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第六章 【二つの世界】
6-78 決められた規則
しおりを挟む「誠に申し訳ござ……い」
サヤは受付の女性に手を出して、その言葉を止めた。
「ちょっと聞きたいんだけど、この順番って一度列を外れたらどうなるの?」
「え?」
受付の女性は、突然の質問に対し一瞬何を聞かれたのか分からなくなる。
本来ならば、業務外のことは応じなくともよいと王宮からは伝えられている。
助成の頭の中に、ゆっくりとサヤの質問が頭の中で認識され、答えても問題ないと判断しその問いに答えた。
「え……っと、ですね。一度列を外れますと、”いかなる理由”がありましてもその順番は無効となります。これは以前に、列を離れて戻ってきた際に順番を偽って前に並んでしまい問題になったことでありましたので、そういう規則になっております」
「あ、そう……ねぇ、アンタ。その首に下げてる飾り、随分と良いものに見えるけど……かなり高価なヤツじゃないの?」
サヤは受付の答えを聞き、ハルナに変わり再び前の男に声をかけた。
ハルナはその言葉に、また無視されてしまうのではないかと思っていた。
それに、サヤが褒めた首から下げているアクセサリとも呼べない程の飾りは、ひとつひとつは高価な石や金属なのかもしれないが、統一性もなく色合いもごちゃごちゃで、高価なものをつなぎ合わせているだけの飾りだった。
しかし男はハルナだけではなく、周囲の予想に反してサヤの言葉に応じた……しかも、満面の笑みを浮かべながら。
「この良さが判るとは、お前も大した奴だな?……その通りだ。これは、国中から集めた高価であり、精霊の加護を受けた元素大量に含んだ物質だ。そこらの者には手が出せない程の額だそうだ……お前もこの魅力が判るか!?」
サヤはにっこりと笑顔を浮かべながら、隠した手元の指先で何かをつぶす動作をした。
――ガシャ、バララララ……
それと同時に、男の首にぶら下がっていた様々な石をつないでいた鎖が解け、石たちはばらけて地面に落ち、四方へと転がっていった。
男の顔色は笑顔のまま、一瞬にして真っ白に変わっていく。
「あらあらあら……大切な石が転がっていってますわよ?」
サヤの言葉に対し、男はようやく見えていた事実が頭の中に理解されていった。
「だ……誰か、拾ってく……いや、ちょっと待て!?」
男は助けを求めたがそれをすぐに中止する、それはある規則を思い出したからだった。
王宮のエントランス内で、落ちている物はむやみに拾ってはいけないという規則があった。
それを拾ってしまうと、いかなる理由であれ窃盗罪として扱われるという規則。
この場所に訪れることができる者は、王国内でも高い地位にいる者たちかそれに関わり合いのある者たちだけだった。
そんな者たちが身に付けている品は、値段がつかない高価なものさえある。
ある富豪が、この場所で装飾品を紛失した際にこの規則がつくられた。
無くしたものは、誰かが拾わなければずっとその場所にあるため見つけられるだろうという思いからだった。
だが、採取的にはその装飾品は見つかっていない。
例外として、落とした者が依頼をすれば、他の者がそれを拾ってもよいとされた。
その後の行動は、拾った者の良心に任されることになるという条件の下で。
「あら、あの一番大きな石……向こうの方にいったわよ。大丈夫?」
「……!?」
男はとうとう我慢ができずに、列から外れて散らばった石を拾いに行った。
「っと……なんだっけ?列から外れたらダメなんだよね?」
サヤは受付の女性にそう告げると、女性は頷いてにっこりと笑った。
「本日の受付はこちらの方までとなります!誠に申し訳ございませんが、これ以降の方はまた後日お越しくださいませ」
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