが、変わったことは盾としての存在はすでになく砕けて床に落ちていた。
その代わりに、今までなかった存在がその場所にいた。




『助けていただき、ありがとうございました……ハルナ様』




姿を見せたラファエルは、床に片膝を付けてハルナに深々と頭を下げて感謝の気持ちを捧げた。







しおりを挟む
ツギクルバナー
感想 5

あなたにおすすめの小説

旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】 ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む

家具屋ふふみに
ファンタジー
 この世界には魔法が存在する。  そして生まれ持つ適性がある属性しか使えない。  その属性は主に6つ。  火・水・風・土・雷・そして……無。    クーリアは伯爵令嬢として生まれた。  貴族は生まれながらに魔力、そして属性の適性が多いとされている。  そんな中で、クーリアは無属性の適性しかなかった。    無属性しか扱えない者は『白』と呼ばれる。  その呼び名は貴族にとって屈辱でしかない。      だからクーリアは出来損ないと呼ばれた。    そして彼女はその通りの出来損ない……ではなかった。    これは彼女の本気を引き出したい彼女の周りの人達と、絶対に本気を出したくない彼女との攻防を描いた、そんな物語。  そしてクーリアは、自身に隠された秘密を知る……そんなお話。 設定揺らぎまくりで安定しないかもしれませんが、そういうものだと納得してくださいm(_ _)m ※←このマークがある話は大体一人称。

婚約破棄され逃げ出した転生令嬢は、最強の安住の地を夢見る

拓海のり
ファンタジー
 階段から落ちて死んだ私は、神様に【救急箱】を貰って異世界に転生したけれど、前世の記憶を思い出したのが婚約破棄の現場で、私が断罪される方だった。  頼みのギフト【救急箱】から出て来るのは、使うのを躊躇うような怖い物が沢山。出会う人々はみんな訳ありで兵士に追われているし、こんな世界で私は生きて行けるのだろうか。  破滅型の転生令嬢、腹黒陰謀型の年下少年、腕の立つ元冒険者の護衛騎士、ほんわり癒し系聖女、魔獣使いの半魔、暗部一族の騎士。転生令嬢と訳ありな皆さん。  ゆるゆる異世界ファンタジー、ご都合主義満載です。  タイトル色々いじっています。他サイトにも投稿しています。 完結しました。ありがとうございました。

聖女を騙った少女は、二度目の生を自由に生きる

夕立悠理
恋愛
 ある日、聖女として異世界に召喚された美香。その国は、魔物と戦っているらしく、兵士たちを励まして欲しいと頼まれた。しかし、徐々に戦況もよくなってきたところで、魔法の力をもった本物の『聖女』様が現れてしまい、美香は、聖女を騙った罪で、処刑される。  しかし、ギロチンの刃が落とされた瞬間、時間が巻き戻り、美香が召喚された時に戻り、美香は二度目の生を得る。美香は今度は魔物の元へ行き、自由に生きることにすると、かつては敵だったはずの魔王に溺愛される。  しかし、なぜか、美香を見捨てたはずの護衛も執着してきて――。 ※小説家になろう様にも投稿しています ※感想をいただけると、とても嬉しいです ※著作権は放棄してません

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

【完結】内緒で死ぬことにした  〜いつかは思い出してくださいわたしがここにいた事を〜

たろ
恋愛
手術をしなければ助からないと言われました。 でもわたしは利用価値のない人間。 手術代など出してもらえるわけもなく……死ぬまで努力し続ければ、いつかわたしのことを、わたしの存在を思い出してくれるでしょうか? 少しでいいから誰かに愛されてみたい、死ぬまでに一度でいいから必要とされてみたい。 生きることを諦めた女の子の話です ★異世界のゆるい設定です

飯屋の娘は魔法を使いたくない?

秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。 魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。 それを見ていた貴族の青年が…。 異世界転生の話です。 のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。 ※ 表紙は星影さんの作品です。 ※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。

処理中です...